多忙の日々は続く
最近、色々と走り回っていたが、結局、落ち着くことは無く、次の仕事が入る。
今度は、甜菜の収穫が始まったのだが、加工工場の能力が次の春まで稼働しても、収穫量の半分にも満たないことが判明した。
寒いうちに加工しきらないと、収穫した甜菜が傷んでしまう。
痛む前に加工しきるための設備の増設に、エルネスツと俺が駆り出される。
エルネスツは材料や人員の手配のみならず、現場でも容赦無く俺を使う。
元々、器用貧乏の見本のような俺は卒無くこなし、益々扱き使われる事となった。
雇い主は俺の筈だが。
三基の釜を増設する計画となり、ニ基目に取り掛かっているところで、ようやく任を解かれ、平常に戻り始める。
エルネスツは完了まで拘束されるが。
釜の数を増やすことで、火加減や加熱の時間等、試験をしながら稼働させられるようになったのは、大きな利点だろう。
後は、輸出開始のタイミングを見極めるだけだ。
甜菜の件が落ち着き始めてから、店にいる時間が長くなっている。
あの、魔人のための対策を考えようとすると、機材の揃う店に足が向く。
新しい魔法を考える。
防御も攻撃も必要であろう。
バリアの様な物ができないか考えてみるが実現の方法も思い浮かばない。
また、硬気功のようなものについては、俺自身がマナを感じる事ができないため、効果や制御が困難である。
攻撃の方については、威力だけでなく、命中精度も向上させていく必要があるが、こちらについては、アイデアが一つある。
まずは、攻撃魔法から開発を始めることにする。
初歩的なプログラムで自動追尾は学ぶ。
これを実現しようと考えたのだが、様々な困難が待ち受けていた。
魔法術式はBASICやスクリプトに近い物ではあったが、サブルーチンの概念が存在しないし、ループ構造も今のところ発見していない。
俺自身が、マナの操作ができないため、俺の意識を介して追尾命令後を行うのは不可能だ。
新魔法実現に向け、模索し、試行錯誤を繰り返す日々が始まった。
その試行錯誤の合間に、砂糖の輸出のスケジュール調整に入り、トリヴォニアでは冬至の意味合いか強いが、教会の出産祭に合わせて、その一月前から近隣諸国と国内を中心に輸出及び販売を始める事となった。
当然、グロニスクも輸出先として考えており、販路の確保のため、ニコライに連絡を取る。
店に呼んだニコライは、大きすぎる商談に及び腰のところもあった。
ここ最近の関係悪化と正式な外交が無い中、独占してしまうことにより、他の商人との摩擦の問題もあったからだ。
砂糖の販売については、専売公社に近い組織を通じて行うこととなっていたが、少量であれば、国内の卸売扱いとするようにし、俺から個人的に買付けを行い、他の商人も受け入れることで対応することとした。
ちなみに、手数料は俺に入る。
結局、砂糖の普及のため、レシピ作成等に追われ、多忙な日々はまだまだ続く。




