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異世界と気付く

 パソコン立ち上げるのが面倒だと思ってたら、気が付いたら殆どスマートフォンで書いてしまっていました。

 誤字、脱字が多いのは仕方ないんですが、意外とイケる事に驚いてます。

 おかげで、右手でも左手でもフリック出来るようになりました。

 客間には、軽装の衛兵が一人控えているだけだ。

 中央に五脚の椅子がある円卓と、二、三人座れそうなソファーが二台あり、一台は円卓の近く、もう一台は壁際に置かれており、促されて円卓に方に腰かける。

 散々、空腹をヨハンという騎士に空腹を訴えていたから、今頃、食べ物を用意してくれているだろう。

 今のうちに、今後の身の振り方を考えよう。

 騎士や護衛として雇ってもらうのがありえそうだが、四十にもなってから、衛兵になるなんて、あんまり考えたくない。

 この時代では、自分の存在自体がオーパーツみたいなものだろう。

 それを生かすための立場が欲しいところではある。

 読み書きどころか、言葉も話せないのでは文官に取り立ててくれなんて言えない。

 言葉を早く覚えるために、人と話をする機会が多く、かつ、自由の効く仕事と考えてみるが、そんなに都合の良い職業など、思い浮かばなかった。


 そのうち、小奇麗な服に着替えたヨハンが何人かの従者を引きつれてきた。

 その服装はヨーロッパでも東寄りのものに見える。

 シャツとパンツにレザージャケットというシンプルな出で立ちであるが、パンツの裾は装飾された布で絞られている。

 従者に指示し、床に模様、いや、魔方陣が描かれた模造紙のようなものを敷かせる。


 絶対、魔法だ、魔法を使う気だ。

 15から17世紀の東ヨーロッパだと予想していた。

 自分はタイムトラベラーだと思っていたが、異世界だ。

 異世界召喚だ!

 軽い読み物も読んではいたが、まさか自分がそうなるとは。

 高校生ぐらいが、喚ばれていくのが相場だろ。

 なんで、四十路の妻子あるおっさんが、ファンタジーしなきゃならんのだ。


 気が付くと、さらに文官らしき者も増えている。

 立ち呆けていたところを、彼に促され、魔方陣の中央に立つ。


『これでなんとか意志の疎通ができるようになるな。』

 直接、頭に声が響いてきた。

 自分では見えないが、典型的な驚愕の表情を浮かべていることだろう。

 しかし、頭の中に直接声が響いてくるのは、変な感覚だ。

『尋問用のスクロールがこんなことで役に立つとは思わなかったな。』

『尋問用なのかよ。それより、これって魔法なのか。』

 こちらも言葉を返してみると、ヨハンはこちらを向いて、頷く。

『意志を直接読み取るスクロールだ。本来は尋問用に使われるもなんだが、こちらの意志も伝わるので、殆ど使われていなかったのだがね。』

 騎士は、中央の円卓から椅子を寄越し、自分も円卓の椅子に腰かけた。

『私はヨハン・フライターク・ローリンクホーヴェン。このトリヴォニア騎士団領の騎士だ。この度は我が騎士団総長の次男である、ベルンハルト様を守っていただいたことに、我が騎士団の代表として感謝する。』

『子供がいるのが分かったから、助けただけだよ。四日間殆ど何も食べていないから、食料は貰おうぐらいの下心はあったが。』

『そういえば、頻りに空腹を訴えていたな。軽いものでも持ってこさせるよ。それから詳しい話を聞きたい。』

『そうしてくれると非常に有り難い。』

 そうして、ヨハンは従者に指示し、文官たちも円卓とソファーに腰を落ち着けた。

『もう少し、取調室みたいなところで、尋問されると思っていたが、客間で迎えてくれるなんて、思ったより良い待遇だな。客人扱いだな。』

 ヨハンはこっちを向いて微笑んだ。

 どうやら、声を出していなくても、伝わってしまうようで、油断してしまった。

『我々は貴方を客人としてお迎えいたします。隣の国とか隣の辺境伯とは違って、きちんと恩人にはその恩に報いますから。』

 なんだか、色々と漏れているが、どちらにしろ害意もないようだから、気にしないでおこう。

『まず、一つ聞きたいのですが、魔法ですよね。これ。』

『このスクロールは、魔法が使えなくても、周りのマナを集める術式が組んでありますので、安心してください。』

 そんな事が聞きたかった訳ではないが、魔法は一般的に使われていることは分かった。

『いや、私の生まれたところには、無かったので、非常に珍しかったのです。』

 それを聞いた周りの人間は全員怪訝な顔をしている。

『魔法があるのが普通なのか。』

 多分、今の心の声も漏れているなと思いながら、話を続けようとしたところ、従者が食事を持ってきた。

『あと、もう一つ聞きたいのだが、先程、騎士団領と言っていたが、自治区みたいなものなのか。国みたいなものじゃないのか。』

 取り敢えずの様子見で、これだけの文官が集まっていたので、何処かの国かと思っていたのだ。

 何か要領を得ないところがあるので、もう少し聞いてみる。

『あくまで、ヴィリニュスの教会から派遣された騎士団なのですが、永きに渡り騎士団がトリヴォニア一帯を治めています。確かに、本国からの干渉も少ないですし、政も必要に応じて行っているので、外から見れば、国に見えなくもないですね。』

