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エピソード0 物語の全ての始まり、前日譚

『火、灯りし頃の蜘蛛踊り』というCOCTRPGのリプレイ小説になります

HO4視点です。

『火、灯りし頃の蜘蛛踊り』というシナリオのリプレイとなります。

HO4視点です。何を言ってるかわからない人は多分そのままブラウザバックが良いのではないでしょうか。




***


 淡島賀鳥(あわしまかとり)というのが俺の名だ。

 幸せな家庭で育ったと自負しているよ。友人に恵まれ、兄妹に恵まれ、楽しかった。生活に困ることは特になかった。

 ――――その幸せは、全て捨てることとなった。望んで捨てた。後悔はない。

 そんなどうしようもない俺の、一夏の話だ。


***


 俺と兄貴には、風早皐月という友人がいる。

 そいつはある日、大事故に遭った。

 そのせいで皐月の喉は潰れ、奇病に見舞われ、死の淵に立たされている。


 あの病院の日のことはよく覚えている。

「残念ですが…」

 医者が首を振った。兄貴はへたりこんだ。俺は医者に詰め寄った。

 だが現実は何も変わらない。

 告げられた結果。悲痛な面持ち。日毎に弱っていく皐月の体。

 その全てが絶望を物語っていた。

「あなた方のお友達は―――――もう……」

 医者の唇が動く。


 もう、どうにも手の施しようがありません。


「うそだ………あぁ…かみさま…」

 兄貴は顔を青くして打ちのめされる。俺は頭が真っ白になった。

 点滅するのは一つの妄想。


 『もっと発達した医療技術なら、皐月を救えるんじゃないか?』

 『金さえあれば、アメリカにでもドイツにでも入院させてやれる』

 『金さえあれば』


 『金さえあれば!』


 気が付けば俺は皐月のベッドに突撃していた。「すぐに治してやるから、安心しろ」とその手を握った。

 だがあいつは生気の抜けた瞳に僅かな慈愛を滲ませるだけ。かわいそうなくらい痩せ細った指でペンを握った。

 声を失ったから、もう会話ができないのだ。

【どんな医療技術でも僕をなんとかできないよ。どちらかというとペナルティというか…呪いのようなものだから】

「はー?オカルトじみたこと言ってんじゃねーよ。ちょっと金稼いで最高級の医療を受けさせてやる。そうしたらおまえの声も」

 あいつは困ったように笑うだけだった。

狂信者(ファン)というのも、困りものだね】

「ああそうだ。俺も兄貴も狂信者だぜ。おまえという俳優に、声に、演技に心底惚れてる。でもそれ以上に友人だ」

【この世には知ってはいけないことがある。覗いてはいけない深淵がある。君が巻き込まれることはない】

「おまえ、あの事故で何があったんだ?ちょっとおかしいぞ」

 皐月は辛い顔をするだけだった。これだけは口を割らない。どうしてだろう。皐月は声を失い、ここまで謎の衰弱をして………命まで危ないのに。

【いつか君も深淵を探索するんだろうな。真風もそう。噂に聞く、君の弟さんだってきっとそう………】

「たんさく?」

【一つ、頼みがある】

 こほり、咳き込む皐月。慌ててその背をさするが皐月は首を振る。文字を綴るのをやめようとしない。

【いつか君を恨むだろう僕を、許さないで。

 誇り高い君を許せない僕を、絶対に忘れるな】

「何言ってんだ。俺が誇り高いだぁ?ハンッ。笑わせるぜ。利益が無けりゃ百万人が懇願しようが梃子でも動かねえこの俺の、何が誇り高いっていうんだ」

【ほんっと君ってそういうとこあるよね!

