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BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第二章【朱の章】
23/39

2-2 朱と赭

「探してほしい人がいるの」

 朱鳥は手帳を手に持った弌人さんに話しかける。

「一体どなたでしょうか?」

「翔也の従兄の啓祐さん。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど、連絡がとれないみたいなの」

「彼の従兄ですか…」

 眼を細めて俺の方を見る。

「彼については何度か聞いたことがあります。何でも十七年前の事件を調べているそうですね」

「はい。雑誌記者になったのもの情報収集するためみたいなんです」

 俺の従兄である啓祐兄さんは十七年前世界中を巻き込んだ事件の真相を追っている。その事件とは太平洋上の中心でおきた謎の爆発のことだ。それは只の爆発ではなかった。世界中の科学技術の発展が一切静止、世界は変わってしまったのだ。その原因は公表されることはなかった。

 因みのその真相について兄さんよりも俺が先に知ることとなった。

 原因は非道な人体実験を行っていた式神家を武神家が攻撃し粛清しようとした。しかし式神家が自爆。それも只の自爆ではなく特殊な細工がされていた。それが理由で科学技術の発展を強制的に静止させられたのだった。

 そのことについても教えるために連絡をしたのだが、繋がることはない。行方が分からないのだ。

「いつ頃から連絡が取れないことがわかったのですか?」

 メモにペンを走らせながら俺に質問を投げかける。

「連絡を取ろうと思ったのが四日前位です」

「それ以前に会ったのはいつですか?」

 確か最後に会ったのは四月十七日だった。今日は四月二十九日だから1週間以上前になるのか。

「今から十三日前です」

「そうですか。あの日の三日前にあたるのですね」

 鋭い目つきで俺のことを睨みつける。そんな表情に思わずひるんでしまう。

 そう、四月十七日の三日後に朱鳥は式神に重傷を負わされてしまった。その一件のせいで弌人さんにはかなり嫌われていた。でもこの前俺のために武器を渡してくれたりしたためてっきり許されていると思っていたのだが…。

どうやら思い違いのようだった…――

「弌人、今はその件については関係ないでしょ」

 張り詰めていた空気を切り裂くように朱鳥が口を開く。

「そうでしたね。お嬢様も復帰したようですし取り敢えず今は保留にしておきましょう」

「保留なのか…」

 保留にするという事はいずれきっちりとそれなりのケジメをつけることになるのだろうか…。

「ではその従兄の方を探せばよいのですね」

 メモに次々と文字を書き連ねていく。

「うん、よろしく。式神の件で今は忙しいと思うけど」

「式神に関しては大丈夫です。弍昃を無理矢理叩き起こして監視に当たらせています」

 式神については今特に動きがないようだ。現在日本では眼狩りについても沈静化している。

 ただ逆に言えば居場所を掴むことができていないため、広く浅い監視しかすることしかできない。満足と言える監視ではないが取り敢えずは仕方のないこと。

「寧ろ問題は欧州での眼狩りです。こちらに関しては全然成果が得られていないのです」

 眼狩り事件。

 欧州では眼をくり抜かれるだけではなく、必ず四肢が切断され死体は無残な姿で発見される。日本の眼狩りよりも前から起きてヨーロッパを震撼させた。

 そして、今なおそれは続いているようだ。

「犯人の名前だけは掴むことができました。但し本名かどうかははっきりしていません。私は本名と確信しているのですが、直感でしかないので信用に欠けています。一様分家の方達が何名か向かったのですがあまり功を奏していません。向こうの神眼所持者達との連携も難しく依然苦戦している状況です。この前も姿を捕らえることができた程度で戦闘にすら突入できていないようです」

