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通勤から

他の方の作品を読んでると、とりあえず、書きたい物が書き溜ったので、投稿します。

実際、書き始めてみると、難しいものです。

稚拙ながら、投稿してみることにしました。

宜しくお願いします。

 地下鉄のエスカレーターを下り、空調の効く場所で一旦止まり、ネクタイを緩めて胸元に空気を送り込む。

 ゴールデンウィークを間近に控え、数日前から急に気温が上がりはじめた。

 温暖化のせいなのか、春をすっ飛ばしてしまっている気がする。

 終電も近づいてきている時間で、都心なら酔客も目立つ時間帯のはずであるが、人気がない。

 零細システム開発会社に勤めており、客先での開発が多く、あまり来たことのないところなので、そんなものかと気にも止めていなかった。

 上りのホームに向かう連絡通路を歩いていると、不意に暗さを覚えた。

 停電かと思い、立ち止まったまま、誘導灯を目だけで探すが、それも虚しく闇に包まれる。

 一瞬、気を失ったのかと疑ったが、眩暈などは感じられず、立っている感覚が残っているため、そのまま身を固くして状況把握に努める。

 次の瞬間、目が眩む。

 目が光に慣れる前に、耳が異常を捉えた。

 鳥のさえずり、木々のざわめき。

 視界にあったのは、耳が捉えたとおりの自然のあふれた風景だった。


 パニックを起こしそうだ。

 そう感じ、現状を否定してみようと、強く目を瞑り、ゆっくりと開けようと試みるが、聴覚がそれを否定する。

 怖くて暫く目を開けることができなかった。

 どれぐらい、じっとそのまま立ちすくんでいただろうか。

 鼓動はまだ落ち着かない。


 数分経ったくらいだろうか。

 近くで葉が落ちる音を聞きつけ、視線を向ける。

 立っているのは土の道の真ん中で、道のまわりは少し開けているため、明るいが、木々に囲まれている。

 葉が落ちた以外の異変がないことを確認し、改めて周囲を見渡す。

 植生が違う。

 日本ではない。

 少なくとも、本州ではない。


 胸ポケットからスマートフォンを取り出して、電源ボタンを押してみる。

 そこには、00:08と表示されていた。

 明らかに午後の日差が見えるが、本来であれば、電車に揺られて帰宅途中の筈であった。

 時間経過は体感通りであるということだ。

 もう、子どもたちは寝ている頃か。

 ふと、自宅や家族のことが過ぎると、現状を否定したくなった。

 現状を否定し思考停止に陥ることは危険だと、理性は警告しているが、感情はそうでは無かった。

 現状を受け入れ、対策を考えることが、家族に会えなくなる事を肯定することと同意に思えるのだ。

 ただ、現状を受け入れないというのは、自分らしさを否定する気がした。


 考えろ。

 考えろ。考えろ。

 まずは、対策を考えろ。

 そう、自分に言い聞かせる。


 所持品のチェック。

 周囲の確認からの、状況の推測。

 推測からの行動の立案。

 すべきことは、山ほどある。


 肩がけの通勤鞄には、書類、電子書籍リーダー、イヤホン、充電バッテリーぐらい。

 ポケットには煙草にライター、スマートフォン、財布とハンカチ。

 やはりと言うか、食糧も無ければ、役に立ちそうな道具もない。

 強いて言えば丈夫なこの鞄ぐらいか。

 ナイフの一本でもあればなんて思ったが、平和な日本じゃ、銃刀法違反だ。


 今更になるが、周りを見渡す。

 季節は春か秋か。

 温暖な気候で、日本とそう変わらない気がする。

 南半球である可能性も考えれば、南北は当てにならない。

 太陽はやや傾いているが、時間が分からないなら、東西も怪しい。

 里山の小道と思ったが、山地のような傾斜は見当たらない。

 そう、今立っている場所は、日本では存在しない、「森」の道と考えるのが妥当なようだ。

 四方には暗い、鬱蒼というような雰囲気ではないが、森が果てしなく続いており、山が見えない。

 ヨーロッパには行ったことは無いが、それを彷彿とさせる景色だ。

 植生と合わせると、ここが日本である可能性は無くなった。


 足元に視線を落とすと、安心するとともに、背筋が寒くなる。

 轍があった。

 遠くない場所に文明を持った人間がいることは確実となった。

 ただ、その轍が細いのだ。

 この現代で、轍ができるほど馬車を常用している国や地域など聞いたことはない。

 まぁ、ただ、知らないだけかもしれないが。

 更に、日本であることが強く否定されることにもなる。


 日本ですらなく、現代ですらない。

 いつの、どこにいるのか、もはや想像すらできなくなった。

 これ以上の推測は、無意味な気がしてきた。

 新たな情報が欲しい。

 情報とともに、水や食料の確保も考えなければならないが、ともかく、移動するしか方法はないだろう。

 ここが山地ではないため、遠くの景色も見通せず、集落がどこにあるかも分からない。

 さて、移動するにしても何日歩くことになるのか。

 水分及び水筒の代わりになるものもない。

 友好的かどうかは賭けてみるしかないが、文明を持った人間が近くにいるのであれば、生存率は高くなりそうだ。

実は、作品を評価した事がありません。

いつも、面白い!と世界観が良いなとか単純な感想しか出て来ず、非常に苦手です。

他の筆者様方、すみません。

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