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魔法院

下書きから修正してると、増えすぎたので2話に分けました。

「愚連隊の奴等と同類だと思われてるよな。俺って。」

 エルネスツの鍛冶場で研ぎ直しの作業を眺めている。

 何だか、自分が自分で無いようだとも思うし、自分の生き方は変わっていない様にも思える。

「約束だ。使い方を聞いてやろうか。」

「やっぱりいいや。殺しはして無いけど、思い出したくないわ。」

 まだ、人間を斬った感覚が手に残っている。

「今度は、銃を作ってもらおうと思ってるんだよ。」

「人殺しはしたくなかったんじゃないのか。」

「そうそう、それで、ちょっと考えてる事があるんだが、魔法を使ってさ。」

「魔力で弾を飛ばすのか。」

「そう。そうすりゃ、殺さない程度に威力を調整できそうな気がするんだよな。そう言えば、魔法ってどこで教えてもらうものなの。」

「一般的には、魔法師団に入ってだろうな。野良の魔法使いもたくさんいるがな。」

 この国では、騎士団と対を成す『魔法師団』があり、魔法院という研究・開発機関を兼ねた組合の様なものがある。

 これまで、政策等でも『騎士』を焦点に当ててきたことが大きかったため、魔法使いという存在を忘れていたのだ。

「そういや、今日はギルドの会合があるから、昼からは留守にするぞ。」

「どうせ飲みに行くだけだろ。」

「否定はせんよ。」

「俺も街に行こう。」

「何しに。」

「魔法院ってのに、行ってみたい。」


 昼は街で摂る事にして、早めに街に向かう。

 すぐにエルネスツと別れ、ヨハンの屋敷に向かい、馬小屋に忍び込んで使用人に声をかけ、呼び出してもらう。

 幸い、今日は屋敷にいるとの事だ。

 ヨハンに思い付いたアイデアを話し、魔法院に話を繋いでもらうことになった。

 それから、遅い昼食を摂ろうと、城の近くの露天を見て回る。

 いい匂いはしているが、その場で食べるような物はあまり置いていない。

 宿の一階で飯を出す所を見つけ、粥とソーセージを食う。

 街中をあちこち見て回り、晩課の鐘を待つ。

 丁度いい具合に日が傾いた頃に、魔法院へ向かう。

 城の南側にある、豪奢な建物だ。

 衛兵に名乗ると、中の受付で聞くように言われ、受付嬢を見つけて話しかける。

 二階にある色々な機器の置いてある訓練室のような場所に通され、座って待つ。

 神官か魔法使いか分からないが、杖を持った初老の男が入ってきた。

「初めまして、私はケンジ・スズキと申します。急に押し掛けてしまう事となり、申し訳ありません。」

 あまり、握手の習慣は無いようなので、一礼しておく。

「ヴィリツ・ガランチャだ。此処の副院長をしている。」

「ご無理を言いまして、誠に申し訳ありません。」

「噂とは少し違う感じだな。」

「『綺麗どころ』の話でしょうか。あの件は、降りかかる火の粉を払っただけですよ。」

 こちらから乗り込んでおいて、火の粉云々など、白々しいと自分でも思う。

 勢い良くドアを開けて、ヨハンが入ってくる。

「ケンジ、一体どういう事だ。『綺麗どころ』の件は。」

 待ち合わせの間に噂を聞いたようだ。

「いや、話し合いをしようとしたんだが、上手く行かなくてさ。」

「一人で乗り込むなんて、何を考えているんだ、お前は。怪我は。」

「いや、別に。」

 ヴィリツは、その様子を見て苦笑じている。

「その話は、後にしよう。待たせるのも悪いので、本題に入りましょうか。」

 ここに来たのは、魔法を応用した、銃の開発の検討の為だ。

 銃を撃つのに、魔法を使えば、弾薬も必要無くなるし、威力調整も可能かと思われる。

 まだ、火縄が主流な中では、連射や雨天への耐性は大きなアドバンテージとなる。

 恐らく、自動小銃ができるまでは優位を保てるだろう。

 それ以前に、魔法と言うものを見てみたいのもある。

「私の国には、魔法が使える者が全くいませんでしたので、まず、どんな物か、原理や考え方をお教え頂きたいのです。」

「ほう、魔法を見た事が無いと。」

 そう言って、自慢げに指先に火を灯す。

「簡単に説明すると、自然界を司る火、水、風、土の四つの属性があって、四元素という。エレメントとも呼ばれることもあるがな。これらを体内の魔力を用いて操ることを魔法と呼ぶわけだ。個人ごとに四元素の属性との親和性が異なるから、それぞれ得意な魔法が違う事になる。ヨハン殿であれば風の属性、儂は土の属性だ。先ずはお主の属性を見てみるか。」

