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一日目 HO4

 ―――――空耳が聞こえる。

『閉鎖村シナリオでリアル時間が二日間…秘匿で十時間セッション。ふむ。と、なると蜘蛛踊りの儀式が終盤のヤマか?だったら二千万ぶんどるのはマジで今しかないし、忍び歩きは多分このためにあるし………あ~…いや、コレHO4が静かにしてればいいトラップかもしれねーな。HO4が霊石を盗んで神が大暴れして事件が起こるorバッドエンドルートかもしれん。別の手段で二千万確保が正攻略ルートで………しかしなあ…憶測だからな…。それに推奨技能も技能だし。でもこれ、ビックリするくらい生存率が低いシナリオなんだよね。だったら、二捻り、三捻りくらい考えないと………深読み考察爆死芸人が何を言ってるんだ…?いや、自分の頭の悪さをちゃんと見て…二倍考えるくらいでちょうどいいから…とりあえず社にGOして情報ぶんどりましょ。あと金。ここで霊石の所在を割れなかったら、そして金を稼がなかったらマジで時間がない』


 俺は社へ戻ってきた。蓮見がいる。

「ん?どうしました?」

「ごめんなさーい!忘れ物しちゃって!」

「ああ、そうだったんですか。しかしはて、忘れ物とは?」

「うん。あのねえ」

 ―――――ニッコリと。笑みを深めて薄く流し目。

 さあ、商談と行こうじゃないか。

「霊石について、聞くの忘れちゃった」

 ひゅう、と。風が一陣、俺と蓮見の間に吹き渡る。

「ごきげんよう、蓮見さん。電話じゃ忙しいのなんのって断られちまったが、今度は逃げらんねぇゾ★」

「失礼ですが、あなたのお名前は。他の方のお名前も聞き損じてしまいましたね…そういえば」

「黒曜ウズメ、女神の名を借りた男です」

 おどけて一礼。

 蓮見は目を細める。

「なるほど、黒曜さん。それで、いま、なんとおっしゃいましたか?

 もう一度お聞かせ願えないでしょうか」

「霊石について、教えてほしいなあって」

「…あなたがどこでそのお話を聞いたのかはわかりませんが、こちらからお教えできることはなにもありませんよ。あなたも早く宿へ行った方がいいですよ。随分と大荷物のようですし」

 あら冷たい。そんな態度じゃ、俺泣いちゃうなぁ。

「あのね、蓮見さん。俺がその情報をどこで仕入れたかくらい、気にした方がいいと思うぜ?

 どうしてこんな島と関係ない小僧がこんなこと知ってんだろうなぁ。ビックリだよなあ」

 クククと喉の奥で笑えば、我ながら小悪党面がよく似合う。

「霊石がここにあるって事実自体、あんたは知れ渡ってると困る。そうだろ?」

「仕方がないですね」

「うんうん。そうそう。頭の回転早くて助かるよ。

 噂の火消しはしてやる。だから報酬に情報と金をだしな」

 オカルトマニアどもに『霊石はガセ』という情報を広めてやる。この島に誰も来ないように取り計らってやる。霊石がここにあるって事実を揉み消してやる。

 ついでに、俺への口止め料としていくらか包んでもらおうか。

(それでこの島の平穏は保たれる。大事な大事な霊石には変えられねーだろ?)

 諸々の経費報酬口止め料含め―――――二千万円で手を打ってやるから。

(だから(うん)って言ってくれ)

 頼むよ。

(俺に物騒なことさせないでくれよ)

 だが蓮見はつれない。冷たい。どこまでも拒絶する。

「霊石とは、この島の何処かに眠っているという石です。ソレ以外お答えできることは何一つありません」

「そうかあ。じゃ、俺はオカルトハンターたちにこう伝えるしかねえな。

 『島には確かに霊石ありまーす。神社あたり掘り返してみるといいんじゃないですか』?」

 いいの?俺を敵に回したら、オカルトマニアどもをけしかけてこの島を荒らさせるぜ?

 ………そんな事態、避けられるなら避けたいだろ?

「…もうちょっと、寄越せ?」

 ――――――と、踏み込んだところで

(あ………やば)

 虎の尾を踏んだことに気がついた。

(げぇっ………恫喝に屈するどころか…こいつなんか…やば…やべえ…)

 蓮見の温和な雰囲気が一変し、ピリピリし始める。

 俺に警戒心を抱く。

(むしろ)

 この会話で済まさせていてくれているのは優しさである――――――と。

(俺の(アイデア)が…決定的に囁いている)

 …………………はあ。

(何を隠してるかは知らねーけど、このまま特攻仕掛けるにゃあ勝算不足だな)

 フ、と肩の力を抜いた。

「……………っていう、ただの与太話♥」

 そして悄然と肩を落とす。希望を持っていただけに、これは堪える。

「でもこれだけは信じておいてほしい。俺は、オカルトにも霊石にも興味ない」

 本当だよ…。俺はできればみんな楽しく祭りをして帰ってほしいんだ。

「…ただ、金が欲しいだけなんだ。悪かったよ。あんたの大事なもんを人質にとるような真似してよ」

「そうですか。あまり霊石の話題を島で出さないほうが良いですよ。黒曜ウズメさん」

「あいよ。ご忠告、痛み入るぜ。ありがとさん。祭りは楽しませてもらうわ…」


神主さんに睨まれてすごすごと引っ込む賀鳥可愛すぎィ!!


当時の私の思考メモがちょいちょい貼り付けてあるのは、賀鳥≒私である以上、どうしたって行動に影響するし、個人的な思い出として。あと蓮見さんと話しててアイデアが決定的成功したので『これ以上話さないほうがいい』と撤退決めました。当時、『二日しかないなら祭りが山場だ…今しかない…時間がない…リアルタイムで時間が過ぎていく…。強請るなら…情報をゲットするなら今しかない…多少強引でも……』ってことで特攻かましたんで、もしあそこでクリティカル出してなかったら深追いしてたかもしれないですね。サンキューダイス。

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