負債人狼の答え
俺は必死にゲームの内容を振り返った。
最初に追放されたバスガイドさんは何の情報もなく役職不明。
狼に襲われた運河割男は、わざと味方陣営を破滅させるプレイヤーらしいので、何らかの職業を持っていたのに、仕事をしないまま消えてしまった可能性がある。
2日目、俺が強引に推し進めようとしていた大神排除計画に力を貸してくれたのは……偽占い師の若草だった。
彼は俺の計画を察知して、あえて大神さんを黒だと言って力を貸してくれたのかもしれない。
ちなみに、風邪かと聞いても、何の病気でも無いと答えてきた緑川は、役職がない村人だったのだろう。
夜のターンでは、青葉さんの襲撃に失敗した狼たちが妖狐を発見し、もう1匹の狼だった太陽さんが、桜さんを囮にして妖狐を排除しようとしたが……灰野さんが騎士だとカミングアウトし、青葉さんを守っていたと反論したため、俺たちは桜さんを追放することにした。
しかし、騎士になりすまして妖狐をかばった灰野さんこそ、背徳者だったのだ。
すでに本物の占い師がいなかったせいで、呪殺されなかった妖狐の正体が曖昧になり、俺がうっかり灰野さんと青葉さんを同じ村人陣営の仲間だと誤解してしまったせいで、妖狐を排除しそこねる展開に……。
本物の占い師は、ニセモノの占い師が出た時も全く反応していなかったので、初日に消えた2人のどちらかだったのかもしれない。
村人陣営を破滅に導いたのは……おそらく運河割男だろう。
とにかく、負債人狼の勝利者は……第3陣営だった青葉さんと灰野さんだ。
あれ?
ということは、負けてリタイア料金を支払うことになるのは、俺だけか!?
……なんで俺だけ?
もしかして、これは全部、大神黒子が立てたシナリオ通り⁉
背徳者が騎士のフリをしようとしても、本物の騎士がいれば阻止されて、妖狐陣営は一網打尽にされていたはず。
それなのに、わざわざあの場面で灰野さんが騎士だと名乗り出たのは、大神陣営に騎士のカードがあって、すでにそのプレイヤーが居なくなっている事を知っていたからかもしれない。
メイドさんを通じて全員の職業を知っていた大神さんは、占い師だった運河割男が噛み殺されたことを知っていたと思うし、妖狐に仕掛けたのはワタル君の手伝いをしている桜さんだし、まさかとは思うけど……灰野さんまで大神さんの仲間になっていたりしないよな?
彼は桜さんを助けるために潜入している探偵らしいが、彼女を助けるために、あえて大神さんが持ちかけてきた何らかの取引に応じた可能性がある。
それに、負けたら354万円のハイリスクな提案に乗った青葉さんは、元々大神陣営の疑いが強いプレイヤーなので、彼らは最初から演技をしていただけかもしれない。
突然、超高額のリタイア料金の話が出たのは……俺をハメるためだったのだ。
若草と緑川はおかしな話に飛びつかなかったが、俺はカードを配ることに執着したため、危険な賭けに手を出してしまい、運にも見放されて……大事な職業ばかりが大神陣営に渡ってしまった……。
いや、大神黒子は人狼ゲームに慣れている感じだったから、きっとどんな職業カードが渡っていたとしても、勝つためのシナリオを組み立てたに違いない。
彼は……ワタル君が用意した最強の助っ人プレイヤーなのだ。
だから、今回はたまたま背徳者を利用しただけ。
そして大神さんは俺に追放されることまで予測していて、自ら騎士のカードを持っていたに違いない。
だから、大神さんを追放することで、背徳者が妖狐を庇いやすい状況が完成してしまったのだ。
俺は敵のシナリオを崩すどころか、わざわざ手を貸してしまったらしい。
くそっ。
今思えば、大半のメンバーが大神さんの追放に賛成した時点で、オカシイと気付くべきだったのかもしれない。
まんまと騙され、高額の負債を背負わされた……。
嘘だろ!?
こんな金額、払えないぞ。
金が払えない俺は、屋敷の地下で体を切り刻まれることになり、ようやく俺への復讐を終えたワタル君は、姿を現さないままドコかに消えてしまう……のか?
信じられない……。
***
<負債人狼の役職発表>
ポチ……村人A
桜…………人狼①
太陽……人狼②
青葉……妖狐
空君……村人B
灰野……背徳者
バスガイド……村人C
清水……霊媒師
若草……狂人
緑川……村人D
大神……騎士
運河……占い師
***
問題2の答えは、物語の結末をご覧下さい。




