推理紀行~越の風華~
目賀見勝利の推理紀行『越の風華』
〜推理小説「越の風華」三部作に寄せて〜
『三ぜん世界一同に開く梅の花、艮の金神の世に成りたぞよ。梅で開いて松で治める、神国の世に成りたぞよ。』
三ぜん世界:神霊界(霊界)、幽霊界(仏界)、人間界(現界)の三霊世界。
梅:大本教では「教え」を意味する。
松:大本教では「政治」を意味する。
という文章は、明治25年の旧正月元旦に大本教開祖・出口なお に帰神した神・艮の金神よって降ろされた神勅である。
俗に『お筆先』と呼ばれ、文盲である出口なおの手にある筆が自動的に動く現象によって、神勅は紙上に書かれる。
お筆先によると、艮の金神とは『大国常立尊が神功皇后と出て参る時節』に現れる神のことらしい。
また、『大国常立尊が神功皇后と出て参る』と『世界が一度に動く。水も漏らさぬ経綸が致してある。』らしい。(八幡書店発行の増補三鏡・出口王仁三郎聖言集29頁による)
単に、『国常立尊』ではなく、『大国常立尊』と称している意味を何と考えるかである。
筆者は大国常立尊の大国(常立)尊に着目した。
常立を魂と置き直すと大国魂尊となる。
東京都府中市に大国魂神社がある。祭神は大国魂神であるが、それは大国主尊と同じ神様であると神社の由緒書にはある。大国主尊すなわち大巳貴尊である。神様の系譜を辿ると国常立尊から八代後に大国主尊が登場する。
(国常立神→1豊雲野神→2建速須佐之男神→3八島士奴美神→4布波能母遅久奴須奴神→5深淵之水夜礼花神→6淤美豆奴神→7天之冬衣神→8大国主神:東京美術社・神々の系図・昭和51年10月発行による)
また、神功皇后(息長足姫命)は八幡大神(誉田別命)を産んだ人物であり、2世期〜4世紀頃に現れた人物であり、宇佐八幡宮・鶴岡八幡宮の祭神である。
以上の理由から、小説「越の風華」の中で『火継神事』を主催するのが大巳貴命(大国主命の別名)であるとした。
『火継神事』を8人の人物で実行させたのには他にも意味がある。
大国魂神社の祭礼《暗闇祭り》は4月30日品川区天王洲沖東京湾上での汐盛講・禊祓式から5月6日神輿渡御・鎮座祭までの7日間の神事であり、最後の日には夜間・闇夜に八基の神輿が行列を整えて御旅所に渡御する。そして、朝が来るのである。
また、7日間の七は北斗七星を意味し、八基の神輿は七人の残りの1人が救世主であることを意味する。
艮とは十二支の牛寅であり、東北方位を意味し、出雲伊波比神社(祭神;大巳貴・天穂日・誉田別・息長足姫)は本殿が東北を背にして建てられており、世界の縮図・日本列島の東北方位には青森県十和田湖がある。そして、十和田湖近くに皇祖皇太神宮主斎・竹内巨麿が指定した救世主『イエス・キリストの墓』がある。
それは、7+1=8と云うことである。
また、宇佐八幡宮の祭神は八幡大神・比口羊大神・神宮皇后であり、比口羊大神は宗像三女神のことであり、三女神の一柱・市杵島比売命こと妙音弁財天が含まれる。市杵島比売命は鹿嶋神宮・明石海岸沖・見目浦の海中磐座に坐ます神である。
ところで、小説の中で『火継神事』が行われた建造物『ステンレス列柱』、『火焚き場』、『三ぜん世界神殿モニュメント』は埼玉県比企郡鳩山町の鳩山ニュータウンの西の端に存在する『銀河の丘』にある。
そこで、誰が何の目的でこれら建造物を計画したのかを調べてみた。
鳩山ニュータウンは昭和45年(1970年)の埼玉県による比企丘陵都市開発構想にはじまる。
そして、日本新都市開発株式会社が開発に土地を取得して、住宅開発に着手した。昭和48年(1973年)に第一期の分譲開始があり、昭和53年(1978年)に第二期の分譲開始、そして昭和58年(1983年)に第三期の土地造成が開始された。