 ヨーロッパで暴れている敵もかなり厄介のようだ。行動範囲は日本の何倍も広いせいか集中的に戦力を固められない。分散させるしかないのだ。

「だから弍昃が一人で頑張っているのね…。でもこのままじゃ此方も危ないんじゃないの?」

 ヨーロッパも危機的状況なのは確かだ。しかしこの日本でも式神を中心とした事件が起きている。しっかりとした戦力で取り組む必要があるのだが…。

「それに関しては神威家の人間もいるので恐らく大丈夫かと。攻撃されることはあっても負けることはないでしょう」

「え、まだあの人此処にいるの?」

 口を開けて驚く朱鳥。確かに戦力として高い神威家の人をヨーロッパに派遣しないのはおかしい。しかも此処本家にいるということはその一族の中でも一、二位を争う実力者のはず。

「それに関しては赭攣さまのご判断です。何でも神威では力が高すぎて危ないとか」

「確かにあの人なら国一個は地図から消しちゃうかもしれないね…」

 納得言ったように朱鳥は頷く。

 神威家の人が飛び抜けて強いことは知っていたのだが、まさか国一つ消すほどの強さとは…。核爆弾よりも厄介な存在のようだ。

そしてその人に俺は依然救われている…――

 その時も目の前で理不尽な暴力が行われているのを見たが、あれは片鱗に過ぎないのか。

「欧州の案件に関しては仕方ないでしょう。今は最善を尽くして取り組んでいますのでこれ以上は何もできません。だから赭攣さまは先に式神の件を片付けようと考えているようです。それにあたり一人だけ欧州から呼び戻す予定だそうです」

「誰が戻ってくるの?」

神崎未樹(かんざきみき)を此方へ呼び戻します」

 その名前を聞いた途端に、先ほどよりも驚いた表情を見せる朱鳥。

「何でまた神崎の人を。しかも未樹って…。あの人はヨーロッパに居続けるべきなんじゃないの?」

「私も思ったのですが、逆に“未来視”の力で早期決着を考えているのではないでしょうか」

 未来視?未来視ってつまり、未来を見る事の出来る能力なのだろうか。

「朱鳥、未来視ってそれは未来が見えるのか?」

「そうよ。読んで字のごとく“未来を視ることのできる能力”よ。だから驚いたの。殺人を食い止めるには結構必要な能力よ。先回りもできるだろうし…」

「ところが上手くいってないのですよ」

「え、どういうこと?」

 未来視といのは確かに未来を見ることが可能だ。但し限界が勿論ある。それは時間、対象、空間の三つだそうだ。例としては一カ月先まで見ることができるが、自分のいる半径一km以内のみとか。これは人によって変化するらしい。

「神崎未樹に関して言えば時間、空間、対象について申し分はありません。しかしそれ以上に欧州の敵は動くのです。だから未来視も役には立っているのですが十分な仕事ができているわけではありません」

「だから日本に呼び戻すと…」

「はい。というわけで明日此方へ戻ってくる予定だそうです。したがって明日からお嬢様と君に神崎未樹を加えた三人で行動をしていただきたいのです」

「え…あ、うん、わかったわ…」

 かなり歯切れが悪い様子だ。

「何か不都合があるのか?」

「んーと苦手なんだよ。一緒にいると見透かされている感じがしてね。未来視だから当然なんだろうけど」

 自分に見えていないものが見えている人が隣にいる。それは不気味かもしれない。君が悪いというか…。でもそれは本人が望んで身に付いた力ではなかったはずだから仕方ないのだろうけど。

「そっか。確かに未来が視えているやつと一緒にいるのは気分が悪いかもな」

 うん、と首を縦ふり頷く。

「特にあの人が嫌っているのよ。それが一番心配ね」

「そうですね。確かにそれは心配ですね」

 朱鳥と弌人さんが腕を組み、眉間に皺を寄せ考え込む。

「あの人って?」

「この家に今いる神威の人。あの人は未樹かなり毛嫌いしているのよね。明日さっそく家の一部が更地になるかもしれないわね…」

 溜息をついて項垂れる朱鳥。心配の種が増えたようだ。

「そうなったら翔也、悪いけど身体を張って止めてくれる?」

「え……………………」

 あの国一つ消してしまうかもしれない人の攻撃を体で受け止めろと…?確かに体を張って生きたまま止められるのは俺だけなのかもしれないが。いや、それ以前にさっきまで俺に対していっていたことと全然真逆じゃないか!?

