魔法術式
アルフレートに依頼していた写本は完成し、一旦、一通り読み、次は内容を理解しながら本格的に読み進んでいる。
実際に動作する様々な種類のスクロール大枚を叩いて取り寄せ、それを参考にしている。
魔法で何らかの現象を起こす際、魔力を用いて四元素を動かしたりすることになるが、単一の元素だけでは単純な働きしかしない。
例えば火の元素だけであれば、熱量の移動のみが起こることとなる。
火の玉を射出しようとするのであれば、風の元素の力も使い、燃焼を起こし、飛ばす必要がある。
この場合、ほぼ、火の元素で、若干風の元素の力を使う。
更に爆発を起こす場合であれば、火を風で圧縮するようなところになる。
通常、魔法を使う場合、この動きの間に、実は他の元素も無意識で用いているのではないかと考えている。
魔法術式については、四元素を操るにあたり使用する元素がどんなものか詳細に記載していく必要がある。
魔力も無く、マナを感じる事もできないため、想像でしかないが、魔力があれば、アナログの感覚、個人のイメージを四元素に働きかけて、魔法を行使することとなるため、そこまで複雑な元素の動きを意識しないで済んでいるのだろう。
魔法術式については、書いたものが書いた通りに動くが、一般的に魔法に使われる元素の動きは複雑かつ複合的であり、実現するにあたって通常の魔法の行使と比べて労力がかかりすぎる。
魔法が使える人間が一定数いる環境であれば、特殊な使い方をするもの以外はメリットがほとんど無い。
あの意識疎通のスクロールは非常に複雑な魔法であり、四元素すべてを使用し、精密な元素のコントロールが必要なため、使用できる人間が限られることから、スクロールにせざるを得なかったのだろう。
そう考えると、非常に貴重なものであるため、そのうち返却しよう。
ここ数カ月は店の運営と、魔法術式の解析に費やしており、殆ど自室に篭もりっきりになっていた。
たまにエリーナが様子を見にきてくれる。
エリーナとライマは高級娼館に移している。
まだ、そちらの方は軌道に乗っているとは言い切れないが、総合的なサービスを提供するということで、そういった業態が珍しいため、軌道に乗るにはそれなりの時間が必要になると考えている。
彼女らの学習の期間充てる時間と考えているので、問題はない。
本や取り寄せたスクロールに記載された魔法術式を解析し、必要な部分をライブラリ化していく。
俺が魔法が使えないため、術式のテストを行うために、各元素を集める術式の解析から始めることとなったため、少し時間がかかったが、元素収集術式のライブラリ化が済み、急激に研究が進むこととなった。
これでパソコンがあれば、五倍ぐらいの生産性は望めるかも、などと思いながら、作業を進めていく。
最も難航すると考えられる弾丸の生成部分については、テスト用の銃を作りながら、進めていくことにする。
四元素の操作で、金属を精製する場合、火と土の元素を主体として、その他の物を合わせて生成していくのだが、その割合も、弾丸の形状にするのも、まだまだ研究が必要である。
また、物質を顕現させるにはかなり、長大な術式が必要になることから、術式自体の圧縮の方法を検討する必要がある。
それと、魔法を調べていくうちに気になったのが、精霊魔法の存在だ。
そちらも、おいおい調査してみることにしよう。
開店から三ヶ月が過ぎ、店の経営は、完全に軌道に乗り、『花畑』については、客足が途絶えることがない。
他の店に比べて女の子の取り分を増やしているが、それでもそれなりの収入である。
店のマネジメントについては、まだ客の少ないことと人当たりが良いため、高級娼館『秘密の花園』のエリーナに任せることにした。
『秘密の花園』についても、客数は少ないものの、なんとか赤字にならない程度に客がついている。
先を見越して、そろそろ、高級娼館の方も女の子を増やす必要があるだろう。
外は秋の気配と虫の声が満ちており、館内は熱気に溢れていた。