表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/72

新魔法

 料理は得意ながら、菓子の方はそこまてでは無いので、苦戦して試作しながら、シフォン、クレープ等のレシピを書き上げ、木版印刷に載せていく。

 木版印刷とはいっても、ただの版画だ。

 ちょっとおしゃれに、二色刷りにしてみたところ、あまり一般的ではないようであったが、好評だった。

 レシピと合わせる事により、消費拡大を狙ったものだ。

 ただ、卵と牛乳は生産量が少なく、非常に高価であったため、一般向けにはクリームは卵を使わないバタークリームをベースとし、貴族等の高所得者向けの高級品として、カスタードクリームや生クリームのレシピを作った。

 先にヨハンとミッシェの抱える料理人への手ほどきだけでは、貴族関係者しか普及しなかったためだ。

 後から一般向けの方も、チーズや果実を入れたり、色々工夫はしてみたところ、意外と好評で高価格帯のクリームに負けない人気となった。

 苦労の甲斐もあり、出産祭には、様々な甘味の屋台が立ち並ぶ事となった。


 その間も、新魔法の考察と開発は続けていた。

 取り寄せ続けていたスクロールから、ハルの手助けもあり、なんとか術式のループ記述を見つけ出し、ライブラリ化することに成功する。

 銃の弾丸について、これまで魔法術式で作成してから精霊に依頼して精霊印にしてもらっていたが、この逆ができないか精霊達に聞いてもらったところ、実在する物質を精霊印に置換可能なことが判明した。

 これにより、新魔法の方向性は大きく転換を迎えた。

 銃自体を魔法で発現させれば、魔法術式で発現できる規模の炎や雷などの現象自体を攻撃とするより効率的に高威力の攻撃が可能となる。

 物質として固定化しなければ多少はマナの消費も抑えられるだろうから、多少の自由度も持たせることができるだろう。

 早速、エルネスツに依頼して新魔法に使用する使い捨て型の大砲を作成してもらう。

 大砲といっても片方を塞いだ鉄の筒に過ぎないものであるが、魔法術式で使用の度に生成するため、充分である。

 また、考えていた自動追尾・照準機構については、かなり苦戦し続け、最終的にハルの助力で組み上げることができたが、術式が長大なため魔本のページに収まらない。

 そこで、基本となる砲身に魔法術式を施して魔法術式の記述面積を稼ぎ、そこに機能を追加していく方法を考えついた。 

 魔人と対峙した際、クリムゾンを連発しようとし、マナ不足で不発になったのを教訓に、新魔法では、マナの収集を離れて行い、事前に砲を作成しておくことにする。

 最終的に、これらの対策のためにもう一つの段階を踏むことによって実現することができた。

 まず、魔法を動作させると、周囲に護符のような金属片が現れ、四方に飛び散る。

 マナの濃度を探知し、不足すれば、マナのある場所まで移動して砲身等を形成するようにしている。

 そして、その砲身に記述された魔法術式により、ターゲットを追尾し、照準を定める。

 発射については、俺の手元に命令を発する為の術式を施したトリガーを作成することで、必要なタイミングで攻撃する機能を実現した。

 魔法術式で魔法術式を作成するという回りくどい手法となったが、同じ手法を用いて防御として、盾を作成して対応するような応用もできた。


 毎朝のガロンとの稽古を、今朝から新魔法の試験を兼ねて行う。

 右手には攻撃用のトリガーが作成され、それを握る。

 まずは、ガロンに向け、トリガーを引く。

 探査魔法の応用で攻撃対象をセットするのだ。

 その頃には、俺の周囲に砲口や盾が浮かんでいる。

「それじゃ、行くぞ。」

 ガロンには新魔法のことは説明してある。

 トリガーを一回引くと、近くに浮かぶ砲口から石礫が発射される。

 ガロンは余裕を持ってそれを鉄の爪で迎撃する。

 次の瞬間、ガロンの鉄の爪が眼前に飛んでくる。

 魔法の実行に気を取られていた俺は全く反応出来なかったが、盾が眼前に立ち塞がり、攻撃を防ぐ。

 続けて、三回トリガーを引くと、砲口から三発の石礫が様々な方向からガロンに襲いかかる。

 実は、どの砲口から攻撃するかは決められず、作成順に発射されるようになっている。

 戦闘中に複雑な命令を行うことが難しいだけでなく、術式が複雑すぎるため、どの砲から攻撃を行うのか指定する機能は実装できていない。

 二発までは防いだが、三発目の地面すれすれからの攻撃には反応するので精いっぱいになっていた。

 その隙きを付き、木のダガーでガロンの胸を突く。

「流石だ。何処から攻撃されるのか全く読めなかった。」

 そうだろう。

 攻撃する本人にも分からないのだから。

 こうして、新たな攻撃魔法が完成に近づいてきた。

 後は、砲口と盾の威力をそれぞれ上げていけばいい。

「しかし、なかなか良い稽古になるな。」

 確かに、稽古用として使えそうだ。

「そうだな、稽古用に一つ用意しておくか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