 黄色く輝く水晶を棚から取り出して、机に置くと、水晶は透明に戻る。

「この水晶は、触れる者の属性により、色が変わるようになっておる。火なら赤、風なら白、水なら青、土なら黃に色付くようになっておる。儂は土と風の属性との親和性が高いから混ざって明るい黄色になる。」

 次はヨハンが触れると、真っ白に輝く。

「俺は、ほぼ、風のみだから、純白だな。」

 次に俺が触れる。

 色に変化は無く、透明なままだった。

「残念ながら、魔法の適性が全く無いようですな。」

「魔法の適性がある人間は、どの位の割合になりますか。」

「適性というか、攻撃に使えるぐらいの魔法を発現できる魔力を持っているのは一割から二割の間だな。お主のように魔力が全く無いのは逆に珍しいんだがな。」

 魔法の無い世界から来たからか。

「そう言えば、スクロールは使えたんですが、何故でしょうか。」

「魔法は、周囲の元素に魔力で干渉して、魔法を行使するものだが、スクロールは、周囲の元素を直接集めて、行使しするものが殆だ。そういった構造をしているから、それなりの大きさになる。」

 そう言えば、意識共有のスクロールは、一畳ぐらいあった。

「スクロールに書いてある、魔法陣はどんな素材でも書けるのですか。」

「魔法陣。術式の事だな。魔力や元素を通し易い素材で術式を記述する必要がある。最も多く使われているのは、銀でだな。スクロールだと、それなりの厚さのある羊皮紙に術式を掘り、そこに銀粉を含んだインクを流し込んで作製する。」

「トラップみたいなのを、作ったり出来ますか。」

「可能だ。但し、それなりの実力のある魔術師なら、元素の乱れに気が付くとは思うがね。」

「スクロールの描き方等が記載されているような本は有りますかね。」

「ああ、魔法具を作る研究室があるから、そこになら置いているだろう。」

「魔法術式の描き方についての本をお借りしたいのですが。」

「かなり重要な物になるから、貸し出しはできんな。ここに読みにくればいい。必要なら研究室やへ紹介状を書こうか。」

 まだ、字が読めないのに、内容を覚えるまで、ここに通うのは面倒だ。

「ここには、魔法を習いに来る若者は居ますか。」

「ああ、毎日、騎士の子弟や魔法師団を目指す若者だったり、色々な所からも、魔法使いが研鑽や学習の為に集まってくる。」

「その中の誰かに、写本をお願いする事は出来ませんかね。勿論、報酬は払います。」

「なるほど。では、後日、当たってみてやるか。」

「ついでに、字も教えて貰いたいので、報酬は弾みます。報酬の交渉もしたいので、私の所までお越しいただくようお伝え願います。」

 明確な目標があれば、字を覚えるのも、早くなるだろう。

「おや。」

 ヴィリツが、不思議そうな顔をする。

「あと、もう一つ、一般的では無いんだが、精霊魔法というものがある。」

 四元素があれば、それに応じた精霊がいるのは、当然か。

「ただ、教会の考え方とは反し自然を信仰するものでもあるから、ここでは一般的ではないな。」

 騎士団がこの地に派遣されたのも、隣国からの防衛とともに、処女教会の布教活動も担うものだったのだ。

 あくまでも『元素』と呼ぶのは、エレメントに対する信仰を否定し、土着信仰を排する方針の一つでもあるらしい。

「そういえば今、お主から元素の揺らめきを感じたような気がしてな。」

「気がするとは、どういう事ですか。」

「色の感じられない元素を感じたように思ったのだが、ただ、余りにも微かなもので、儂の気のせいかも知れんな。」

「もしかして、第五番目の…」

 ヨハンが興味深そうに入ってくる。

「いや、そういった物ではないな。」

「五番目と言えば、エーテルですか。」

 何となく、そんな知識はあった。

「知っておるのか。まあ、五番目はそうなんだが、先ほどお主に見えたのは、ただの揺らぎというか、その程度のものだ。魔力が全く無いことがなにか他の元素に影響を与えているのかも知れんな。」

 礼を述べて、訓練室を後にする。

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