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BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第二章【朱の章】
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2-17 二千三十年四月三十日火曜日午後六時

 --本日、瀬羅区にある一般用空港において事故が発生しました。現在スタジオにある情報によれば、旅客機全てが爆発。空港にも甚大な被害が出ているようです。但し被害者は零人という不可解な情報のため、また詳しくお伝えします。どうやら混乱が生じており、現在事態収集を…--

 商店街にある中古屋のテレビから速報を知らせるニュースが流れる。

「兄貴、そろそろ俺らも限界かもしれないなー」

 コンビニで買ったアイスを食べながらそのニュースを眺める。

 味はメロンソーダ味だ。

「大丈夫だろう。高校に施していた工作もこの前に解除した」

「その解除事態が怪しまれることだってあるだろう?一様俺たちは親父からさ、武神家とは神眼関連に置いてはあまり関わるなっていわれてんだからさ、もう少し慎重に行動すべきだったんじゃないのか?」

「慎重も何もない。あの状況ではあいつらと同行して一緒に行くしかなかった」

「まーそうなんだけどさぁ…」

 これからの事を案じるような目で、画面に流れている惨状をぼんやりと見つめる。

 画面に流れる、人間の力では成し得ない惨状。

 見るからにおかしな壊れ方をしている空港。

 これに対して不審に思わないことが不思議だ。

「これさ、どう考えても疑われるだろう、神眼所持者が行った行為だって。にも関わらずどこもかしこもそれについて触れない。どういうことなんだ?」

「それは俺にもわからない。ただ、疑いを持たせないように働きかける神眼が存在することは知っている。そいつらが常時何かしらの工作をしているのかもな」

「そんな能力もあるのかー」

「あるのかーって、俺らもそれくらいのことならできるだろう。効果範囲は狭いが似たようなことができる。つまりそれに秀でた神眼の種類があってもおかしくはない」

「そっか、そうだよな」

「少しは俺らの持つ能力に自信を持て。何せうちの家系にしか残っていない神眼なんだからな」

「でも実戦経験ないじゃん。もしだよ、あんな空港みたいな場面に遭遇したときにどうしたら良いのさ。能力があっても使い方を熟知してないと死ぬよ」

「それは当たり前だ。だから訓練がてら高校の一部に術をかけたりして練習していただろう。確かに本来ならば戦闘を考慮した練習をするべきだが、此処の街にはそんなことが出来る場所はない。あるとしても武神家の中くらいだろう。俺らはできるだけ武神家から神眼については距離をとっておかなくてはならない。武神家の分家に取り込まれるのはいくらなんでも困るからな。同盟も命が関わらなければ結ばない。この家訓が存在する以上、戦闘を想定した訓練なんていうのは不可能だ」

「結局俺たちにできるのはこうやって静観するだけなのか」

「ん、お前まさか手助けしたいとか言い出さないよな?それは断じて俺が許さないぞ。少なくとも今は俺たちが出るタイミングではない」

「わかってるよ…」

 煮え切らない様子で残りのアイスを食べきる。

 画面では既に次のニュースが流れていた。

「さて、そろそろ帰るぞ」

「了解」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


同時刻武神家屋敷内--

「失礼します」

「入りなさい」

 襖を開けて何枚かの紙を持った男が、畳の敷かれた部屋に入る。

「本日起きた事案について報告に参りました」

「大体の話は聞いています。では詳細を」

「神威炎欺についてですが、式神家に奪還されました」

 知っていたこととはいえ息を飲む。

 巨大な駒を取られてしまったのだ。

「よって本日から奪還作戦を立案し、今週中には実行に移せるよう手配中です。またそれに伴い、神威水欺を本家に呼び戻しました」

「それが妥当でしょう。因みに炎欺を倒した者について詳細は?」

「はい、神眼使用後の痕跡を調査した所人形遣いに類するものと思われます」

「人形遣い…ということは最悪、炎欺が私たちの敵になるということですね」

「はい」

「ただ、刻印はまだ私とつながっている。ということはその奪還作戦が間に合えば、まだ大丈夫ということか」

「何としても彼女を敵にまわすことはしないようにしたいと思います」

「わかりました。他については」

「神崎未樹とお嬢様は無事に保護いたしました。両名とも体力の消耗は見られますが、大きな怪我などはしておりません。ただ生上翔也についてですが」

「彼がどうかしたのですか?」

「保護する際、既に怪我は回復していました。ただ大きな体力の消耗も見られ、また神眼にも大きな負担がかかったようで、現在弎塑稀(みそぎ)が治療を行っています」

「なるほど。となると彼は単独で動いていたと言うことですか?」

「お嬢様の話によればそのようです」

「相手は誰だったのですか?」

「一様半死状態の人物を同時に回収しました。ただ意識もなくただの傀儡と化しており拷問は意味を成さないかと思われます」

「そうですか」

「空港の損害についてですが、こちらは神眼同盟と日本政府で処理を行う予定です」

「政府ですか…あまり関わりたくはありませんがこの場合はしょうがないでしょう。あそこの空港の近くには軍事基地もあったわけですし、きっとそちらにも被害は及んでいるでしょう」

「そちらの面倒事については日本政府に一任する予定です。彼らには眼狩りに対する負い目もありますし快諾してくれるでしょう」

「事後処理もこれで大丈夫そうですね。では水欺が到着するまでになるべく作戦の草案でも練り上げといてください」

「わかりました。善処します」

「では後程此方へ神崎未樹を呼び出しておいてください。欧州の件についての報告を聞きたいのでね」


 第二章【朱の章】了

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