歩く
書けば書くほど未熟さを痛感します。
読んでくれた方、このページを見てくれた方、ありがとうございます。
できる限り体力を消耗しないよう、発汗しないようなペースで歩く。
既に何時間か歩き通した。
日が傾き、陰ってきており、やっと西側はどちらか判明した。
森は深いが、ところどころ開けた場所が見受けられる。
そのためか、日本の山林のような暗さは感じないでいるが、奥に分け入れば、異なる雰囲気あるのだろうか。
興味は尽きないが、今は、生きるために歩くことが最優先だ。
道が蛇行しているが、森が続いており、景色はずっと変わらない。
ただ、鬱蒼とした暗い森が果てしなく続いているものと思っていたが、ところどころ開けた場所もあり、そこまで暗い印象はなかった。
結局、少し慣れると代わり映えのない景色が延々と続くだけではあったが。
喉が乾く。
まだ、尿を飲むほど、追い詰められていないが、それもじきだろう。
そういった覚悟もしておく必要はあるだろう。
普段なら5kmを40分から50分位で歩いているところであるが、ペースを落としているので、1時間で5km位だろうか。
いや、もう少し遅いか。
轍がつくほど交通量もあることから、数百kmということはないだろう。
まぁ、明後日までは歩きつづける覚悟はしておこう。
日が暮れ始めたので、少し開けた場所で寝ることにする。
そんなに寒くないことが救いだ。
開けた場所にある大きな木の根元に座り込み煙草に火を付ける。
道すがら休憩中に二本ほど煙草をふかして、今日は3本目だ。
普段から吸っていたのは、十本入りの短い煙草で、箱の残りはあと一本。
それと開けていないものを一箱持っているだけだ。
節約するか、さっさと吸いきって諦めるか決めかねている。
続けてもう一本に火を付ける。
足を止めてしまうと、思考に没頭してしまう。
二本目の煙草を吸いきり、踏んで火を消す。
木の根元に転がり、背広の上着を脱ぎ、上から掛けて目を瞑る。
何にせよ、身体を休める必要がある。
野犬や狼などの外敵に遭わないことを祈ろう。
足を止めてから、家族、仕事、友人のこと、止め処なく考え込んでしまう。
元居たところに戻りたい。
そう思うのは当然だろうが、既に元居た時代ですらない可能性が高い。
こちらに着いた場所には何の痕跡もなく、何の手掛かりも得ることはできなかった。
戻る方法も想像すらできない。
地面に転がって、暫くじっとしていたが、なんとく不安になり、木に凭れることにした。
もう、日はほとんど沈み、周囲も闇に包まれていく。
気が付けば赤っぽい月が高い位置にあがっていた。
今晩は明るそうだ。
ふと、気が付くと、既にあたりは白んでいた。
眠れないと思っていたが、そうでもなかったようだ。
終電まで仕事をしてから、こちらに来て、そこから4時間以上歩きつづけている。
今頃気が付いたが、眠い筈だ。
昨日までは、そこまで気にはならなかったが、喉の渇きを覚えた。
眠っている間も人間は発汗している。
何のCMかは思い出せないが、そんなものがあったことを思い出した。
日が昇ってきた。
水が欲しい。
登山地図の水場マークがこれ程有り難いものだったとは思わなかった。
今は歩くしかない。
目を擦りながら、俺は今日の一歩を踏み出した。
途中で、休憩、仮眠も取りながら、歩を進めていくが、一向に景色は変わらない。
山に入り、人っ子一人いないところで、何日か過ごすことは慣れてはいたが、それも装備が万全で、命の危険も無かったからだろう。
今は、不安が募る一方である。
意外なことに、喉の渇きは酷いが、空腹はまだそこまでではなかった、不安のせいでもあるだろう。
既に日もかなり傾いてきており、そろそろ命の危険も感じ始めているところであった。
微かに水の匂いがする。
煙草を吸い始めてから、多少は鈍った気はするものの、嗅覚には自信があった。
道を外れて見失うことは恐ろしかったが、水分補給の方が重要度は高いと判断し、森に分け入る。
果たして、そこには、小川が流れていた。
草地に被われた中を流れており河原のようなものは無かった。
流れは緩やかで、透明度はそこまで高くなかったが、川岸に脱いだ上着と鞄を放り出し、迷わず小川に足を踏み入れ、水を飲んだ。
少し迷ったが、なんとか道に戻り、開けた場所で火を起こし、濡れた服を乾かしている。
何の道具もなく、魚など獲れないと判断して、戻ってはきたものの、今度は空腹に苛まれることとなった。
夜通し持つ程度の薪になる枝を集めようと思ったが、乾いて燃えそうなものに絞ると、意外に骨が折れることが分かったので、適当なところで切り上げて、寝る準備に取りかかっている。
明るさと暖かさで、少しほっとしている。
夜はそれなりに冷えるが、我慢できないほどではなかったので、火は起こしていなかったが、こうやっていると、やはりいいものだ。
これで空腹でなければ、言うことはないが。
アニメや軽い読み物のファンタジーの世界ではやたらと焚き火をしている描写が多かったような気がする、などと、とりとめのないの無いことを考えているうちに、眠ってしまった。