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BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第二章【朱の章】
26/39

2-5 下光兄弟

 鏡楼高校は鏡楼市の市街地からはずれたちょっとした山の上にある。そして武神家はその反対側の市街地のはずれにある。

 よって武神家に向かうためには鏡楼市の市街地を突っ切って向かう。

 現在鏡楼市は都市化が進んでおり、様々なビルが建設中だ。逆に地区によっては廃ビルが立ち並ぶ地区もある。かつてはそこが町の中心だったのだが都市化の計画ではそこを全て更地にする予定だそうだ。

 随分とムダ金をかけたやり方である。利権の前においてリサイクルは何の意味もなさないようだ。

 さて、俺と朱鳥の二人はその町を突っ切って武神家に向かっていた。

 その町を歩いているときに緑色の髪の毛が二つ視界に入る。

「ん、あれって下光達かな」

「緑色の髪の毛だからそうなんじゃない?そうね、久しぶりだから少しだけ会っておこうかな」

 緑色の髪の毛をしている下光兄弟。眼鏡をかけた兄の葉也(ようや)と弟の葉平(ようへい)は双子である。たいていはいつも一緒に居るのをよく見かける。

 それ程中が良いのだろう。性格は兄は真面目、弟は元気屋という感じで補い合っている。双子でワンセット、二人で一人で丁度良いという感じだ。

 そして此方がその二人に声をかけようとした時、弟の葉平と目が合った。

「うお、いつも通りの二人じゃんか。朱鳥はもう大丈夫なのか?」

 ニコニコと笑いながらこちらに歩いてくる。その後ろから兄の葉也も声をかける。

「その様子からするに、もう大丈夫という感じだな。寧ろ翔也の顔に若干の疲労感が見えるのだが気のせいか?」

 相変わらず目の付け所がいい奴だ。本日の俺は地面をよく転がるし変な世界で体を浸食されたりと散々な目に合っている。

 真人間なら疲労感どころか、死相が映っているはずだ。

「私はもう大丈夫よ。この通り元気元気。何か心配かけちゃったみたいでごめんね」

「いやいや、謝ることじゃないよ。心配するのは友達なら当たり前だろ」

「そうだな。友達なら当たり前だ。友達ならば」

「ん、何か引っかかるような言い方だけど…まいっか」

 おそらく葉也が友達ならばと二回も言ったことに、違和感を感じたのだろうけどそれは言わないでおこう。

「ところで二人は此処で何してんだ?」

「いや必要なものを色々揃えていたんだよ」

「色々?」

「ほら、高校滅茶苦茶になっただろう。だから学校に置いていた教科書とかもさ使えなくなったし」

「あ、そういえばそっか…」

 無論、俺も学校に教科書は置きっぱなしになっていた。筆記用具等々勉強に関する物は全て学校に置いていた。つまり、この前の式神と二昃さんの学校内における戦闘で、全てゴミになってしまったのだろう。

 と言う事は、葉平と同じように俺も買いなおさなくてはならない…。

 予想外の出費だ。

「全く、教科書を学校においておくからこうなるんだ。勉強道具は毎回持って帰るのが当然だろう」

 と真面目の葉也。

「そうよ、普通ならば持って帰っているのが当たり前。学校だけでやった勉強で満足するのは怠け心も良いところよ」

 と真面目の朱鳥。

「「はいその通りです…」」

 と勉強嫌いの俺らはがっくりと肩を落とす。

「でもこうも早く高校が再開するって予想外だったな。今日の朝連絡が来てビックリしたよ」

「俺も流石に予想外だったな。あんなボロボロの校舎をこんなにすぐにも再建できるとは思いもしなかった」

「あー、何か校庭に仮校舎建てるみたいよ。多分突貫工事でさっさと建てる予定みたいね。さっき校庭に何台かトラックが入っていったし」

「だな。でも一週間で完成させるってかなり無茶だよな」

 仮校舎を建てるにしても一週間で完成できるものなのだろうか。

 でも仮設住宅や道路整備のように日本は土木建築についてはスピードはとても速い。ならば校舎も速く建てられるのだろうか?