 おばかな賀鳥。本気でそう思ってるからタチが悪い】

 生気薄い顔に、往来の勝気を宿らせるのが見ていて痛々しい。

【確かに賀鳥は優先順位をつけて他人を切り捨てられるタイプだよ。でもそれはあくまで状況に迫られたらできるってだけで、本質は超ウルトラハイパーお人好し。かなりの熱血漢で、義理堅くて、人情に厚いお人好し。義のために命を懸ける。今だってそう。僕を治すって気軽に言ったけど、何するつもりなの?】

「はぁ?そりゃおまえ………。まあ、別にいいじゃん」

【おまけに悲しいほど嘘が下手。僕の負担になると思って口を噤んだな?】

「ちげーし。おまえを治すのはおまえの声を聞きたい俺のためであって、断じてイイ人なんかじゃねえし……」

【そういうとこだよ。ばーーーか】

 くっくと枯れ細った喉が隆起する。笑ってるつもりなのだ。

 なのに、ああ――――風の音ほども鳴らなくて。

【きっと賀鳥、死地にあっても誰かの為に笑って死ぬよ。下手したら僕より先に死ぬかも。なんにも残してくれないでね……!】

 今度は皐月が俺の手首を掴んだ。爪を立てているのに、どこにも行かないでと縋る子供よりも、か弱い力。

【賀鳥は、優しい人だから。いつか僕の知らない奴のために命を賭けるんだろうね。たとえばー?偶然知り合っただけの子供とかー?成り行きで地獄を共にすることになった赤の他人とかー?君、絶対やるぜ。賭けてもいい。淡島の血族は人道的に誇り高い】

「言ってることが1mmもわかんねーんだけど。何を危惧している?」

【そんな君を僕は誇らしく思わなきゃいけないんだろう。でもごめんね。僕はね、君ほど人間ができてないんで、はっきり言って恨めしいよ。

 だからそんな僕を許すなって言ってるんだ】

 ふぅ、と。息をつく。

 遠い瞳は遥か未来を見通すようで。

【「誰を犠牲にしても帰ってこい」って約束させたところで、どうせ破るだろ?だって君、優しいもん。義のためにあっさり命を捨てちゃう。僕にはわかるぜ。そんなどうしようもなく潔い君だからこそ、敬愛してるんだから。

 だからせめて、そんな君が恨めしい僕を忘れるなって話。それくらいは約束しろよなー?】

 そう書ききった後に――――喀血した。

 ごほり、ごほり。血は濁流のように溢れ出る。

 皐月がどんどん死へと向かっていく。

「皐月……………」


 ―――――――本人曰く。『声を失うペナルティと、体が大変なことになる呪い。この二つのせいで不調』らしい。

 皐月がオカルトじみたことを言い出すのは、死病に心が参ってるせいだ。

(皐月が死ぬのを、手をこまねいて見てろって言うのか?)

 冗談じゃない。

(ふざけるな………!)


 俺は違法賭博に手を出した。短時間で大金を得るならハイリスクハイリターンしかない。

 だが治療費を稼ぐどころか逆に毟られ、金を借りて勝ちを取り戻そうとしてもさらに毟られ、終いにゃ借金取りに追われる羽目になり――――いよいよ表社会では生きられなくなった。表社会は明るすぎて、どこにいようがすぐ連中に見つかるからな。

 そして裏社会で何でも屋を始めつつ、のらりくらりと半年ほど放浪し、逃げ続けてきたが――――ついに退路を失った。借金取りに完全に捕まった。集団で囲まれ殴られボロ雑巾みたいに打ちのめされた。

 しかし借金取りにも人間の心があった。

「難病の友達のために借金、ねぇ…。なかなか泣かせる話じゃないか。いまおまえを解体(バラ)して売るのは勘弁してやろう」

 借金取りは事情を聞いた後、俺の顎を掴み上げた。

「返済期限を九月一日まで伸ばす。これが最大限の情けだ。これでも用意できないクソ愚鈍偽善者野郎だったら、今度こそ売るよ」

 うるせー知るか。借金なんて踏み倒してなんぼじゃボケェ。俺は金を稼がなきゃいけないんだ。皐月が死ぬ前になんとかしないといけねーわけ。おまえらに渡す二千万なんかねえ。

 今日だって、スキを見て絶対に逃げ出してやるからな。

「これ以上踏み倒したらおまえの可愛い兄弟を売る。マカゼちゃんとミツルちゃんだっけ。二人ともかわいいねー。おまえもそうだが、華奢で童顔で声が高くて、なんとまあ愛らしい。精通仕立ての中学生みたいだ。おまえんちの血筋ってみんなそうなのか?

