終わりと始まり(問題)
真っ暗な闇の中で、ユラユラとシャンデリアが揺れている。
それは今にも落ちてきそうで、俺は怖くてたまらなかった。
助けてくれ。
早くここから逃げださなければ……。
必死に体を起こそうとした途端、目が覚めた。
「なんだ……。夢だったのか」
周囲を見回してみると、そこはかなり狭い部屋の中だった……。
部屋というよりも、囚人が暮らす独房に近い。
あるのはトイレと、ついたてと、1枚の布団だけ。
俺の体にかけられていたのは、薄手の毛布で、柔らかすぎる枕は寝心地が悪かった。
「ココは一体、どこなんだ!?」
全く見覚えがない空間には窓が無く、3方向が壁に覆われていて、光が入ってくる方向は一面、鉄格子だった。
もちろん扉の部分には鍵がかけられているので、普通の高校生には開けられない。
俺は……大神黒子に捕まってしまったのだろうか?
***
犬屋敷人狼の最後の犠牲者は……俺だった。
覚えているのは、檻の外にいた大神さんが最後まで笑っていた、ということだけ。
でも、俺が頭を打ったのは、彼のせいではなかった。
暴れていた青葉さんのせいか、青葉さんを抑えようとしていた自分が悪いのか、それとも、体当たりしてきた茶畑のオジサンがいけないのか?
とにかく屋敷の中には明らかに殺意が満ちていたのに、大神黒子は一切手を出していない。
これは一体、どういう事なんだ!?
奴は、心理的に人間を操れるメンタリストなのか?
***
少しすると壁の向こうから、ドサッと寄りかかるような音がして、低い男の声が聞こえてきた。
「……探偵の灰野です。予定通り、人狼ツアーに参加して、大神邸への潜入に成功しました。引き続き、行方不明になっている少女の捜索を続けます」
何かに録音しているような声の主は、サングラスをかけていた灰野という男のようだ。
彼は探偵だったのか!!
灰野さんは確か、食堂で毒殺の疑いがあるトラブルが起きた時、大神さんに連れていかれたきり、姿を消してしまったツアーの参加者である。
その彼が無事に生きていたということは、空君や、行方不明になってしまったバスガイドさんも近くにいるのだろうか!?
「あの……灰野さん。聞こえますか?」
俺が鉄格子をつかみながら声をかけると、
「その声は……ポチ君かい?」
という冷静そうな男の人の声が聞こえてきた。
「すいません。ココは一体ドコなんでしょう?」
「おそらく、大神邸の地下だろう」
灰野さんは、エレベーターで案内されたという。
ココには、牢屋のような小部屋が横一列に並んでいるらしい。
「どうして、こんな場所があるんでしょうか?」
さらに質問してみると、隣の部屋からカチッとライターの音がして、灰野さんがタバコを吸っているような気配がした。
長い間、閉じ込められていたせいか、この環境にもすっかり慣れているようだ。
「人狼ツアーに参加する前に少し調べてみたんだが、この屋敷は、とある組織が隠れ家として利用しているものらしい。ココはおそらく、商品となる人間を保管しておく場所なのだろう」
「商品って、どういう事ですか!?」
「君は『ウルフブラック』という人物を知っているか?」
「いえ」
俺が答えると、灰野さんはささやくような声で秘密を明かした。
「彼は、人身売買……主に臓器の取引を行っているらしい」
「まさか、大神さんがウルフブラックなんですか!?」
大神の字を狼に置き換えてみると、狼黒子は、ウルフブラックと無関係とは思えない。
それに、あの若さでこんな大きな屋敷を持っているのは普通じゃないので、本当にヤバイ仕事をしているのかもしれない。
「ウルフと関わりがないのなら、これ以上は知らない方が身のためだ」
灰野さんは、フーと煙を吐いたきり、黙り込んでしまった。
「でも、もう少し話を聞かせてもらえませんか。その、行方不明になった女の子の事も興味があるんですけど」
彼女は一体、ドコに消えてしまったのだろう。
まさか、バラバラにされて売られてしまった……なんて事はないだろうな。
「なんだ。聞かれてしまったのか。では、少しだけ……」
灰野さんは苦笑しながら、彼が探している少女について教えてくれた。
「今から2週間くらい前に、『一条茜』という女子高生が失踪している。彼女の父親は、家出ばかりしていた娘の行方を知らなかったが、彼女の友人たちに話を聞いてみると、人狼ツアーに参加すると言っていた事が分かってね」
「それで、この屋敷に!?」
「入り込むのは簡単だったが、問題は、どうやってココから抜け出すかだな」
探偵の灰野さんと話をしていると、反対側の壁から、聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。
「ポチさん。大丈夫ですか?」
どうやら隣の牢に閉じ込められているのは、桜さんのようだ。
この様子だと、他にも大勢いるのかもしれない。
一体、何人くらいが屋敷の地下に囚われているのだろう。
それを灰野さんに尋ねてみると……地下牢に連れてこられるのは、ゲームの途中で追放、あるいは狼に襲撃された人物と、最後に負けた陣営に属していたプレイヤーだと教えられた。
「そういえば、ゲームの結果はどうなったんですか?」
「ココでは上の状況は分からない。ただ、最後の放送を聞いた限りでは、村人陣営が負けたようだね」
「それじゃあ、どんな放送が流れていたのかだけでも教えてもらえませんか?」
「いいとも。確か、ポチ君が追放された後、夜のターンに人狼が青葉さんを襲撃し、翌朝、村に残っている狼の数と村人の数が同数になった事で狼陣営の勝利が確定した、という内容だったはずだ」
「ってことは、4人の状態でゲームが終了した。つまり、人狼はまだ2匹とも残っていたんですね」
「そうなるだろう。次のゲームが行われるのは明日の午後らしい。今夜はココで夜を明かすことになりそうだから、1度、ゲームの内容を整理してみたらどうかな? どうせ、他には何もする事がないのだから」
「……そうですね。ゆっくり考えてみます」
俺は、薄暗い地下牢の中で犬屋敷人狼を振り返ってみる事にした。
◇問題1 16人の参加者たちの役職を推理してみて下さい。
主人公 金子桜 赤井太陽(大学生) 茶畑 灰野(探偵) 紫刃 清水 青葉海(父) 青葉空(小学生) 若草(高校生) 緑川(高校生) 黄崎オンライン 中村レモン 橘燈子 山岸藍 銀アンズ(メガネの女の子)
<職業カード>
狼×2、村人×5、恋人×2
狂人、騎士、占い師、霊媒師、ハンター、犬、妖狐(各1)
※答えは次のページで発表します。