『永きにって、どのぐらいかな。』

『そうですね、百五十年ぐらいですかね。』

 それだけ安定して内政をできる環境だと、殆ど国と同じではないか。

 では、総長だと、国王か相当大規模な領主と変わらないと判断できそうだ。

 そうであれば、取り入ってみるという選択肢もある。

『あ、漏れてるな。』


 話をしているうちに、使用人が入ってきた。

 木のジョッキ、黒くて固そうなパンと肉それにシチューポットが円卓に置かれる。

『ああ、何でもいいから、早く食べたい。』

 心の声が漏れ、苦笑が辺りに広がる。

 ヨハンが気を利かせ、聞いてくれる。

『先に、食事をされますか。』

『行儀が悪いが、これだけの人を待たせるのも気が引けるので、食べながらでも良いですか。』

 ヨハンも、文官たちも頷いていた。

 とりあえず、木のジョッキに入った水を一気に飲み干し、シチューポットを円卓からとり、膝に載せ、パンをちぎって口に放り込みながら、話をする。

 シチューポットの中は、いんげん豆とキャベツが入ったスープが入っている。

『まずは、自己紹介からなのですが、四日前に、私はここの国とは異なる所からやってきました。

国の名は日本と言います。

かなり遠いところで、この辺りとは余り国交も無かったので、知られていないかも知れません。

所謂、神隠しみたいなもので、ここまで連れて来られたようです。

気が付くと、森の小道の真ん中に放り出されまして、街を探してあるき続けていたところ、偶然、坊ちゃんの馬車が襲われているところに出くわしたのです。

盗賊かと思って静観しようとしていたのですが、殺すことが目的だったことに気が付いてしまったのと、子供の声を聞いてしまったので、つい、助けにはいってしまいました。

事の次第はそんなところです。』

 あれだけ大変な思いをいたのに、思ったより、短く纏まって、大変さが伝わらない気がする。

 木の匙でスープを掻き込む。

 さて、ここで文官達からの尋問が始まるだろうが、嬉しいことに、言葉が通じ、交渉が出来る。

 少し離れている文官達の声は小さくて、殆ど聞こえない。

 どうやら、心の声の大きさは距離に比例するようだ。

 当たり障りの無い尋問を受けたあとでも、交渉はできるだろうが、ここに居る文官達にも、一定の注目はいただいておきたい。

『それで、次に、私の故郷の話をしたいのですが、できれば、一旦は限られた方達のみにお話したいのです。』

 皆が怪訝な顔をする。

『何故だ。』

 鋭い目でヨハンが聞き返す。

『その方が良いと思うのですが、それを判断するのに、出来れば、まず、ヨハンさんと二人でお話したいのです。宜しいですか。』

 文官達はざわつき、不満と疑いの眼差しを向けてくる。

 老獪を絵に描いたような文官達がいる中、敢えて気にせず、言い切り、睥睨するように見返す。

『えっと、ここはどなたかのお屋敷ですか。それとも、政をするための役所のようなものですか。』

『城だ。』

『城でしたか。きらびやかではなく、機能的で、私は好きです。』

 質素で役所の様な建物だったので、屋敷かと思っていた。

 ここの為政者は、合理的な考え方をするかも知れない。

 その方が、受け入れてくれ易いだろう。

『私は、この国には無い情報を色々持っています。使い方によっては、国に不利益を齎す可能性もありますので、慎重に対応したいのです。』

『何を勝手なことを。』

『何処の馬の骨とも分からん奴が、偉そうに。』

 口は動いていないのだが、漏れている。

 このスクロール、確かに使い勝手が悪いな。

 俺の心の声もどれだけ漏れてることやら。

『本来なら野垂れ死にする筈でしたし、ここまで連れてきていただいたヨハンさんや、ベルンハルト様、ひいては、騎士団総長に対する最善の利益を考えてのことです。』

 笑顔でヨハンを見やると、苦笑を返してきた。

『さっきから、私には筒抜けなんですが…』

『では、お願いできますか。』

 立ち上がったヨハンが、文官達に声を掛ける。

『このスクロールは、尋問用に作られた特殊なもので、嘘、偽りを見抜く事ができます。まずは、この者の言う通り私と重臣で対応するのが良いようです。一旦、お引き取りいただきますようお願いします。あと、総長へ、ご報告いただきたい。』

 優しいだけじゃなくて、出来る男で助かった。

『やり辛い。』

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