むかしむかしの和風乙ゲー
「お前の心と体は別物なのか?」
独り言が聞かれたばかりか泣顔を見られ隣に座るよーく見た事ある黒髪黒眼の美男。
藤平龍成・・・いや
「バッ・・・バカ様!!」
「おい!」
不機嫌を隠さないその顔に凛音の顔は更に引き攣る。
心の中では覚悟していたがまたもやパニックである。
この短時間で現れる攻略対象たち。
初めて出会う場所、キッカケは変わっているが前後を抜かせばセリフは全て消化されている。
一体どうしたら回避できるのか。
凛音の頭は賢くない。
そして攻略済みの対象たちが現実世界にいるとどーも要領を得ない。
ゲームだったから良い男だったのだ。
そぅ!ゲームだったから攻略に熱を上げられた。
でも転生となると話は別だ。
王子が鬼畜やらヤンデレだっり記憶を持った恋敵が優秀だったり調子に乗った主人公が不幸になったりゲームの補正や矯正力で苦難の道のりだったり。
だったら凛音は早々に離脱したいのだ。
「お前のその瞳には色鮮やかに映るのか?」
「・・・バカ様、私は人工物や人工色に溢れた灰色の街しか見た事がないからここの鮮やかさが眩しい」
素直に答えればバカ様は真っ直ぐ目線を鳥居に向ける。
「そうか、お前は旅の者か、此処は自然と共存した和の国だ。俺が許す、ゆるりと愉しんで行け」
言葉の端々に甘ったれと傲慢が見え隠れする。
名も素性も知らぬ女に警戒もせず言葉遣いも隠しもせず顔も丸出しでお共もいない。
凛音が暗殺者だったら確実に殺されている。
凛音は呆れる他にどんな感情を見せれば良いのかもはやわからなかった。
「バカ様って素でバカ様なんですね」
「お前の中で何がどー繋がったか知らんが不敬罪で一族郎党処刑するぞ」