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人狼当てゲームのシナリオです  作者: 古月 ミチヤ
人狼ツアー(メインストーリー)
12/70

犬対決

「だったら、追放するのは緑川からだ」


 ホストの紫刃しばさんが、すかさず俺を擁護ようごしてくれた。

 個人的には嫌いな人だが、今だけはスゴク頼もしい。


「待って下さい。ポチ君と緑川君は白ですから、追放する必要はありません」


 さらにバスガイドのお姉さんが占い師だとカミングアウトして、他人事のように音楽を聞き続けている緑川の横に移動した。

 俺を白だと言うなら、本物の占い師の可能性もあるが……どうなのだろう。


「あれ? 皆さん、忘れているみたいですけど、しろがねさんも犬っぽいですよね?」


 突如、桜さんが、すっかり存在を忘れられていた眼鏡の女の子を引きずり出して、場を混乱させる。

 確かに彼女は一言も喋っていないが……犬ではないから、これ以上、ややこしくしないでくれ。


「……俺、犬じゃないですよ」


 耳からヘッドホンを外した緑川が、犬のフリをやめた。

 占い師に白出しされたので、ローラー作戦を回避するために打ち明けたようだ。


「わ、私だって、違います」


 眼鏡さんもか細い声で犬を否定したが、彼女はいきなり、桜さんを追放したいと言い出した。


「ちょっと可愛い顔をしているからって、私の事をバカにしているんですよ」


「えっ!? そんな事ないですけど」


「他の人たちも、なんか1人ぼっちで可哀相、みたいな目で、私の事を見ていましたよね」


「えぇっ!? どうしていきなりキレちゃったのかな?」


「おとなしい子はコレだから……」


 突然、しろがねさんの怒りが爆発すると、彼女を助太刀するようにメイド姿のお姉さんが桜さんの前で犬の鳴き真似をし始めた。


「ウ~、キャンキャン」


 どうやらニセモノの犬は、桜さんを追放したいらしい。

 俺の犬判定でも彼女は人外候補の1人なので、このまま傍観ぼうかんしていてもよさそうだが……今、1番危険なのは、メイドさんが本物の犬だと皆に誤解されてしまうことだろう。


 彼女を犬だと信じると村人たちの推理が狂ってしまうし、騎士が守る相手もメイドさんか占い師になってしまい、白出しされた俺と緑川が狼に襲われてしまう。


 ココはもう正体がバレても役目を果たしておかないといけない時期だろう。

 たとえ俺がやられても、ホストの紫刃さんが正しい推理を続けてくれるはず。


「ワンワン、ワンワン、ワンワン……」


 俺は、茶畑のオジサン、太陽さん、メイドさん、眼鏡さん、桜さんの5人の前でハッキリ吠えた。

 現時点で俺が絞れた人外候補は、この5人。


 これが忠犬ポチからのメッセージだ!

 1人でも多く気がついてくれ。 

 

「もしかして、ポチ君が本物の犬だったりして」

 

 ようやくプレイヤーたちが確信にたどり着こうとしたその時、稲光が何度もまたたいて、激しい雷鳴が轟いた。

 なんだか嫌な雰囲気だ……。


「雷が激しくなってきましたね」


 ポタリ、ポタリと雨まで降り始めて、屋上が濡れていく。


「いったん、屋敷の中に戻った方が良くないですか? お~い。空ぁ。コッチに来なさい」


 子ども連れの青葉さんは、屋上で遊んでいた小学生の空君を呼び寄せた。


「そういえば、空君も犬屋敷人狼の参加者なんですよね。ほとんど会話に参加していませんけど、役職とかあるんですか?」


 バスガイドのお姉さんが尋ねると、

「あるよ!」

と、威勢のいい答えが返ってきた。


「へえぇ。あるんだ。空君の職業はなんだろうなぁ」


 天真爛漫てんしんらんまんな子どもの発言は、嘘なのか本当なのかがよく分からない。

 純粋な子どもの言葉を信じるか、お父さんが入れ知恵しているかもしれないと、あえて深読みしてしまうか。


「あのぉ、このままだと空が風邪をひいてしまいますし、雷が落ちると危険ですから、先に戻らせていただいてもよろしいでしょうか?」


 青葉さんが不安げに周囲を見渡すと、他のメンバーたちも屋上の危険性に気がついた。

 この屋敷は、山の上の開けた場所に建っているので、屋上に人が立っていると、まるで避雷針のようになってしまうのだ。


「そうですね。大神さんには、みんなで説明することにしましょうか。でも、ハシゴは1人ずつしか降りられませんよ」


 ガイドさんが口にした途端、ピカッっと強い光を放ちながら近くに雷が落ちた。

 身の毛もよだつ轟音ごうおんが山中にこだましながら響き渡る。


「キャアアア!」


 女の子たちの悲鳴も重なって、我先にと動き出した参加者たちが、一斉にハシゴの周りに集まっていく。


「危ないから、押さないでっ」


「まずは子どもと女の子から」


 手すりの側で騒いでいると、誰かがグイっと押してきた時にボキンと嫌な音がして、手すりの一部が壊れてしまった。

 運悪くそこに寄りかかっていたのは……。


「空っ!!」


「パパッ。助けてーっ」


 空君の体が壊れた手すりと一緒に落ちていく。

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