読み手の立場になって考えてみる
タイトル通りです。
これまで小説を書くにあたり、読み手のことを考えて執筆しているつもりではありましたが、本当にそうだったのかを改めて考えてみます。
まず、一番難しいテーマ。読み手はどういったものを求めているのか。
私自身が成功者ではありませんので、何が正解なのかなど全く分かっておりません。そのため、消去法で考えてみます。
つまり、読み手側からして「読みたくない小説」や、「読みにくいと感じる小説」とは何なのか? それを考えてみます。
例によって、個人的な部分が多分に含まれる解析となっておりますので、ご了承ください。
私的あまり読みたくない小説候補1
◆あまりにも普通過ぎる日常が展開される小説。
こういった小説はどうでしょうか。
・朝起きて、パジャマから着替えて朝食を食べた。 ※意味のない日常描写
何気なく流れるテレビのニュース。テレビの時計学校へ登校した。 ※伏線になりうるニュースを無視
授業をこなし、家へ帰り、夕食を食べ就寝した。 ※色恋沙汰の伏線もなし
今日も一日平和でした。 ※え? っと思われる形で終わる日常描写
何もない日常を小説として語られ続けても、私自身は面白みを感じません。読むのを苦痛と感じ、どんな繊細な描写や表現が上手くても、あまりにも変化のない日常風景では読むのを止めてしまいそうです。具体的にこういった小説を読んだことがある訳ではありませんが、小説の中では無意味な描写にとって「この描写は何の意味が?」と感じ、こういった部分が続くと読む気が削がれてしまいます。
主人公達には、思わず笑みがこぼれてしまう程に、良い意味で読み手の期待を裏切ってもらいたいという思いを抱いています。
私的あまり読みたくない小説候補2
◆専門用語ばかりor説明のない用語ばかりの小説
ふむ。例外はありそうです。一部のマニアに向けたメッセージを込めた小説である場合、それらのメッセージを受け取ったマニアは読みふけるかも知れません。
・照準器の正面に敵機を捉えるために、両手で重い操縦桿を操作する。
敵機はそのたぐい稀な機動力を生かし、右に左に巧みに動き狙いを定めさせない。逃げる敵機を追い、時速は既に400kmに達しようとしている。限界速度も近い。
こうなれば、最後の手段を講じるしかないだろう。プロペラピッチ操作を手動で行い、一瞬だけ過回転へと押し込んで回頭性を上げる。下手をするとそのまま空中分解。……だが、今はこれ以外に奴を落とす手段がないのも事実。
プロペラピッチを手動操作し、過回転となったプロペラとエンジンから異音という咆哮を上げる。同時にフラップ操作を行いたいが……くそ、手が足りない!
プロペラピッチを急いで戻し、即フラップ操作へ切り替えると……プロペラ超しに見える敵機が、照準器と交差していく!!
重い引き金を渾身の力で引き、ガチリという音と共に機首についた20ミリ機銃が火を噴く。徹甲弾、曳光弾、炸裂弾が交互に放たれ、敵機の胴体と主翼と尾翼に幾つも穴が開く。
次の瞬間には敵機から白煙が出たかと思うと、機体は一瞬で炎に包まれる。タイミング的には曳光弾での着火だ。こんな幸運もあるものなのかっ!
やはり天はまだ私を見放してはいなかった!
分かる人には解る難解な小説ですが、一部のマニア層向けにはアリなタイプの小説です。
私はこういった小説を見つけられれば、読みたい派です。
たださっぱり面白味も含めて意味不明という方も多いのも事実。つまり、好みの問題というところに落ち着いてしまう部分でしょう。
・ヘイセイ歴10030年
世界にはクリーチャーが溢れ、人類の文明は崩壊した。
しかし、救世主は存在した。光の剣「光魔剣」を手にした少女、明日香。彼女は一刀両断でクリーチャーを切り伏せていく。
旧世代の地上兵器でも歯が立たなかった敵を、難なく切り伏せる明日香という一人の少女の存在。
それは正しく人類にとって希望の星であった。
そして彼女は敵の首領を倒すべく旅に出るのである。
小説にもなっていない内容ですが、クリーチャーとか光魔剣とか、文明が崩壊した理由とか。一切の説明を抜きの展開にしてみました。ほとんどあらすじに近い内容なのですが、実際にこういった小説をお見掛けしたこともあります。凄く説明付き不足なんです。何度も反芻し咀嚼しようとしても、全く理解不能な小説もあるのです。
意外と多いのですが、固有名詞の乱用でこれに似たようなことをやっている小説はよく見かけます。
小説の冒頭部分で世界の名前、国の名前、王様の名前、王女の名前、地方・地域の名前、数多くの登場人物の名前。これらっての固有名詞って、本当に必要なのでしょうか???
