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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
後半スタート(メインストーリー)
62/70

駆け引き

 2日目の朝のターンが始まると同時に、


「黒を見つけました。今日の追放者は、大神黒子さんでお願いします」


と若草が声を張り上げ、それを聞いた桜さんが、


「えっ?」


と小さな声で呟いた。


「若草君は占い師なの?」


 太陽さんが確認すると、若草は、

「そうです」

と、ハッキリ言い切る。


「他に、占い師はいないのか?」


 灰野さんが俺の顔を執拗しつようにチェックしている。

 でも、俺は占い師じゃない。

 他に名乗り出る人もいないので、若草が正規の占い師として認められた。


「対抗する占い師が出てこないって事は……妖狐陣営は潜伏しているみたいですねぇ。よく喋る方は占い師に調べてもらい、発言の少ない方は追放しましょうか」


 大神さんはセオリー通りの提案をした。

 さりげなく自分が追放されにくい方法を口にするなど、ゲームの様子を見ている限りでは、大神黒子はやっぱりワタル君ではなさそうだ。

 動きも落ち着いているし、言葉にも迷いがない。


 常に落ち着きがないのは桜さんと、仕切りに頭を揺り動かしている若草で、動きが少ないのは緑川と清水さん。

 積極的に発言するのが大神さんと太陽さんで、周囲の様子を気にしているような青葉さんと灰野さんがあまり集中できていない感じだ。

 おそらく高額なリタイア料金のせいだと思うが……。


「ねぇねぇ。もう大神さんを追放しちゃえばいいんじゃない?」


 空君は早くも飽きてしまったようで、発言の内容が大雑把になってきた。


「灰野さん、どうします?」


「う~ん」


 負けると大金を支払う事になる青葉さんは、しきりに灰野さんの様子をうかがっている。

 そういえば、さっき、灰野さんが俺の顔を見ていたよな。

 あれは、何かのサインだったのかもしれない。


 例えば……協力しよう……とか。

 お互いの陣営は分からないが、354万円のリスクを抱えている俺と灰野さんと青葉さんには『負けたらヤバイ』という繋がりがある。


 俺は、探偵さんの顔を見つめながら、意見を述べてみた。


「占い師に黒だと言われた大神さんを追放した方がいいと思いますけど、灰野さんはどう思いますか?」

 

 あの人が、俺の大神排除作戦に乗っかってくれるかどうか。


「……。まぁ、役職があるって事は、人外の可能性もあるわけだし……」


 灰野さんが青葉さんの顔色を確認すると、空君のお父さんも同意してくれた。


「空が言うなら、大神さんを追放しちゃおうか」


 なんとか『負債同盟』が成立し、大神黒子を追放することに成功した!

 

 追放、あるいは狼に襲撃されたプレイヤーは、ふすまを開け放っている隣の『亀の間』に移動して、その後はゲームを見守るだけになる。

 早い段階で大神さんの隔離に成功したので、もはやメイドさんを通じて仲間たちに指示を出すことは出来ないだろう。


 司令塔を失えば、大神陣営の動きは弱くなるはず。

 特に、桜さんはボロを出すかもしれない。


   ***


 夜のターンの人狼の襲撃は失敗に終わり、俺たちは9人の状態で3日目の朝を迎えた。

 最初に口を開いたのは、これまで黙り込んでいた清水さんだ。


「俺は霊媒師なんだが、大神も、バスガイドも黒じゃなかったぞ」


 その情報が本当なら……村人陣営は、勝利するのが難しくなってきた。

 もし大神陣営の人たちに人外のカードが渡っていなかった場合、村人同士が斬り合ってしまっただけかもしれない。


 ゲームの勝敗をコントロールされないためには、大神さんの協力者たちを極力排除する必要があるのだが、それが必ずしも村人の勝利に繋がるとは限らないのが難しいところだ。


「大神さんが黒じゃないなら、彼に黒出しした占い師はニセモノだよ!!」


 嘘を見つけた空君が嬉しそうにその場で飛びはね、追放! 追放! と連呼し始めた。


「だが、偽占い師の追放には慎重になるべきだと思うぞ。もう狂人を追放している余裕は無いからな」


 清水さんがニセモノの霊媒師という可能性だって充分にあるし、もし本物の霊媒師なら、まだ1匹も狼を追放出来ていないので、今回は絶対に吊っておきたい。

 これまでに妖狐を追放出来ていなければ村人陣営は崖っぷちだが、残り人数が少なくなれば、キツネは呪殺出来る可能性がある。


「対抗霊媒師はいないのか?」


 名乗り出る人物がいれば人外を絞りやすくなるのだが、灰野さんが全員の顔を見回しても、2人目の霊媒師は出てこなかった。

 序盤に多くの役職者を失ってしまったか、ここぞという勝負時まで潜伏し続ける作戦だろう。

 

「……いないみたいですね」


 とりあえず、声を出しておこう。

 

「若草君が狂人なら、追放する必要はないと思うが……」


 灰野さんは慎重な姿勢を示したが、青葉さんは不安気な表情で、おかしな発言を繰り返していた運河割男が狂人だったのではないかと言い始めた。


「なりすましの数が少ないので、もう狂人なんて残っていない可能性もあると思いますよ」


「確かに……」


 太陽さんがその意見に同意する。

 若草と清水さんの意見が割れているので、どちらかが嘘をついているのは間違いない。

 もし狼がなりすましているなら、ドチラかを追放しておかないとマズイのだが……。


 みんなで占い師の真偽を討論していると、桜さんが突然、青葉さんを追放して欲しいと言い出した。


「実をいうと、夜のターンの襲撃に失敗したので、空君のお父さんが妖狐だと思うんです。まずは第3陣営を倒しませんか?」


「その発言だと、桜さんが狼ってことになりますけど……」


 俺が確かめると、彼女は嬉しそうに微笑ほほえんだ。


「はい。私は人狼なんです。なので、みなさん、妖狐退治に協力して下さいっ!!」


 村人陣営は狼を追放するしかない状況なのに、よく分かっていない桜さんがカミングアウトしてしまった。

 これだと、今回、追放することになるのは、人狼の桜さんだ。

 彼女は大神さんの言いなりになっている疑いもあるので、俺としては一石二鳥で敵を排除できる。


「一応、確認のために言っておきますが……青葉さんは、騎士の僕が守っていました」


 灰野さんが駄目押しの一手を追加したので、狼だと自白した桜さんが追放されることになった。

 

「あれ? なんで!?」


 彼女は意味が分からないという顔で、隣の亀の間に移動する。

 やっぱり、ワタル君のプレイに一番似ているのは桜さんなんだけど……彼だって、いつまでも初心者のままではないだろう。


   ***


「夜のターンに襲撃されたのは……灰野さんだニャ~」


 村人たちが間違って妖狐退治に加担してしまわないようにと、騎士だとカミングアウトしてくれた灰野さんが襲われてしまった。

 でも、狼を1匹追放できたから、痛み分けか。


 本物の占い師が残っていれば、念のために青葉さんを占って、狐であれば呪殺してくれるはずだが……メイドさんの顔を見つめても、それ以上は何も言わなかった。

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