気分転換
文字切れがあったので、修正しました。
着替えてから、二人とも木刀を持って、中庭に出る。
「確か、全く剣は使ったことが、無かったんだよね。」
「そうだが、実戦に近い方が飲み込みが早いだろ。手合わせをお願いする。」
「取り敢えず、こちらからいくよ。」
そう言うと、肩に掲げた木刀を置くように眼前に突き出してくる。
両手剣だ。
それを受ける。
受けた途端、踏み込まれると同時に抑えられたと思うと、流されて、胴に入れられる。
剣先は、水平にし、あまり動かさず、持ち手が主体で、それに合わせて身体を運用しているようだ。
そういえば、使っていた剣も、かなりの重量がありそうなものだったのを思い出した。
こちらからも打って出るが、悉く斬り返される。
しかも、かなりの余裕が見え、痣も残らない程度で当ててくる。
格上の相手にいいようにあしらわれているといった感じで、手も足も出ない。
昔に上手いボクサーに相手をしてもらった時のことを思い出す。
だが、一芸に秀でない器用貧乏の強みは総合力である。
弱いなら、弱いなりの闘い方がある。
剣術の覚えは全く無いから、素人意見かも知れないが、如何に相手の武器のコントロールをすることに主眼を置いているように見える。
「お前、実はめちゃくちゃ強くないか。」
「いや、実はも何も、剣では、少しは名も知られているよ。だから、ベルンハルトにも教えているんだよ。」
「そうか。」
では、心置きなく、こいつの土俵から降りてやる。
「ちょっと試してみたい事があるんだけど、もう少しだけ付き合ってくれ。」
そう言って、納屋に戻り、何に使うか分からなかった、短い棒を二本持ち出す。
「ナイフで、ちょっとしてみたい。」
「へぇ、二本持ちか、初めて見るな。」
「タガー術とかはあるんだな。」
「そうだね。一応は知ってるよ。」
もう、こいつの一応は信用しない。
「じゃあ、手合わせお願いするよ。」
ここで、バトン持ちにしていた棒を逆手で持つ。
ヨハンに警戒の色が浮かぶ。
先に少し手の内を見せて貰った意味もここにある。
歩いて間合いを詰めていくと、ヨハンは前で掲げるように剣を持つ。
防御もでき、色々と対応し易い構えだ。
更に走り込んで、剣の動きを抑えるため、防御に回そうとした剣に左の棒を触れさせようとする。
しかし、それを読んでか、下がって刃を水平にした上段の構えから攻撃に移っている。
反応が良過ぎる。
本当なら、ここで決めておきたかった。
更に踏み込み、左で剣のコントロールを試みながら、右を振る隙きを探すが、左が外される。
しかし、その場で止まる事となり、懐に入り込めた。
ただ、さっきも懐からも対処されていたため、まだ気は抜けない。
右を剣のコントロールに回さざるを得ない。
出来れば手首に引っ掛けれればと思ったが、ずらされる。
ここで右足を踏み出し、身体が触れそうな距離で、左の刃の部分で首筋をなぞる。
浅いので、左足を半歩出して踏ん張り、刃で首の後ろを引っ掛け、膝で膝頭を押さえて引き倒す。
倒れた背中に乗り、右の刃を喉に回した。
かなり狡い事をしたが、何とかオッサンの面目は保たれた。
「くっ、ちょっと狡くないか。」
「油断するからさ。」
狡いのは否定しない、それも実力のうちだ。
「さて、それじゃ、さっき言ってたみたいに、崩しの技を教えるよ。」
「勝ち逃げかよ。」
その後、ちゃんと、教えてあげたが、そのうち幾つかは、ヨハンの知っているものもあったようだ。
「最初に教えて貰ったのが、一番びっくりしたよ。」
「俺もそれは最初に喰らったとき、びっくりしたよ。全く知らずに喰らったら、何をされたか分からなかった。」
「ああ、それで、教えたら効かないなんて言ってた訳だ。」
「知られてなくて、有用な技術は大きなアドバンテージになるからな。」
「そういえば、変な形の武器を好んで作ったりする奴がいるな。そんなのばっかり流行るのも、嫌だな。」
ヨハンがこんなに乗り気になってくれたのは意外だったが、いい気分転換になった。