これは実際、読む側の混乱を招くだけのように感じています。せっかく考えた設定なのだから、書きたいと気持ちはとてもとても理解できますが、それらの情報は少なくとも主人公の目線からはどれも見えず知らない情報ばかり。
例えばですが、遥か上空に鳥が1羽跳んでいたとします。
飛竜が飛んでいても、主人公にはただの鳥に見えるでしょう。目の前にいるのが神様でも王様であっても、みすぼらしい老人かコスプレ親父に見えるかも知れません。
でば、神や王が下々の者である主人公に、直々に名乗るのでしょうか。確かに名乗ったとするとなると……。
王様「儂がお主をこの世界に呼び寄せさせたのである」
主人公「あんた、本当に王様なのか?」
王様「貴様、無礼な発言じゃな。……異世界より来た者として大目に見てやるが、次はないぞ!」
主人公「うっわ、本物かよ。すげーな、異世界ってさ!」
王様「き、き、き。貴様、儂を侮辱するのかっ!」
発言の前の名前は仮に付けましたが、確かに台本っぽい展開出来るかもしれません。語尾に「じゃ」とか、「である」などを付ければ、発言者を区別も出来ます。ただ、たったこれだけのためにリアリティーを削り、小説の質を落とす必要もないと思います。
神だと名乗らせなくても、神と認識させる文章を書けば良いのです。また、この展開とは逆で物分かりの良すぎる主人公も、少しリアリティに欠けます。
一番興ざめなのが、転移や転生した世界の名前が書かれているパターンです。私はこの時点で、ほぼブラウザバックしています。
執筆者の脳内ではこの世界は異世界としての設定があり、その異世界に名前を付けたのでしょう。ですが、それって執筆者の傲慢以外の何物でもないと感じます。
目の前に、別次元からの来訪者が現れたとしましょう。偶然にも言葉が通じ、人としてコミュニケーションが図れたとします。
「ここは……。はっ! あ、あなたは一体!?」
「だ、大丈夫です。ここは、地球という世界です」
「ち、ちきゅう? 聞いたことない世界ですよ?」
「あ~。うん。ここは、日本です」
「に、にほん? なぜコロコロ世界の名前が変わるの?! もしかして、何か隠している?」
さて、私達が暮らすこの世界の名前。何て名前ですか?
地球? それは惑星の名前では?
日本? それはこの国の名前では?
日本でもなく、アジアでもなく、ユーラシア大陸でもなく。地球ですか? 宇宙でしょうか。
執筆者が思い描く世界は、現世界から見れば間違いなく異世界であり、だからこそ名前がある。ただ、本来世界に名前など無いのではないでしょうか。
私的に読みたくない小説候補3
◆2とは逆で、説明だらけの小説
設定自慢をしたいのは解ります。ただ、その余計な解説は誰のために必要なのかって話です。
地文でその説明をやるなら、第三者(神)視点なのでしょう。何で神が読み手に説明をするのか? それ、つまり執筆者の設定自慢でしかないです。
主人公に説明する。させるのであれば、まだ理解は出来ます。ただ、何故説明するのか。必ず理由があるはずなのです。
そしてそれらが何かの伏線なのであれば、それは正当な理由になります。説明、解説する理由が無いのであれば、それは執筆者の自慢になるのだと思います。
そうではない。自身の小説では必要な説明なんだと。そう思われる方もいるはずです。では、例えば人々が住まう世界の説明や時代背景の説明部分、登場キャラクターの説明部分。見た目では解りにくい機能や仕組み、概念についての説明部分。これらの情報を隠しあえて説明足らずにしてみませんか?
謎を含む小説は、読み手の思考を生みます。しっかりとした設定を考え、最終的に辻褄さえ合わせられれば、説明足らずは小説としての魅力向上に繋がります。
適当な設定では、あとで自分の首を締められますのでご注意下さい。
私的に読みたくない小説候補4
◆リアリティの欠如しすぎる小説
このエッセイでも書いてきていますが、あまりに非現実的行動をしていたり、リアリティに欠ける現象が描写されていたり。
これは自身の小説でも、そういった表現をしてしまっているという自覚はあります。
ただ、やはり読み手として無理過ぎる展開が起こった時、それは読み進めたいという思いが冷める瞬間だと思います。異世界転生をして無双も良いですが、精神が現代の日本人のままであれば、例え正当防衛であっても殺人は出来ないでしょう。例えば、家畜の屠殺現場も平気で見られるし、自らが刃物で家畜を屠殺出来るような方であれば、魔物やモンスターくらいは殺せるかも知れません。血やグロい表現に耐性があると思われますので。
ただ、そんな方であっても、言葉が通じ必死に命乞いするコボルト(犬型魔獣)に刃を突き立てるのには躊躇するはずです。
死の影から離れた生活を送る現代に生きる日本人では、剣があってもまず無双は出来ないのです。
また、強引な展開は物語の導入部分で目立つように感じます。主人公を殺す(転生させる)ために突っ込むトラック。これも何かの伏線であるならまだ良いでしょう。刃物を振り回す通り魔。原因不明の突然死。本来であれば死ねない方法で死ぬ主人公……。
そして、それら突然訪れた死を、錯乱もせず簡単に受け入れる主人公の精神……。この時点で異常なのです。
私的に読みたくない小説候補5
◆文法が崩壊している小説
小説文法が完璧でなくても良いんです。誤字があっても良いんです。ただ、最低限の文法は押さえて欲しいのです。全くもって人様の事をいえない自分なのですが、この場所がどういった場所なのか説明がなく展開されていたり、それこそ解読不能な文法であったり。
割と多いのは、読むのに疲れる(読めはしますが)文章ですね。
・例えばこんな感じで展開される文章で、読点で繋ぎにつながれ、文章を読み終えるという休憩を与えてもらえず、なおかつ、終始こんな感じの文章で綴られる小説を指します。……ふう。
書いている本人には分かっていないのでしょうが、ネット小説は空白も作品としての意味を持ちます。
読みやすさも必要であり、長い文章はそれだけで読まれにくさに繋がります。簡潔な文章で書け。という意味ではなく、読みやすさが必要なのだと感じます。
まだまだあるのですが、とりあえずこれくらいで締めます。
その意味としては、一話あたりの文字数です。ここまでで空白込みで4300文字程。空白無しで4130文字です。短編でもない限り、連載系の限界は5000文字辺りでないかと感じます。
一万文字とか書き込んでいる方も見受けられますが、出来れば分割しましょう。場面が変わらないのだとしても、読み手は途中で疲れますよ。