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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
後半スタート(メインストーリー)
68/70

種明かし

「ところで刑事さん。どうして僕が、本物のワタルだと分かったんですか?」


 灰野さんは、不審なオフ会の潜入捜査をしていたという茶畑刑事に向かって質問したが……実際に答えを口にしたのは、隣にいた若草だった。


「確信を得たのは、バスに乗ってリタイア料金の交渉に向かった時です。僕が手錠を外して逃げようとしたら、灰野さんが止めに来たじゃありませんか」


 灰野さんは、俺と緑川と若草の3人を監視するために、大神さん、灰野さん、バスガイドのお姉さんの3人体制でバスに乗り込んだ。

 だから3人がバラバラに逃げたとしても、追いかけることが出来たのだが……その慎重さが、かえってボロを出す結果になってしまったようだ。


 それに若草はスマホを使って参加者たちの背後関係を調べ続けていたため、ワタルが黄崎オンラインやホストと接点があることに気付いており、以前から怪しんでいた灰野さんにトラップを仕掛けたという。


「……それじゃあ、若草君が、食堂で毒殺されたフリをした事にも意味があったのかい?」


「もちろんです。僕が死んだフリをすることで、予定していた計画を修正するために、どれだけの人間が、どう動くのかを調べていたんですよ」


 若草が毒殺されたフリをした時、1番最初に近付いてきたのは……灰野さんだった。


 彼が普通の参加者なら、また犠牲者が出たのかと思って驚くはずだが、灰野さんは屋敷の中に毒物が無い事を知っていたし、若草を襲うつもりもなかったので、彼が死んでいるはずがないと思い、つい『毒物ではなさそうだ』という言葉を漏らしてしまった。


 さらに、死んだフリをしていた若草の体を地下牢に移動した後、隣の牢に入って、俺に聞かせたのと同じように、行方不明になった少女の話や、ウルフブラックが臓器の取引をしているというデマカセを教え、自分が一条茜を探しにきた探偵だと偽ったのである。


「犬屋敷人狼で、たまたま『恋人のカード』を持っていた灰野さんが、僕と一緒に追放されることになったのは偶然だったようですが……アナタが探偵だと偽ったことが、真実を暴く決め手になったんです。家出ばかりしていた茜さんの父親は、警察に捜索願いを出していませんので、彼女が行方不明になった事は誰も知らないはずなんですが、どうして灰野さんは知っていたんでしょう?」


「それは……」


「彼女を幽閉していた犯人だからです」


「別に閉じ込めていたわけではないんだけどね。運河割男の部屋にも鍵なんてかけていなかったんだが……彼は全く出て行こうとしないし、説得にも応じてくれなくて困っていたんだ」


 灰野さんは肩をすくめた。

 運河さんは本当に寄生虫のような男だったらしいが、灰野さんは帰る当てがない彼を追い出すことが出来なかったらしい。


「とにかく、僕と緑川君は、一条茜さんの父親に依頼され、彼女を探しにきた探偵なんです」


「なるほど。僕は、本物の探偵さんに嘘をついてしまったのか。それでは勝てないわけだ。ようやく合点がいったよ。……僕にとって人狼ゲームは、恋人を失った悲しみを癒すための唯一の娯楽だった。なかなか勝てなくても、ゲームに夢中になっている間だけは、怒りも、悲しみも……全てを忘れることが出来たから……」


 灰野さんはゲームを楽しむために、職業カードを配る際には一切細工をしていなかったらしいが……それを聞いた緑川が、ボソリと呟いた。


「ニセモノの探偵と、本物の探偵が恋人のカードで結ばれていたなんて……皮肉なオチだね」


「やはり、神の目はあざむけないってことか」


 灰野さんがため息をつくと、茶畑警部が、モジャモジャ頭の少年と、ヘッドホンをつけている高校生たちの事を紹介してくれた。


「彼らは、ネットを利用した犯罪を専門に調べている高校生探偵なんだ」


「へぇ。本当にそういう人たちが存在しているんですか」

 

 てっきり、アニメの中だけだと思っていた俺が驚くと、2人の探偵がウヤウヤしく頭を下げた。


「ハッカーの若草と」

「助手の緑川です」

 

「ところで、2人は仲がいいの? それとも悪いの?」


 疑問に思って尋ねてみると、2人は顔を見合わせながら気まずそうに呟く。


「どうなんですかね。僕たちは友達というよりも……」

「相棒? いや……仕事上のパートナーだから」


 家も近所の幼なじみで、お互いを信頼し合っているという彼らを1番悩ませたのは……俺だったらしい。


「ポチさんは、とにかく色んな方と接触していましたから」


「ワタルの仲間なのか、彼のターゲットなのかもハッキリしないし、ホント、振り回されたよ」


 緑川が大げさにため息をつく。


「ごめん。だけど、俺だってワタルを見つけようと必死だったんだ。本物の探偵なら、そうだと教えてくれれば良かったのに」


「最初から正体を明かす探偵なんていませんよ」


「そういう点でも、灰野さんは怪しすぎ」


「あぁ、なるほど」


 ちなみに、主催者のフリをしていたバスの運転手は灰野さんの友人で、バスガイドのお姉さんは、亡くなった睦海さんの同僚だった。

 そして、空君のお父さんは、バスガイドをしていた睦海さんのお兄さん。


 以前から面識があった彼らが灰野さんの計画を手伝ったのは……。

 本当は、この屋敷で、盛大な結婚式が開かれるはずだったから。


 ホストの紫刃さんに目をつけられた睦海さんが、執拗に店に呼び出され、金を巻き上げられることさえなかったら……。


   ***


「なぁ、俺も探偵の仲間に入れてくれないか?」


 俺は若草と緑川に頼んでみた。

 こんな風に事件を追いかけるのは、ゲームで遊ぶよりも面白そうだ。


「どうしましょうか、緑川君」


「ポチは完全にだまされていなかったっけ?」


「それは……」


「きっと良い人だからですよ。そういう人ほど騙されやすいんです」


 若草はフォローしてくれたが、緑川は馬鹿にしたような顔でサラッと言い捨てる。


おとり捜査になら使えるかもね」


「おいっ。それって1番、危ないやつじゃないか!」


 俺はすっかり2人と打ち解けて、ラインの交換をした。




「ネットの闇はかなり深いです。危険も多いですから……」


「今度は相応の知識を身につけてから、連絡して」


 2人の探偵は、次の事件を調べるために立ち去った……。

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