銀河の丘は、この第三期工事の時期に造られたようである。
そして、この丘にある三つの構造物(幅12m×奥行8m×高さ7mの12本のステンレス列柱、幅21m×奥行5m×高さ3mの三ぜん世界モニュメント、直径19mの円形窪地の火焚き場)は第三期の分譲が開始された平成元年頃には完成していたようである。
この時期、世界最高分解能0.047ナノメートルの電子顕微鏡を有する日立製作所の基礎研究所(現、中央研究所鳩山サイト)も完成している。日立製作所の基礎研究所の敷地内にある調整池の中央には噴水と並んで龍神が宿ると思われる浮島がある。この調整池は、敷地造成前には赤沼と呼ばれていた池であったとされている。
さて、三つの構造物がある銀河の丘は、日本新都市開発によって構築されたのであるが、計画段階では『ユリウスの丘』と命名され、日本新都市開発では天球を含む黄道12宮(占星学)の星座を意味する12本のステンレス列柱を『ユリウス』と呼んでいたようです。
ちなみに、新都市開発ではステンレス列柱をシンボル・ファーニチャーと呼んでいました。
『ユリウス(Julias)』とはローマ皇帝のジュリアス・シーザー(英語読み)のことです。イタリア語読みではユリウス・カエサルです。
「ブルータスお前もか。」と言った、ローマ元老院に暗殺されたあのシーザーです。
シーザーが紀元前46年にローマ帝国の暦を太陰暦から閏年(紀元年数が4で割り切れる年)を含む太陽暦(ユリウス暦と呼ばれている)に変更したのが名前の由来です。現在の世界では紀元年数が400で割り切れない閏年は平年とするグレゴリオ暦(ローマ法王グレゴリオ13世が1582年制定)が用いられています。
さて、『ユリウスの丘』が『銀河の丘』に名称変更されたのは、鳩山町の意向だったようです。(トロッコ好きのB君が宮沢賢治の故郷でトロッコ写真を撮ろうとして列車から落ちて死亡したようです。そのB君を偲ぶトロッコ公園を鳩山町が造ることにしたようです。)
『銀河の丘』の背後に『銀河鉄道999』に構想を得た、999mのトロッコ用線路が鳩山町によって構築されています。(鉄の2本の車線路は無く、遊歩道の敷地と2か所の途中駅(白鳥の停車場、鷲の停車場)があり、始点駅(銀河ステーション)と終点駅(天の川ステーション)にB君(故人)が持っていたトロッコ台車と日本新都市開発社が手に入れたトロッコ機関車が展示されています。
鳩山町には人工衛星からの地球観測映像電波を受信する4基の直径10mパラボラアンテナを有する宇宙観測センター、気象衛星からの映像電波を受信する2基の直径18mカセグレンアンテナを有する気象衛星通信所があり、宇宙との関りが深い町である。
このことから『銀河の丘』と命名されたようです。
日本新都市開発社よる当初のユリウス仕様書によると、
12本のコリドー型列柱のうち最低高は2.5m、最高高は6.0m、
ステンレス天球の大きさは直径3.5m、高さ1.2m(半球のため半径)であり、標高地図によると『銀河の丘』入口広場は標高75mの高さにある。
(注記:75の意味)
出口王仁三郎は『言霊は地上75尺(約23m)の高地より発するのがほんとうである』と述べている。標高75mは数字の75が75尺と同じだけで特に意味なしか?尺間法の時代は75尺、メートル法の時代は75mと考えれば、75の意味が問われる。キリストとサタンの約束で75年間サタンが自由に振舞える期間が与えられたとされる。また、ヨハネの黙示録にある、ひと時とふた時と半時の間とは30+30+15=75の期間と解釈できる。また、アメリカでは、ケネディ大統領暗殺に関する1964年作成の報告書は75年後の2039年まで公表されないとされた。
