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ホラー・ミステリ系の短編集

「アナタを考察します」

作者: ハルカゼ

「よく人を考察するんだぞ」

 刑事の父が口癖のようにいつも言っていた。

 しっかり考察しないとその人の本当の姿が見抜けない、と。



 警察官である僕は深夜の街を徘徊していた。

 今いる住宅地からは昼間とは打って変わって静寂に包まれており、不気味な気配が漂っている。

 ため息をついた。今日も異常なし、だな。


 しばらく歩いていると、小さな公園が目に入った。

 一休みでもしよう。僕は端に置かれてたベンチに腰を下ろした。

 ところどころにある外灯が乏しく思える。


 それにしても殺風景だ。

 この公園にはすべり台やブランコといった遊具はなく、キャッチボールをする広さでもない。

 公園、というより空き地というべきだろう。


 ふと後ろから足音が聞こえた。

 背筋に寒気が走った。おそるおそる背後を振り向く。

 一人の女性が立っていた。高校生だろうか。顔は髪で隠れて見えない。


「あの、どうかしましたか」


 おそらく家出だろう。近頃、家族と揉め事になって家を出るのは珍しくない。


「アナタを考察します」


 ハスキーの声で女性の口から漏れた。

 えっ、と僕は言った。


「アナタを考察します」

「どういう意味ですか」


 考察されても困る。しかも、父がよく使ってた言葉だ。

 むしろ、考察するのは僕のほうではないのか。


「アナタを考察します」

「あの、お名前は?」

 しかし、僕の質問には答えずに「アナタを考察します」の一点張りであった。


 僕は腰を上げると、女性と向き合った。身長は僕と同じくらいである。

「学生さんですか。もう深夜の一時を回るので帰宅しましょう」

「アナタを考察します」

 だんだん苛立ってきた。舌打ちをする。

「あの、それだけ言われても困ります」

 口調は怒りで強くなる。


 女性は一歩、近づいてきた。


「アナタを考察します」

「いい加減にしてください」

「アナタを考察します」

 さらに彼女は一歩、もう手を伸ばせば届くほどの距離になっていた。

「だから、僕を考察するのは構いませんが質問には答えてください」

 女性は小さく笑い、僕の首に両手を伸ばしてくる。



「アナタを絞殺します」



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― 新着の感想 ―
[一言] ヤバッ……!! 最後のところでゾクッと来ました。
2015/12/09 19:36 退会済み
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