「来週から学校始まるのかぁ…。はっ、まさか夏休み短くなったりしないよな!?」

「恐らく短くなるんじゃないかしら。だって消化しなきゃいけないカリキュラムもあるだろうし。だからといって進度早くしたら翔也と葉平はついていけないでしょう」

「そうだな。確かに俺にはそっちもそっちで苦しいな」

「え、何か俺不真面目で馬鹿ってなってない?」

「え、そうじゃないの?」

 真顔でキョトンとする朱鳥。

 素でそんな反応を返されてしまい項垂れる葉平。それでも自分の名誉を挽回しようと額を押さえながら話を続ける。

「あのさ、俺は不真面目ではあるけれど」

「不真面目なんじゃないか」

「いや、だから最後まで話を聞けえええええ、翔也!葉也も何とか言ってくれ!」

「いや、お前は不真面目だろう」

「だからああああああああああああ」

 弁解に必死なようである。普通此処まで必死になるのだろうか?

「俺はな確かに不真面目だ。でもな翔也みたいにテストが最下位だったり、翔也みたいに留年になりかけたり、翔也みたいに何回も教師に呼び出されたり、翔也みたいに…」

 さっきから翔也みたいにというフレーズが沢山でてきているような気がする。俺ってダメ生徒の鑑だったのか…。

 俺に弁解の余地がないということがショックだ。

「つまりマシな点数をしっかりとっているから、不真面目だけど問題児ではないんだ」

「でも不真面目だ」

「でも不真面目でしょ」

「俺は問題児じゃないっ!…だよね、ね?」

 俺に同意してくれる人はいなかった。もう、さっき言っていた決意投げ出そうかな。

 予定は未定、決意も未定だ。

 しかし真面目組の二人(葉也と朱鳥)は一切の妥協を許してないな。葉平の弁解を徹底的に理解せず納得せず、揚句に問いただしているし。

 頭が固いと柔軟性がなくなるから困ったものだ。人生のんびりと構えて静かに見据えることが大切だというのに。

「のんびり見据えるのは大切だけど、それは怠けていると同義じゃないから。そこ間違えないこと」

「はい…」

 流石幼馴染。

 俺の心などすべて見透かすことができるようだ。朱鳥の前に俺にはプライベートは存在しないのか…。

「そう言えば」

 弁解を諦めたのか葉平が話の方向を切り替えた。

「俺たちの高校をあんなに滅茶苦茶にした犯人って誰なんだ?」

「ふむ、確かにその点については一切情報がないな。警察の捜査も程ほどだったそうだ。何か知らないか、翔也と武神さんは?」

「………」

「………」

 さて、どう説明しようか。いや説明しないほうが良いのだろうか。

 神眼について一般人の人はそこまで知らない。知らない人がいないというわけではないが、注目されることが殆どないのだ。

 あんな超能力な力に対して、興味を持たないはずがない。

 ところがそういう興味を持つ人は、一般人の中には殆どいない。日本中を騒がせた眼をくり抜かれた殺人事件について神眼が関わっているという情報があった。週刊誌にも掲載はされたりしたそうだ。しかしそれについて興味を持った人々は皆無。

