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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
人狼ツアー(メインストーリー)
3/70

犬屋敷人狼

(犬!?)


 狼じゃなくて犬って何だよ。

 人狼にこんな職業あったっけ?

 

 思わず驚いた顔をしてしまうと、隣の桜さんが余計な事を口走った。


「あぁ!! なんだかポチ君の反応がオカシイですよ。もしかして、人狼のカードを引いたんじゃありませんか?」


「違うって。そんなわけないだろう!!」


 俺までつられて否定してしまい、後ろの方からメモを取るような音が聞こえてきた。


「ほら。誤解されちゃったじゃないか」


 慌てて声を潜めたが、すでに手遅れ。

 これでは初日に狼の疑いをかけられて、追放されるパターンかもな。


 うっかり油断していた自分が悪いのだが……桜さんは、どうして大声で指摘したのだろう?


 もしかして、わざとか?

 だとしたら、ネットであーだのこーだの説明したのが、よっぽど嫌だったのかもしれない。

 それならそうと、チャットで言ってくれれば良かったのに……。


 俺は親切で教えてあげたつもりだったのに、なんだかマズイ事になってきた。


「ごめんなさい。私、人狼があまり得意じゃなくて」


 それは知ってる。

 ワタル君は、余計な口を滑らせてしまう初心者プレイヤーだ。

 ゲーム中はそんなに怖い相手ではないが……彼女がいる陣営は負けやすいし、リアルでは要注意人物である。

 なるべく関わらないように気をつけよう。


 それにしても『犬』は何をすればいいのだろう?

 この職業には『同室だった人物が、人外(妖狐か狼)かどうかを知ることが出来る』という特殊能力があるが、使いどころが分からない上、ゲーム中は『人の言葉をしゃべることが出来ない』というおかしな制約までついている。


 これは……ゲームマスターの嫌がらせか?


 そういえば、主催者の大神黒子はドコに潜んでいるのだろう。

 屋敷で待ち構えているのかもしれないが、明らかに本名ではなさそうだから、すでに参加者の1人になりすましてバスの中にいる可能性もある。

 だからといって、黒子という名前だけで女性だと思い込んでしまうのは浅はかだ。


 ワタル君みたいに名前とは違う性別かもしれないし、もしかするとバスの運転手かもしれない。

 そういえば、随分、若そうだな。

 白い手袋をしている制服姿の運転手は、20代に見える。


 少しでも情報を集めておこうと周囲の様子に目を光らせていると、山の中にポツンと建っている不気味な洋館の前でバスが止まった。


「大神邸に到着しましたので、順番に降りて下さい。すぐにゲームの説明が始まりますので、入り口の前に整列して下さいね~」


 バスを降りると、俺は桜さんから遠ざかった。

 彼女と一緒に行動するのは嫌だからだ。

 なるべく目が合わないように顔をそらしていたのに、参加者たちが列を作り始めると、わざわざ彼女の方から近付いてくる。


「あの……ポチさん。今日も色々教えてもらえませんか?」


この女、KY(空気を読めない最強の人類)か!?

 

 いくら可愛くても、どうせ付き合えるわけではないのだから、

『友達の別荘で勉強合宿をする』

と言って親から借りた3万円を回収する方が魅力的なはずなのに……困り顔&上目使いで見上げられてしまうと、どうしてなのか追い払えない。


 おかしいな。

 俺が良い人になれるのは、ネットの中だけのはずなのに……。


 もし、これがチャットだったら、

『分かりました。一緒に頑張りましょう /(^▽^)』

とか打ち込んでしまうところだが、今の俺はリアルモードだ。

 顔をそらして小声で答えるのが精一杯。


「人狼のルールなら、もう充分、知っているんじゃないですか?」


 占いや霊媒の結果は『狼だけが黒になる』とか、毎日話し合いで追放者を決め、夜のターンになれば『人狼が1人のプレイヤーを選んで襲う』という基本さえ分かっていれば、特に説明する事はないと思うのだが……。


「それが、今回はルールが違うみたいなんです」


「えっ?」


 桜さんが指差す方向に目を向けてみると、豪華な屋敷の前にホワイトボードが置かれており、ゲームの説明が書かれていた。

 俺の目に飛び込んできたのは、『犬屋敷人狼』という謎の文字。


「昼のターンに行う追放会議の代わりにフリータイムが設けられていて、プレイヤーたちはいくつかの部屋に別れて狼を推理するみたいなんですけど……それにどんな意味があるんでしょうか?」


「……ごめん。俺もこんなルールは聞いたことが無いよ」


 犬屋敷人狼なんて知らないが……犬の意味はようやく分かってきた。

 もしかすると、この職業は主役級の大当たりかもしれない。

 きっと、占い師と同じように人外を特定することが出来るのだ。

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