また、ステンレス列柱モニュメントのある標高85mの『ユリウスの丘』までの昇る階段の高さは9.6m、長さ26.3mとなっている。
そして、『ユリウス』に隣接する芝生緑地広場の広さは2000平方メートルで、
広場にある円形の窪(凹)地(小説では『火焚き場』)の内径16m、外径20mとなっている。なお、日本新都市開発社の計画書では、この円形の窪地はUFOの着陸地か月のクレーターをイメージしていたようである。
また、小説での『三ぜん世界モニュメント』の名称は『遊具』となっており、全体面積42.1平方メートル、ステージ部(小説では現界部)25平方メートルとなっている。
著者の推理では、これらの構造物はやはり小説通りの意図が神にあり、神意が日本新都市開発社の計画担当者に舞い降りたのではないかと考えている。
さて、ユーラシア大陸の西海岸の島国イギリスには古代遺跡『石列柱』がある。
『石列柱』は天空の太陽、月、星座位置を認識するための古代の暦に相当する機能を有する構造物とされている。
そして、ユーラシア大陸の東海岸の島国日本には『ステンレス列柱』がある。
この二つの島国はユーラシア大陸の左右の門柱である。そして、その門柱の役目は宇宙の神々の黙示を伝えることであるのだろうか?
ところで、
『お筆先』にある『梅で開く』とは天神・菅原道真を祀る『天満宮』を意味する言葉であるが、菅原道真の先祖は殉死者の代わりに埴輪を古墳に埋めることを発案した野見宿禰であり、『梅で開く』とは犠牲者を出さないことを意味する。
天穂日命は出雲臣武蔵国造土師連の先祖であり、第11代垂仁天皇から土師職を命じられた野見宿禰に繋がる神様である。
『松で治める』の松とは政治であり、古代政治は神に祈り、神託を授かることによって民の繁栄を護ることであった。
東京の亀戸天神の神託には、『株立ちの株は十の字を用いよ』とある。
『株立ち』とは天神の分祀を意味し、子孫の誕生を意味する言葉である。
即ち、古い時代の終わり(終点)であり、新しい時代の始まり(始点)である。
なお、本小説では南比企丘陵(鳩山町と東松山市)で火継神事を行ったが、
北比企丘陵(吉見町と東松山市に跨る地域)には黒岩横穴群に『原伏見稲荷神社』、ポンポン山と呼ばれる場所に阿遅金且高日子根命と大巳貴命を祀る『高負彦根神社』があり、神社の裏にある東向きの岸壁にある巨岩の磐座で火継神事が行われたと著者は想像している。
なお、ポンポン山の謂われは、この巨岩の上に立って足を踏み鳴らすと、岩がポンポンと鳴るからであるらしい。(踏み方が悪かったのか、筆者が足踏みをしてみたがポンポン音は聞こえなかった。)
因みに、鳩山町の『銀河の丘』にある半球の天球儀の前床の石畳みを踏み鳴らすと「ポンポン」と音がする。床下に照明装置に関連する空洞が作られているためにポンポン音が出るようである。(筆者が経験済み)
また、古事記では阿遅金且高日子根命は賀茂大神とも呼ばれ、宗像三女神のうちのタギリ姫命(奥津島姫命)と大国主命(大巳貴命)の間に生まれた御子神である。
なお、阿遅は可美の意味で味と書かれる場合がある。金且は磯城で石畳の意味であり、巨岩に通じる。
因みに、『銀河の丘』の地表面は10Cm×10Cm角の白い御影石を多数敷き詰めた石畳で出来ている。
火継神事は日継神事であり、それは古い時代から新しい時代へ引き継ぐ儀式である。
2016年2月11日(木) 記 目賀見勝利
参考文献:
神々の系譜 川口謙二 東京美術社 昭和51年10月初版発行
増補三鏡 出口王仁三郎聖言集 八幡書店 2010年4月初版発行
鳩山町史2 鳩山の歴史(下) 鳩山町 平成18年3月発行
鳩山町勢要覧 平成9年10月発行版
日本新都市株式会社 鳩山NT 第三期 23号公園(61−6−18計画書)