 只、神眼と深く関わった人々(俺の従兄である啓祐兄さんのような)は稀に興味を持って探りを入れ始めるようだ。

 だからと言って神眼の関して、積極的な情報公開は行われていない。よって真相に辿り着くことは難しいそうだ。

 啓祐兄さんも結構苦労したようだし。神眼に関わる情報が、啓祐兄さんの基に届くようになったのもつい最近らしい。

 かくいう俺も朱鳥とずっと幼馴染だったが神眼に対して興味を持ったことは殆どなかった。

 こいう不可解な現状についても俺は此処最近までは気づかなかった。科学技術の発達が止まったことと関係があるのだろうか。

 これらを踏まえて。

 果たして、朱鳥と同じ神眼能力者が高校を滅茶苦茶にしたと説明して、納得してもらえるだろうか。

 後、この件について少しでも関わることは、この二人を危険にさらすことになるかもしれない。現段階で死にそうになった人がいるのだ。

 それを考えるとこの二人に教えるのは止めたほうがいいのかもしれない。

「私は特に聞いてないわね。だって昨日まで寝込んでいたし」

 朱鳥もどうやらこの二人に説明することは回避したようだ。

「俺も聞いてないな」

 ダメ生徒である俺は、真面目生徒である朱鳥に倣ったほうが良いだろう…。

 自分で言うと胸にしみるものがあるなぁ…。

「そうだよね、何も知らないのが普通だよね。でもあの崩れ方ってすごい不自然だよな。何かが爆発した跡もあるけど、不自然に消えている壁もあるし。こう、直線的にスパッて挟みで切り取られたような感じ」

「確かに、あの壊れ方はおかしいな」

 二人とも頭を抱えて考え始めた。

 うーん、このまま二人が勝手に動き始めても、真相に辿り着けないのは明らかだし。ほっといて良いのかな。

 そこで朱鳥に意見を聞こうかと横を見る。

 すると当の朱鳥も考え込んでいた。とても考え込んでいた。

 話しかけるなオーラが、殺気のように体中からあふれ出ている。この事って、そこまで真剣に考えることなのだろうか…。

 必死に考え込む三人とその様子に慌てふためく俺。

 こんな様子、他人から見たら俺が本当に馬鹿みたいじゃないか。

 嫌だなぁ…。

「あ、そうだ」

 葉平が何か閃いたみたいだ。

「調べるために夜の学校に侵入するとかどうだ。今日の夜とかさ」

 あれ、この展開は危ないような気がしてきたぞ。

 俺の中にある一つ警告ランプが灯る。

「そうだな、その案は良いかもしれない」

 何故かノリノリな葉也。

 警告ランプ二つ目点灯。

「お、兄貴も乗ってきたか。それじゃやってみる価値はあるな。此処の所ずっと暇だったし。こういうイベントも良いよな」

 とても楽しそうな表情をしている。

 警告ランプ全て点灯。

 これは非常にマズイ…。

「いや、でもお前らそれは流石に駄目じゃないか。崩れそうな天井とか危なそうだしさ」

 不自然に止めると、逆に刺激してしまう可能性がある。だからさり気無く止める戦法を選ぶ。

「ダメ生徒の割に真面目なこと言うんだな、翔也」

「ダメ生徒のネタまだ引きずるのかよっ!」

 そろそろ精神的にいじけそうだ。

 人は見た目だけではかれるものではない!中身で勝負すれば良いのだ!

