一日目 再合流
俺は小走りで坂を下る。とたたたたと下る。なーに、どうせ俺が消えたことはとっくの昔にバレてるだろう。
この土地で、都会の空気を纏う者は大変目立つ。目当ての集団はすぐに見つかった。
「やぁ。ここのお祭り、楽しそうだねえ」
賑やかに声をかければ、驚いて振り返る。
「それじゃあ、閉店してしまう前に……って、おっと、ウズメちゃん。そんなに走ってどうしたの?」
「あっ、黒曜さん」
「お祭りを見ていたのかい?」
三者三様の反応。俺は首を振る。
「ちょっと気になることがあってねー。でも空振りだった。残念」
「おや、それはそれは」
「…?何か俺に分かる事があったら…と言ってもそんなに詳しくないですけど」
蓮が怪訝な顔で尋ねた。
「ん?んー…」
分かること~~?
(霊石の在り処かな!)
しかし蓮見からの忠告通り、島民に単刀直入に聞くわけにもいくまい。
俺とて、島民に霊石のハナシをするのは地雷だろうなと最初から思っている。
(それじゃあ…)
こういうカタチにしようか。
「じゃあ、蓮くんにしつもーん!ヤエさま以外に何か伝承とか、伝説とか、ないかい?
埋蔵金や財宝の類が眠ってるとか、そんなんでもいいよぉ♥」
むしろ、『そんなんが』いい。
(財宝…霊石っぽい伝承がさ。こう…な?)
もちろん、ガチで埋蔵金の噂でも一向に構わない。
「お宝の類ですか?…はは、残念ながらこの島には無いと思いますよ。小さな島なのであったら島民全員が知ってるかと」
「埋蔵金?なんでまたそんな…」
怪訝な顔をしてくれるな、雲野。俺にも事情が少しあってだな。
「あ、伝説の話も気になるけど徹クン、時間がギリギリになったらあれだし、そろそろいこっか」
「あ、そうだな。雑貨屋」
ヨダカが取りなす。徹さんが手を打つ。俺は首をかしげる。
「雨具?どうして?」
「明日午後から雨らしいよ。船も出なさそうだ」
「さっきスマホでなんとか電波を拾ったのか確認できたけど、相変わらず15時くらいから嵐の予報だったよ」
(ああ…そういや天気予報でそんなこと言ってたな)
しかし雲野がぽつりと呟いた。
「けれど、図書館も寄りたいしなあ」
「ああ、あれだったら陸奥さんの分も僕がおつかいしてきてもいいよ~」
「おや、じゃあお願いできるかい?」
雲野はヨダカに千円札を渡す。
「足りなかったら後で教えてほしい。おつりは取っておいて構わないから」
「はーい、任されたよ!嵐がくるみたいだしレインコートがあればそっちのほうがいいのかな?」
「ああ、レインコートがあれば頼むよ」
徹さんもついていく気らしく、ムンと胸を張る。
「任された!じゃあ、雑貨屋寄ってから、俺達は民宿だな!」
「はいはーい。あ、陸奥さんの他に必要な人はいる?」
「僕は家にあるので大丈夫です、鷹見さん」
「ああ、蓮クンはそうだよね~」
「あ、やっぱりボクもレインコートお願い!」
「はーい、ウズメちゃん了解したよ!」
「ありがと~!」
俺はちゃっかり、図書館へ行く雲野と一緒にヨダカへ手を振った。
「よろしくね~」
「うん、よろしく」
そんな俺たちに、蓮は大人びた声で切り出す。
「雲野さん、黒曜さん、よかったら図書館ご一緒してもいいですか。その後民宿まで案内できますし」
「ガイドさんがいてくれるなら心強いなぁ!願ってもないことだよ!」
「そうだね、一緒に行こうか」
「よかった、それじゃあ図書館はこっちですよ」
ヨダカはそんな俺たちに手を振り返した。
「というわけで改めて、また後でね~」