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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
人狼ツアー(メインストーリー)
19/70

犬屋敷人狼の答え

 ゲーム内での最終日。

 頭を打って気絶した俺が追放されることになった後、プレイヤーたちはそれぞれの部屋に戻って夜のターンを迎えることになったはずだ。


 その時点で残っていたのは5人。

 青葉さんと、緑川。そして狂人だったメイドさんと、狼だった眼鏡さん。

 

 茶畑さんは人狼かどうかを確かめられなかったが……最終的に狼が2匹とも残っていたのなら、名乗り出たオジサンは本当に狼だったようだ。

 ということは、明日の朝、この屋敷から出られるのは、メイドさん、眼鏡さん、茶畑のオジサンの3人だけ。


 その他の役職をザッと埋めるとこんな感じになる。


  騎士 ……?

  占い師……バスガイドさん

  霊媒師……?

  ハンター……小学生の空君

  犬  ……俺

  恋人①……毒殺された若草

  恋人②……探偵の灰野さん

  妖狐 ……桜さん


 特徴がある職業は分かりやすいが、最後まで潜伏していた騎士と、全く気配が無かった霊媒師の正体は分からない。

 ただ、最初に追放された黄崎オンラインの彼女さんが、彼氏は何らかの役をもっていたと漏らしていたことから、埋まっていない職業のどちらかだったと推測できる。


 騎士は後半に狼の襲撃を防いでいるので、ほとんどゲームに参加していなかった黄崎さんが霊媒師で、最後まで残っていた青葉さんか緑川のどちらかが騎士だったのだろう。


 最終日は、狼だと名乗った茶畑さんや、いかにも怪しかったメイドさんと眼鏡さんを外したもう1人の村人を守っていたと思われるので、狼に襲撃された青葉さん自身が騎士だったはず。


 だとすると、青葉さんは村人陣営を勝たせるために、ハンターだった息子の空君を守っていなかったことになる。

 そのせいで大事な息子が狼に襲撃されてしまったのだが、それまでとても穏やかだった青葉さんの言動と比べると、檻の中での変貌ぶりが引っかかる。


 今思えば、わざと暴れてシャンデリアを落とそうとしていたかのようだった。

 俺は死ぬかもしれないという恐怖に駆られ、焦って犬のルールを無視したり、思わぬ怪我をするはめになったが……よくよく考えてみると、青葉さんに誘導された……と言えなくもないんじゃないか?


 あの人は、ホストの紫刃さんに恨みを抱いていた可能性がある。


 でも、危険な檻を用意したのは大神さんだし、空君を追放したのは狼たちだし、シャンデリアが落ちてくれば青葉さんまで下敷きになってしまったのだから、アレが絶対に落ちない事を知っていた……という条件でもない限り、青葉さんが暴れるメリットはない。


 そもそも空君が残っていれば青葉さんが暴れることもなく、俺の事故は起きなかったんじゃないだろうか。

 そう考えると、やっぱり偶然、だったのか?


 あの時、俺が気絶することになるなんて、俺自身にも予測出来なかったのだから……。


 黄崎さんの事故が起きた時も、銃で脅したのは大神さんだが、トランポリンを運んで、飛ぶ決断をしたのは黄崎さん自身。


 雷が落ちた時も、集合場所を決めたのは大神さんだが、どうやって避難するかは自分たちで話し合って決めたし、バスガイドさんが立たないように注意しても、無視して歩きまわっていたのは紫刃さんだ。


 どれも1本の糸では繋がらない。

 それに、俺は初対面だったバスの運転手に恨まれるような事をした覚えはないし、大神さんには俺たちを狙う動機が無い。

 彼がデタラメな殺人ゲームを楽しむ愉快犯でない限り……。


 でも、もし彼が猟奇的な殺人鬼だったら、もっと多くの犠牲者が出ていてもおかしくないし、臓器を手に入れるために誘拐を繰り返しているウルフブラックなら、わざわざ人狼ツアーを開催しなくても、もっと手際よく事を運べるだろう。


 ネットで人を集めればログが残って、足跡を辿られてしまうというのに、大神黒子は何のために、こんなオフ会を開いているんだ?

 単純に考えるなら、気になるプレイヤーの顔や素性を確かめるため……だと思うが、不審な事故が起きたのが本当に今回だけなら、何かしらの理由があるはずだ。


 わざわざ屋敷に集められたのは、どういう繋がりの人間だったのか。

 年齢も性別も職業もバラバラな16人。


 俺が知っていたのは、ネットゲームで知り合ったワタル君と、黄崎オンラインが、俺たちがプレイしていた人狼ゲームの動画を投稿していた人物だって事くらいだが……。


 この屋敷に潜んでいる殺人鬼の正体を見極めるには、まだ何らかの情報が足りないのかもしれない。


   ***


 しばらくすると、大神さんが夕食を運んできた。


「敗者の皆さんには、菓子パンと牛乳を配ります。消灯は24時。明日の朝食は7時になりますので、それまでに起きて下さい」


 鉄格子の隙間から、普通の菓子パン2つと、紙パック入りの牛乳と、数枚の紙が差し込まれた。


「すいません。この紙は何ですか?」


「退屈しのぎに人狼当てゲームでもしていて下さい。なぁに、簡単な問題ですよ」


「間違えたら、何かあるんですか?」


「いいえ。何もありません。もちろん、目を通さなくても結構です」


 遠ざかっていく大神さんの足音を聞いていると、地下牢の数は相当ありそうだった。

 村人陣営だった参加者たちが全員閉じ込められているとしたら、最低でも10はあるはずだ。


 怪しい食事を手に取ってみたが、普通の高校生には毒が入っているのかなんて分からない。


「あの……灰野さん。このパン、食べても大丈夫だと思いますか?」


 俺は、隣の探偵さんに聞いてみることにした。


「ふぅむ。危険が無いとはいいきれないが、袋に針で開けたような穴がなければ、口にしておいた方がいいかもしれないね。脳のエネルギーが不足すると、頭の回転が鈍くなってしまうから」


「……そうですよね。分かりました」


 俺は腹がへっていたので、2つの菓子パンをペロリとたいらげた。

 ココには時計が無いので時間が分からないが、おそらく20時くらいだろう。

 食事を終えると、本当に何もすることがないので、配られた紙に目を通してみた。


 人狼当てゲームの問題は全部で5つ。

 それぞれプレイヤーたちの台詞から役職を推理するという内容で、最初の練習問題は簡単そうだった。

 でも、段々複雑になっていき、最後は4つの問題に出て来た登場人物たちが絡み合う大掛かりな構成になっている。


 これらが役に立つかは分からないが、暇つぶしに遊んでみるか。

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