「武神さんはどうなんだ。翔也はこういうことを言っているが」

 葉也が朱鳥に意見を仰ぐ。

 そうだ、朱鳥ならば止めるはずだ。こんな危険なことを見過ごすはずはない。

「んー、そうねぇ…。良いと思うわよ」

「良いのかよっ!」

 思わず突っ込んでしまった。

 あーさっきまで考えていた色々な事情って、なんだったのだろうか。

 馬鹿は頭を働かせないことが賢明なのだろうか。自分の馬鹿さ加減が身に染みる…。

「そんな突っ込まなくても…」

 遂に引かれてしまった。

 ショックだ…。

「でもそうね、潜入するならばちゃんとした準備は必要かもしれないわね。ヘルメットとか。懐中電灯は必須かな」

 とうとう潜入することを前提に話が進みだした。

 展開が速すぎる。

「流石武神さん、話が速い。そうだな潜入するならば森の中からのほうが良いな。防犯カメラがうごいているかわからないが、万が一に備えて死角から潜入することを考えよう」

 現実味を帯びてきた。今日は早く寝ることはできないようだ。

「流石兄貴、参謀の素質もあるんだな。それじゃ俺は先陣を切って潜入しようか。安全確認とか」

「いや、お前は三番手だ。先陣は俺と武神さんが務めよう。お前に頼るのはいささか心もとないから」

「それ位は信用してくれたって良いだろうよ…」

「武神さんもそれで良いかな」

 そんな葉也の問いに対して、考え込み続けている朱鳥。

 気づいていない。

 そんなに集中する内容なのだろうか。

「武神さん?」

「あ、あーはいはい。うん、それでいいと思うよ」

 歯切れが悪い。もしかして他のことを考えているのだろうか。

 ダメな俺には推測も及ばないようなことを。

「武神さん、無理はしなくても良いよ。まだ病み上がりのようだし」

「心配いらないわ。只、そうね…ちょっと潜入するならばやっておきたいことあるし…」

 やっておきたいこと、とは何だろう。

「あれか、俺と同じように置いていた物とかあったのか?それなら諦めなよ。あんな状態じゃ残るものも残ってないって」

「私は葉平じゃないのだから、そんな物ないわよ」

「さいですか…」

 危機迫るような表情で否定した。何が朱鳥をそんなに真剣にさせているのだろうか。

 気になるな。

「何かあるようなら言ってくれ、武神さんの意見ならば有益なものだろう。それを聞くことは俺たちのためにもなるし」

「いえ、大丈夫よ。特に私から言う事はないわ。それじゃリーダーは葉也くんで良いかしら」

「了解した。それでは待ち合わせの時間だが、できるだけ人通りが少なくなった時間が望ましいな」

 となると深夜になるのか。

 これはもう今夜寝れる保証がないな。

 最悪だ…。

「そうね、午前一時辺りとかどうかしら。その時間なら高校の麓にある道路も閑散とする時間帯だし」

「文句ない時間だ。それでは午前一時辺りに麓に集合にしよう」

「よしっ、学校に夜中潜入とか滅茶苦茶盛り上がる!」

 遠足前日の小学生のようなテンションの葉平。元気が取り柄の小学生と同じだな。

「それでだ」

 葉也が改めて俺のほうへ向きなおる。

 はて、俺に何か用事があるのだろうか。これ以上の面倒事は御免こうむりたい。

「お前は来るのか?」

 あれ、俺って頭数に入ってなかったのか…。

 これはショックだ。

「嫌なら来なくても大丈夫だぞ。俺達三人でも十分に楽しそうだしなっ」

 円満な笑顔で俺の存在を否定しないでくれっ!

 そういう天然なコメントほどダメージが大きいことを葉平は知るべきだ。

「そうね、翔也にこれ以上付き合ってもらうのは迷惑になるかな。いくら幼馴染でも此処まで引っ張るのは問題よね。特に夜中とか翔也苦手だし…」

 朱鳥にまで見放されてしまった…。

 これは流石にいじけるな…いじけたいなぁ。

「で、結局どうするんだ翔也。別に俺は無理強いするつもりはない。だから嫌ならばいやと…」

「参加させていただきます!」

 右手を挙げての宣誓。

 もう今までの自分を全否定してやる。ダメで馬鹿な俺の事なんか知ったことか。

 これは参加するしかないだろう。

だって、滅茶苦茶楽しそうじゃんか!--


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 さて、こうして俺たちは四月三〇日午前一時に、鏡楼高校のある山の麓に集合することになった。

 深夜の学校探検である。しかも今回は只の高校ではなく、半分廃墟と化した高校だ。

 文句なし。

「いや、まさか朱鳥が賛成するとは思わなかったよ」

「まーね。色々と思うところはあるのだけれど、潜入できるうちに潜入しておきたいしね。私あの状況を近くで見ておきたかったし…」

 なるほど。

 朱鳥は梓の戦闘に立ち会ったわけではないから、校舎の中に入っていないのか。

 ならば潜入できるうちに潜入しておくのは良い判断なのだろう。

「何だ、そんな理由があったのか。だったら教えてくれれば良かったのに」

「あの二人の前で言うのは良くないでしょ。色々と面倒なことになるだろうし」

 どうやら途中までは同じことを考えていたようだ。ちょっと安心した。

 そんな会話をしている内に武神家へと到着。

 日も傾きかけており夕焼けが空に広がっていた。

「さて、それじゃまずは弌人の所に行って話を聞きましょ」

「そう言えばそうだったな。この短剣について何か知っているかどうか聞いてみるか」

 少し大きな門のある入口を通り敷地内へと入る。

 しばらく歩き、電灯の灯る玄関へと向かう。近くまで来たときに扉が自然と開く。

あれ、此処って自動ドアだったけ?--

 と思っていたらそこには弌人さんが立っていた。いつも通りのオールバックに黒いスーツだった。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

