第7話 両利きという事で
久しぶりに体を動かしたせいか、とても疲れた
帰りの車内は爆睡だった
「おい、着いたぞ」
「・・・」
「瑠璃、起きねえとくすぐるぞ。おいっ」
「ふわっ、あ、寝てました」
「おう、起きたか。ヨダレ垂らしてるぞ」
「ひゃっ!」
「嘘だ」
「・・・もうっ」
前にもこんなやり取りが合ったような気がした
デジャブかな
運動した後は焼き肉だ!と、兄たちが言うので
シャワーを浴びてから再集合となった
焼き肉屋さんは歩いて行ける距離らしいので
私たちは歩いて向かった
「さあて、食うぞ!」
「ひとの奢りだと余計に食欲が増すよね」
「おいっ、勝手に奢りにしやがって」
「副社長いただきますっ」
「なんだ、瑠璃も言うようになったな」
美味しいお肉はとても久しぶり
前は素食だったから、この時代の豊かさに感謝です
「瑠璃、ビール飲むか?」
「はいっ、いただきます」
「え、それは飲めるか分かりませんって言わないんだ」
「あ。はは、多分飲めると思いますよ。だって、何だかんだ一通り出来るっぽいので」
「おまえ、やっぱり変わってねえよ」
「ん?」
瑠璃が少しずつ自分らしさを取り戻りている気がした
歳三はそれがとても嬉しかった
「ねえ、瑠璃は右利きだよね」
「そうですけど、どうしてですか?」
「竹刀持つ手が反対だったけど」
「・・・そうでした?」
瑠璃が歳三や左之助の顔を本当かと聞くように見る
「総司が言うように左利きのように握ってたぞ、踏込みもだ」
「ええっ!」
「まさか、無意識とか?」
私は無意識にそうしていたらしい
その理由は一さんがそうだから
でも、口に出せなかった
そんな奴はいないよと、否定されるのが恐かったから
「私は両利き、なのかもしれないですね」
「そうなのか!俺達も知らなかったぞ」
「私も今言われて知りましたから、ハハ」
誤魔化せたのかな?でも、嘘ではない
現に両利きになっているのだから
お腹いっぱいになり、帰宅した
あとは寝るだけ 心地良い疲れにまたすぐ眠れそう
「なあ、瑠璃」
「はい、何ですか」
「皆、瑠璃のことを大事な妹だと思ってる。一人じゃねえんだ、良い事も悪い事も分け合えばいい」
「分け合う・・・」
「そうだ、瑠璃の此処に潜んてる不安や悲しみは4人で割れば大したことじゃねえだろ?」
「・・・」
「今すぐ言わなくてもいい。な?」
「はい」
歳三兄さんは気づいているのかもしれない
でも、まだ心の整理がついていない
まだどこかに恐怖心がある
自分の記憶を話して、兄たちがどう反応するのかを
「いつか言いますから、待っていてもらえますか?」
「あたりまえだろ」
優しく頭を撫でてくれた
歳三兄さんの手からじんわり温もりと優しさが
伝わってくる
いつもこうして私の心配をしてくれた人
またちょっと泣いてしまった
翌朝はなんと、起きれなかった
全身が重くて痛いのです そう『筋肉痛』ってやつです
「うっ…」
「瑠璃どうした、大丈夫か。具合でも悪いのか!」
起きる時間になっても起きて来ないから心配しのだろう
勢い良く部屋のドアが開いた
「うわぁっ!び、びっくりしたぁ」
「す、すまん。声かけたんだが返事がなかったから」
「あ、いえ。すみません、気づかなくて」
「そうか、朝めしだ」
「朝ごはんですか、っぅ!!行きますっ、行きます」
部屋を出て行きかけた歳三兄さんが振り向く
「今、痛いって言わなかったか?」
「え?言っていませんよ」
「じゃあ、さっさと起きろ」
「起きますよ、起きますから先に行ってください」
なんとか部屋から追い出した
こんな酷い筋肉痛なった事なかったよ
いや、あったかな? まあいいや
腹筋、腕筋、太腿、まさかの首も筋肉痛!!
最悪だ
「うっ、痛たたっ」
腰を曲げ、腕を曲げ顔を洗う
たったそれだけなのに…やばい
ふっ、っっつうぅ。くっ、痛っ たたた
「瑠璃、まだか」
「直ぐ行きますっ。っててて」
なんとか椅子に座る事が出来た ふぅ。
「あ、悪りぃ。醤油取ってきてくれるか」
「えっ!し、醤油…は要らないですよ。うん、要らない」
「くくっ」
ん?歳三兄さんが下向いて肩を震わせている
何!怒ったの!?
「ぶははははっ!」
「わ、笑ってる・・・」
「おまえ、俺を笑い死にさせるきかよっ。腹が痛え」
「え?」
「隠してるつもりだろうがな、バレてるんだよっ。筋肉痛だろ」
「えっ!な、なぜ」
暫く、歳三兄さんの笑いは止まらなかった
ツボったらしい この人もこんなにして笑うんだと
ちょっと冷静な自分がいた
「あれだな、じっとしてても治らねえから鍼でも打ってこい」
「鍼?山崎さんに?」
「あ?山崎って、主治医のか。ハハハ、ばか野郎」
変なこと言ったのかな、また笑いだしたよ
山崎さん今は出来ないのかな?
出来ると思うよ?