 なあ、淡島賀鳥クン?」

 借金取りは真風兄貴と光流が写ってる写真をヒラヒラさせた。俺の本名まで掴んでやがる。舌打ちして、逃走の算段を潰す。

 兄弟が人質に取られちゃ言いなりになるしかねえ。ド畜生。

「さすがに返済期限までにおまえが死んだら取り立てる建前がなくなるし、兄弟くんには手を出さないよ。言ってることわかるぅ?九月までに二千万を調達できなかったら、一人で死にな。身辺整理の時間はくれてやるって言ってんの。それが情けだ」

 うるせー。黙れボケ。

「それとも、いつもみたいに逃げ出す?誰の臓器だろうが、こっちは金の帳尻が合えばそれで構わないからねぇ」

 借金取りは意地悪く笑うが、兄弟を見殺しにして手前一人のうのうと生き延びるほど腐っちゃいない。

(けど、死ぬつもりはこれっぽっちもねぇ…!)

 俺はとある太客――――オカルトマニアの丹野の旦那の依頼を受けることにした。

 『八肢島という島のどこかにある、神をも操る''霊石''を持ってきたら二千万支払う』という依頼を。

(神をも操なんて石、手にしてどうすんだよ…)

 そして神を操って、無事で済むのだろうか。

 結局御しきれなくてカミサマが大暴れとか、制御するには莫大な代償がいるとか、そんな事態は考えないのだろうか。

 いや。オカルトとか信じるわけじゃないけど。

(絶対ロクでもねぇヤツじゃん……マジ関わり合いになりたくねーんだけど…)

 しかしもう今更悠長なことは言ってられない。

 丹野の依頼を受けないと俺は死ぬのだ。

(俺が死んでも兄貴が皐月を守ってくれるし、まあ気楽っちゃ気楽だよな…)

 兄貴もどうやら皐月の奇病を治すためにナントカって島に行くことにしたらしいし。

【賀鳥は、優しい人だから。いつか僕の知らない奴のために命を賭けるんだろうね】

 綴られた文字が、頭の中でリフレイン。

【たとえばー?偶然知り合っただけの子供とかー?成り行きで地獄を共にすることになった赤の他人とかー?君、絶対やるぜ。賭けてもいい。淡島の血族は人道的に誇り高い】

(するか、バカ。俺は自分のためだけに生きるエゴイストだぜ?百万人に懇願されようが自分の利益にならなかったら梃子でも動かねえ男だ)

 しかし、しかしだ。

 人生何が起こるかわからない。

 なんと皐月の予言通り――――――縁もゆかりもねぇクソガキを救うため、命を張る目に遭うのだった。

 散々な話だ。


 そんな境遇から、俺の蜘蛛踊りは始まる。

皐月くんはね、KPの雪さんの卓でペナルティを負って声を失いました!!

今回の蜘蛛踊りのKPも雪さんだったので皐月をHO4に絡めました。まさか覚えててくれてるとは…!


皐月くん、本当は声失うだけで良かったんだけど別セッションとの兼ね合いで……このHO4の兄貴の真風ちゃんのせいで死にかけに…さらに真風ちゃんドジ踏んだので治せなかったし……真風ちゃん…


ちなみにHO内容は『あなたは借金取りに追われてる。九月までに二千万用意しないと死ぬ。だがさるお金持ちが「とある島に眠ってる霊石というものをとってきてくれたら何千万円でも払う」と言った。あなたはその依頼を受けることにした。二千万用意しないとキャラロストです』というもの。配られた瞬間にゲラゲラ笑いました。ヒーーーーヒヒヒwwwwwwwwwwwwwww


ドキドキワクワク疑心暗鬼蜘蛛踊りの始まりです。

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