「ありがとう弌人。ところでちょっと話を聞きたいのだけれど、良いかしら」

「わかりました。では私の部屋へどうぞ」

 そう言って俺たちの先を歩き始める弌人さん。

 俺たちは黙ってその後ろをついてゆく。この人の前だとやっぱり緊張してしまうな…。

 長い薄暗い廊下を歩き続ける。

 鼓膜を震わせるのは気の床を踏む足音のみ。その他の音は一切なし。

 このような空気は自然と背筋が伸びる。

 弌人さんが立ち止まった。此処は今日の午前中に訪れた弌人さんの部屋だ。

 扉を開け俺たち二人を中へと通す。午前中と同じ配置で席に着く。

「では、準備しますのでご用件をどうぞ」

 そう言いながら紅茶の準備を始める弌人さん。

 こういうことを自然としだすのは、流石だと思う。

「要件は翔也に渡した短剣のことについてなのだけれど」

「あの短剣ですか。それについては、あまり私は助力できないかもしれません。もらい物ですので」

「そうなの。実はね今日、全領域を使える式神の分家に襲われたのよ」

「その件については把握しております。私もこの目で、全領域を見るのは初めてでしたので驚きました。一様急務として神威を向かわせましたが、その方法が正解だったようですね」

 あの様子を見ていたのか。

 弌人さんってこの町では見えないところがないのかな。恐ろしい…。

「流石弌人。ありがとう、助かったわ。あれは死にそうだったしね」

「それでまさかとは思いますが、その短剣が全領域を攻略するキーアイテムなのですか」

「勘がいいわね、つまりはそういうことなのよ。だから何かしら情報が得られれば良かったのだけれど、知らないなら仕方ないわね」

「もうしわけありません。あいにくそれを頂いた人物との連絡も現在とれないので…。紅茶をどうぞ」

 俺たちの前に紅茶が並べられる。やることが丁寧だなぁ…。

 視線が怖いけど。

 しかし、この短剣について情報を得られなかったのは参ったな。再びあいつに襲われたらマズイ。

「困ったわね…。流石に何の対策もなしに、深夜外を出歩くのは危険ね」

 なるほど、ずっと悩んでいたのはあの敵に出くわした時のことを考えていたのか。最悪下光達を巻き込むことになるしな…。

 それだけは何としてでも避けなくては。

「今夜外出なさるのですか?全領域を使える敵がいるようなのであまりお勧めしませんが」

「でも一様、高校の様子を見ておきたいのよね。それも早めに」

「そうですか、わかりました。一様弐昃と神威を町の監視に置いておきましょう」

「そう、それは心強いわ。あ、そういえば弐昃も町を監視していたんじゃないの?何で助けてくれなかったのかしら」

 確かに。

 弐昃さんは鏡楼市を監視していたはずだ。

「実は、あの時他の敵に対処していたそうで。そちらに手が回らなかったようです。申し訳ありません」

「それじゃ仕方ないわね」

 そこへ弌人さんのスーツのポケットに入っていた携帯が鳴る。

「少し失礼します」

 ポケットから取り出し携帯に出る。

「私ですがどうしましたか?……はい、わかりました。何としてでも護衛してください。その方たちを決して戦闘に立ちいれさせないでください。此方もそちらにいる方々に支援を要請しておきましょう。それまで持ちこたえてください。では」

 そういって携帯を閉じる。何かあったのだろうか?

「お嬢様申し訳ありません。急務が生じました。翔也さんのご両親の居場所が割れてしまったようです」

「つまり式神の分家の攻撃ってわけ?」

「え、マジかよ…」

 式神に巻き込まれないように海外に避難していたはずなのに。

 まさかこんなに早く見つかるとは…。

「では赭攣さまにも報告してまいりますので、失礼します」

 そう言って弌人さんは部屋から出て行った。

 一体どうなるのだろうか…。

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