「冗談よ」

「冗談かよっ!冗談になってなかったぞ、おい」

 何故か爆笑している飛鳥。俺はおかしい反応をした覚えは一つもないのだけれど。

「何か久しぶりに笑ったなー。今までずっと寝てたし当たり前か」

 笑っていた余韻を残したまま朱鳥は話を続ける。

「勿論翔也にはそんな危険なことさせない。私とお父さんが全力で止めるわよ。これでも本家の人間なんだから無条件で言うことを聞いてくれるよ。心配しないで」

 そっか。確かに分家ならば本家の人間のいうことは必ず聞かなければならない。

「それで弌人、明日の何時くらいに日本に到着するの?」

 弌人さんは手帳を何ページか捲る。

「明日の午前11時くらいです。できればお嬢様もご一緒に来ていただきたい。まだ病床から上がったばかりだと思うのですが、大丈夫でしょうか」

「ん、私はこの通り体調は問題ないから大丈夫よ。でも、明日って平日になるから学校じゃない?」

 あ、そっか。

 弐昃さんと式神が戦闘を行ったのが原因で現在休校中であるのを朱鳥走らないのか。

「明日はまだ休校だと思うよ。ついこの間弐式さんと式神が戦闘を行ったせいで今滅茶苦茶なんだ」

 え…、と朱鳥は間の抜けた顔になった。

「私が寝ている間にそんなことになってたの?」

「うん。学校が屋上から二階分は殆ど原型を留めてないよ。だから暫く休校になるんだって。一様近辺にある高校へ一時的な転校をするって話になっているけれどまだ本決まりじゃないみたい」

「なるほど…。でもその分式神を見つけるための時間を作れるわね」

 目つきを鋭くさせて考え込む。

 確かにこの暇な時間を式神の探索のために使うことが可能だ。

「そうだな、折角だからこの時間を有効活用しようか。なるべく早く決着をつけなければヨーロッパで起きている事件を片づけることできないからな」

 ヨーロッパで起きている眼狩りも早めに対応しなければ被害者が増えていってしまう。しかも被害がかなり大きいようだ。

「いえ、欧州の件に関してお嬢様と君が考える必要はないです。赭攣さまはあなた達を欧州へと向かわせることは一切考えていないようです。したがって今は式神の件について取り組んでいただきたい」

「いや、でも…」

「一つ一つ確実に案件を消化していくことが大切です。まずは式神を倒しましょう」

「そうね。ヨーロッパの件に関しては一刻も早く私も向かって助けたいけどまずは式神を片づけないと。あいつの目的は翔也の眼。そのために色々な手を使ってくるでしょうね。降りかかる火の粉は全て私が飲み込む。よしっ、それじゃお父さんの所に行って久しぶりに稽古してもらおっと」

 座っていた席から立ち上がり扉へと歩き出す。俺も同時に席から立ち上がり扉へと向かう。

「では、明日時間になりましたらお迎えに行きます。」

「わかったわ。それじゃまた明日」

 弌人さんの部屋から出て俺たちは赭攣さんの所へと向かった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 朱鳥の父親であり十の神の名を持つ分家を従える本家武神家頭首、武神赭攣(たけがみしづる)さん。

 その力は朱鳥のそれに劣るらしいけれど、神眼の扱い方がとても優れているらしい。だから力で朱鳥に負けても技術力で朱鳥を遥かに上回ることができるそうだ。

 というようなことを先ほど朱鳥から聞いたばかりで今、道場にいる。先ほど赭攣さんに会うために部屋に向かったのだが会うことができなかった。そこで道場に向かったら案の定いたわけだ。

