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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
後半スタート(メインストーリー)
61/70

運命のイタズラ

 自分のカードをめくると、ショックを受けた。

 さすがに『犬』ではなかったが……。

 最もつまらない職業だったからだ。


 村人A


 何の役目も無い脇役のような存在。

 思う存分、喋ったり推理を楽しめるという人もいるが……人狼や占い師を引いた時のような緊張感は味わえない。


 駄目だ……。

 ツイてない。

 このゲームで、村人陣営が勝つのは難しいぞ。

 しかも、役職が無い。


「やだぁ。どうしよう」


 桜さんが小声で呟いたが、それ以外は全員、能面のような顔をしている。

 さすがに人狼好きな面々だけあって、表情だけでは全く分からない。


「では、ゲームを始める前に、職業の確認をさせていただきますニャ~」


 ゲームマスターのメイドさんが廊下に行き、1人ずつ部屋を出て、メイドさんに職業カードを見せることになった。

 その順番は、食事の時に座っていた席順通りだが……俺が最初で、桜さん、太陽さんと続き……大神黒子が1番最後になるという。


 これでは、廊下で2人きりの状況になった時に、メイドさんを通じて全員の職業を知られてしまう可能性がある。

 しかも大神陣営は、仲間同士で職業の交換をするかもしれないので、俺がカードを配っても、ほとんど意味が無かったようだ。

 

 敵はゲームの展開を操るチートプレイヤーなので、村人のカードばかりが渡ってしまった等の不運が無い限り、自由に職業を入れ替えられる向こうの方が有利に違いない。


 2匹いる狼と、妖狐と背徳者がお互いの存在を知るために、全員がもう1回ずつ廊下に出ることになったので、大神陣営の準備はキッチリ整ってしまっただろう。

 彼らの不正を暴いて処刑してやりたいのに、用意周到に練られていた計画は、そう簡単には崩せないらしい。


 ……どうする?


 何も出来ない村人1人で大神陣営を倒せるのか?

 このゲームに負ければ、屋敷から出られないだけでなく、240万の負債を背負う事になる。


   ***


「こんなに楽しいゲームをするのは、久しぶりですねぇ」


 全員が席に戻った後、最初に口を開いたのは大神黒子だった。

 彼は嬉しそうに笑っている。

 すでに勝利へのシナリオを組み立てたのかもしれない。


 でも、俺はおとなしく狩られるだけの村人じゃない。

 なんとか信用出来そうな仲間を見つけだし、大神陣営を排除してやる!


 奴らの狙いは、俺か灰野さんか青葉さんのうち、倒しやすそうな陣営に当たった人間から金を巻き上げることだろう。

 

「緑川。お前……風邪気味か?」


 俺は、テーブルをはさんで向かい側の席に座っている高校生に尋ねてみた。

 緑川と若草は妙に勘がイイので、狐だったらコンコンと咳き込んでくれるんじゃないかと思ったのだが、全く反応が無い。


 さすがに、大神陣営を排除したい俺の目的も、俺が味方かどうかも分からないのでは、職業なんて教えてくれないか。

 

「……全然違うし、何の病気でもないよ」


 緑川は少し考えてから、そう答えた。

 何の病気でも無い……か。

 ん?

 それって、職業の事か?

 

「今日は、投票出来るといいですね」


 俺の隣に座っている桜さんが、犬屋敷人狼の事を思いだしたのか、ふと口にした。

 彼女はちょくちょく本音を漏らしてしまう。

 同じ陣営にいれば足を引っ張られてしまうが、別の陣営なら、桜さんが攻略の糸口になるだろう。


 今のところ座敷の中に危険な仕掛けは見当たらないが、何が起きるか分からないのが、この屋敷の恐ろしいところだ。

 ゲームは、大神さんの言葉で進行していく。


「追放会議の時間は3分しかありませんので、言いたい事があれば早く言っておいた方がいいですよ」


「それじゃあ、誰を追放したいと思っているのか、端から順に言ってもらおうか」


 灰野さんがトップバッターの俺の顔を見た。

 ナイスアシスト。


「俺は……大神さんを追放したいと思っています」

 

 奴が何の職業だったとしても、チートプレイの司令塔は、早めに排除しておくに限る。


「その理由は?」


「まだ最初なので先入観だけなんですけど、『誰にとっても怖いプレイヤー』だからです。そう思いませんか?」


 俺は、いるかいないか分からないが、大神陣営を倒したいと思っている仲間に向けて問いかけてみた。

 みんな、そこそこ納得したような顔をしているが、大神さんが反論してくる。


「困りましたねぇ。私は重要な役目を持っていますから、追放しないで下さい」


「その役職名を言えますか?」


「今は言えません。ですが、必要があれば、いずれ明かすことになるかもしれませんねぇ」


「う~ん。これだと、大神さんの追放は難しいかなぁ」


 太陽さんが大神さんをフォローした。

 でも、それだけで彼の仲間だと判断することは出来ない。

 むしろ、仲間だと悟られないように行動している人物の方が恐ろしいのだ。


 桜さんは、まだ追放者を決めかねていると答え、太陽さんと青葉さん(父)は運河さん、バスガイドのお姉さんと大神さんは俺、空君と灰野さんが清水さん、若草と緑川はバスガイドのお姉さんを追放したいといった。


 清水さんは最初から黙り込んでいて、運河割男は、

「俺を追放してくれぇ。重要な職業カードを持っているから、狼たちは俺を襲った方がいいぞぉ」

と、意味不明な発言を繰り返している。


 どうやら、本当に負ける気満々のようだが……厄介そうなあの男は何陣営なのだろう。

 なんとなく狼ではなさそうだが、頼むから村人陣営にはいないでくれよ。


 追放会議の後で投票を行い、最終的に追放されることになったのは……。


 清水さんと桜さんが票を追加したバスガイドのお姉さんだった。

 これで、大神陣営とおぼしきプレイヤーが1人減ったことになる。

 司令塔の大神さんは残っているが、まずまずの結果だろうか。


 夜のターンになると、また1人ずつ廊下に出て処理を行い、今回、人狼に襲撃されたのは……。


 奇妙な発言をしていた運河割男だった。

 奴は何の役にも立たなそうだから、居ても居なくても変わらないだろう。

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