 赭攣さんは道場の奥に立ち朱鳥は入口に立っている。

「お父さん、心配かけてごめんね」

「大丈夫だ。色々あったみたいだがあのようなことじゃ朱鳥は倒れないだろう」

「勿論よ。おかげで苦労したけれど生きていることに感謝しなくちゃね」

「そうだな」

 親子久しぶりの対面。道場という場に合わない穏やかな空気が満ちている。

「それじゃ久しぶりに」

「体もなまっているだろう。今日は手加減しようか?」

「そんなもの必要ないわよ」

「だろうな」

 赭攣さんは静かにほほ笑む。

 次の瞬間さっきまで満ちていた穏やかな空気が急変。朱鳥と赭攣さんの瞳は燃えるような朱色へと変化していた。

 道場にふさわしい殺気が空気を支配する。あまりの殺気に俺は思わず後ずさりしてしまう。

 一方の朱鳥はそんなさっきにも慣れているようでさっきと何も変わっていなかった。寧ろ赭攣さんの殺気に負けまいと朱鳥も殺気を放っていた。

「行くわよ」

 朱鳥は右手を振る。すると細長い炎が現れ中から刀が出てきた。これは確か朱鳥のお祖父さんの遺品で、武神家のために特別に作られたらしい。

 朱鳥はそれを鞘から抜き中断に構える。刃は既に本来の銀色から朱い色へと変化していた。

 一方の赭攣さんは武器を持たないどころか構えてすらいない。道場の奥で悠然と立っているだけだ。殺気と態度にあまりにも差がある。

「今日こそ勝つわよ!」

 そういうと朱鳥は地面を蹴り赭攣さんとの距離を一気につめる。

「え、おい武器持ってないぞ!」

 俺は慌てて声をかけるが一切聞く耳をもたない。朱鳥は容赦なく刀を振り下ろした。

 赭攣さんはそれを避けることもせず刃に少しだけ触れて軌道を強引に変える。軌道を変えられた刀は赭攣さんを斬ることなく床を砕いた。

 爆発音がして床の破片が周囲に散る。それを避けるように二人は再び距離をとる。

 朱鳥が唱える。

『我が獄炎よ、我が指示に従い使命を果たせ』

 赭攣さんが唱える。

『我が獄炎よ、我が指示に従い使命を果たせ』

 朱鳥の刀が巨大な炎に包まれる。大きな火の欠片が道場の木の床を焼く。

 一方の赭攣さんはその手だけ朱く炎がまとっているだけで朱鳥のように大きくはない。朱鳥よりも力がないのは本当のようだ。

 朱鳥は刀を上段に構えて再び距離を詰める。朱鳥は刀に纏った炎を振り回し攻撃を繰り返す。しかし、赭攣さんはそれを全て手で触れて軌道をそらしてしまう。触れるたびに朱い火花が散り道場の床や壁までも炭へと変えてしまう。

 俺は道場の入口から中の様子を見ているのだが、熱気がここまで来ている。

ん、でもさっきから赭攣さん全然攻撃しないな…――

 赭攣さんは朱鳥の攻撃をそらしているだけで一切攻撃を加えていない。

「やっぱり娘だから攻撃はしないのかな…」

 とつぶやいた瞬間朱鳥の体が真横に吹き飛んで大きな音を立てながら壁へと衝突した。赭攣さんの回し蹴りが当たったのだろう。蹴り上げた足を下しながら赭攣さんは再び悠然とした姿で立つ。

「朱鳥、ちょっと鈍ったんじゃないか?」

 炎を纏った手のまま腕を組みながら壁からずり落ちていく朱鳥を見る。

 朱鳥は大きく呼吸しながら息を整えてる。壁に衝突したときに灰の中にあった空気が出て行ったのだろう。

「まだまだぁ!」

 朱鳥は床から勢いよく立ち上がり赭攣さんへと刀を向ける。

「頭を動かしなさい」

 今度は刀が振り下ろされることなく片手で握られていた。

「朱鳥は力があるのに技術力がないんだよな。技術力があればこれくらいの刃で傷つくことはない。今のままでは私に刀を当てても傷つけることはできないよ」

 そう言うと刀を掴んだまま朱鳥を道場の入口へと投げ飛ばした。

「って、ちょっと俺がいるんだけど!」

 俺の体に向かって刀を持ったままの朱鳥が飛んでくる。

避けるべきか、受け止めるべきか…――

 幼馴染として、色々助けてもらった側としては受け止めるべきなんだろう。しかし今朱鳥は燃えている。文字通り体に火を纏っているのだ。しかも刀を持っていて下手な受け止め方をすれば俺に刺さってしまう。けれど俺はそうそう簡単に死ねない体。

痛いけれど仕方ないっ!――

 俺は飛んでくる朱鳥を受け止めるために身構えた…が。

「翔也ごめん!」

 朱鳥は俺に飛び込むのではなく、空中で体を捻り足から俺の胸に着地。そのまま俺を蹴り飛ばして再び道場の中へと飛び込んでいった。

 一方朱鳥の足掛かりにされた俺はというと、さなかから真後ろに吹き飛ばされ無残に地面を転がる。

「痛ぇ…。痛すぎる…」

 今の一撃で体が傷だらけになった。

「ん…?」

 何故か左腕の感覚がない。目をやると左腕が反対へと曲がっていた。あんまりにもいきなりだったせいか痛覚がマヒしてしまっているようだ。

「仕方ないか、『永劫:再生』」

 蒼い光が左腕を包み込む。ずるずるという気持ち悪い感覚がしたかと思うと光が消えて腕が元通りになっていた。

 これくらいの怪我ならすぐに治るし力も大して使わないようだ。疲労感などは一切ない。

 顔をあげて道場のほうへと見やる。すると奥のほうで爆発があった。爆音と共に道場の側面の壁が一部吹き飛んだ。

 道場の右側の壁から飛鳥が、左側から赭攣さんが出てくる。

「朱鳥、さっきからも言っているが無闇やたらに力を使わないように。頭を使って考えなさい」

「そんなこといっても力が強すぎてコントロールが難しいのよ!何とかならないの?」

 ため息をつきながらうんざりとした表情だ。力のコントロールが上手くいかず苦戦しているのだろう。

「力の抑制が下手になってしまっているな。一週間以上も寝ていたのだから仕方ないか」

 そう言うと赭攣さんは初めて構えた。

「それじゃ次の段階へと行こう。次は戦い方だよ」

「わかったわ」

 朱鳥は刀を中断に構える。

「はーっ!」

 息を一気に吐き出しながら声を上げ、赭攣さんへと刀を向ける。

 赭攣さんは静かに足を運びながら朱鳥へと向かっていく。

 こうして見てみると朱鳥は動きがとても大きい。その分隙が出るが刀に纏っている炎の攻撃範囲が広いせいか十分カバーできる。一方の赭攣さんは攻撃範囲が狭いのに対して小さな隙や攻撃が薄い部分を崩して戦う。

 したがって一つ一つの攻撃が丁寧な赭攣さんが朱鳥の力押しを突き崩していっているようだ。

 朱鳥が横に刀を振る。赭攣さんはそれを後ろに下がり避けて、朱鳥の刀を振ったとの隙に入り込む。赭攣さんの突きが朱鳥の喉に刺さる。

 朱鳥は顔を歪めながら後ろへと突き飛ばされてしまう。それでもなお立ち上がり再び刀を振りかざす。赭攣さん再びそれを掴んでしまう。

「グッ………」

 朱鳥は全力を込めて刀に炎を集中させる。掴まれた手をあらん限りの力を使って押し破ろうとする。しかし、集中させようとするが上手くいかない。炎が集まらないうちに拡散してしまうのだ。

でも、これさえ突き詰めれば行けるかも――

 朱鳥は意識を刀へと集中させる。

「いっけーっ!」

 刀が今までより深く明るく朱々と燃え上がった。

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