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BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第一章【蒼の章】
20/39

1-20 蒼と碧

 蒼く輝く眼を光らせながら日が沈んだ道を走る。できるだけ人目のつかないような場所を選びながら走り続ける。

 前回は人祓いなんていう神器が使われていたが、今回も使われているかわからない。周りの人を巻き込むよな場所は、避けておかなければならない。

 そしたら戦う場所の問題だ。できるだけ広い方が良いかもしれない。何しろ、あの妖偽というやつの技はいところで大きな威力を発揮する。開けていて、戦いやすい場所を探さなければ。

 暫く走り続けて、待ちの外れを流れる川に辿り着く。土手に降りて、周りを伺ってみると人の姿はない。空を見上げると、夕焼けと夜の境目が表れていた。もうすぐ日が降りるので、殆どの人は帰っているのだろう。

 弌人(いちと)さんから受け取った剣を鞘から取り出す。果たして、神器としてどのような効果を発揮するのだろうか。右手で柄を握り、力をこめてみる。

 すると剣の刃に描かれた文字が蒼く光り始める。その文字から光りが漏れでて、それは刃を全て飲み込む。瞬間、謎の文字が刃の周りを円を描くように回転し始めた。

 勿論、何と書いてあるのかは読めない。ただ、その意味だけは何となくわかったような気がした。

この刃は永遠に折れる事がないということを――

 剣の使い方は、よくわからないけれども朱鳥とずっと一緒にいたから、基本的な立ち回りは何となくわかる。

 そして、あの女は表れた。

 土手の上に立ち、腹には痛々しく包帯を巻いている。けれどもその眼はすでに、変色していた。

「あなた、自分で覚醒させたのね…」

 少し怪訝そうな顔をしながら俺を見つめる。

「そうだ、お前を倒すために俺は決断をした。全然俺らしくない判断だけどな」

 剣の柄を更に強く握り締める。

「そう…、でもあなたには死んでもらう。これ以上は許さない…」

 妖偽は両手を構える。捻死を使う気なのだろう。

「させるか!」

 俺は捻死を使われる前に、駆けだす。あの攻撃は照準を合わせなければ、当てる事は難しいはずだ。

『捻死』

 ゴリゴリという鈍い音と共に、後ろの地面が抉れる。俺の後を追うようにそれは続いて行く。左右蛇行しながら、自分の身体に当たらない様に回避するがしつこく追跡してくる。

 周囲を土煙が埋め尽くしていく。視覚が段々悪くなっていく。

 しかし、俺にはわかる。妖偽が何処にいるのかが。

これが朱鳥の言っていたことか…――

 同じ神眼所持者には、能力が使われた痕跡がわかる。それはうまり、能力を現在行使している人物の居場所もおのずとわかるということだ。

 感じる…妖偽が両手を構えて、俺をこの世から消そうとしている。

 俺は茶色の視界を走りながら、倒す相手に向かう。

「そこだ!」

 剣を突き出す。

 手に何かを刺した感触は感じなかった。その変わりにその右手を掴まれる。

「そんな直線的だと、私は倒せないわよ」

 妖偽は怪しく微笑む。

 バキバキという音がして俺の右手は力なく、垂れる。

「クソッ!」

 俺は妖偽の手から強引に、逃げて距離をとる。右手は剣をしっかり掴んだまだったが、手首が粉々に折れて、中で掻き回されているようだ。

 この前までの俺だったら、此処でもう敗北は決定していただろう。

 でも今の俺には蒼き目、覚醒した永劫がある。

 こんな変な眼のせいで俺の日常は崩れ去った。神眼なんていう人外な能力のせいで、こんなことになった。神眼、永劫とかいうわけわかたない力のせいで俺は、変わることを強制された。

 いい加減これまでの“つけ”を払ってもらおうじゃないか。

 ちゃんと力を発揮しろよ。

『永劫―再生―!』

 俺の変色した蒼い瞳がより一層輝く。

 同時に、粉々になっていた右手首が蒼い光りと文字によって覆われる。直ぐに骨は治った。何の異常も無い。

 もう一度剣を構える。

「その力、やっぱり消さないと駄目ね…。危険すぎる」

 容疑は眼を細めながら、俺の治癒した右手首を見る。

「覚醒したあなたの存在は、これから沢山の人を苦しめる事になる。だから此処で消えなさい」

「沢山の人を苦しめたのはお前らだろ。お前ら式神さえいなければ、こんなことにはならなかった」

 翔也は妖偽に向かって走り続ける。頭の中にあるのは目の前の憎い敵を倒すことしかない。

 妖偽は瞳の色をより一層濃くして、捻曲を発動し続ける。

 走る翔也の身体は捻じれる。肩が外れる。腹に穴が開く。足が吹き飛ぶ。一つの捻曲が翔也の身体に触れるごとに、捻じ曲げ不気味な音と一緒に破壊していく。

 しかし、それらは直ぐに元に戻る。外れた肩は蒼い光と共に治り、腹の穴は蒼い光と共にふさがり、吹き飛んだ足は蒼日光と共に再生する。

破壊、再生、破壊、再生、破壊、再生、破壊、再生――

 破壊しても意味のない身体に向かい、妖偽はひたすら捻曲を使い続ける。

 破壊されても再生する翔也は、ひたすら走り続ける。

「きりがないわね…」

 妖偽は額に汗を浮かべる。このままでは、此方の方が力先に尽きてしまう。やはり、捻死で一気に行動を封じてあの眼を破壊しなければ。

 神眼とは文字通り、眼にその全てが凝縮されている。覚醒して間も無い今ならば、もしかしたら眼を封じる事によって殺すことができるかもしれない…。

 そもそもあいつが本当に死なないかどうかはわからない。

 “永劫”というのは、今まで所持していた人は記録上一人しかいないとされている。その人物に関しても、所持しているという記録だけであり、その後どうなったのかはわかっていない。

 実際、永遠の命とは言ってもそれは悪魔で推測だ。永劫の特徴として“無限の再生”や“決して死ぬことのない身体”という記録があるから、永劫の所持者は“永遠の命を得られる”という推測が成り立っている。その事実も誰によって記されたのかは、全く分かっていない。よって“永劫”というのは伝説上の神眼でしかなかった。

 ところが今目の前には、その神眼を所持していると言われている少年がいる。ちゃんと覚醒もしている。そして、さっき“無限の再生”を発揮した。

 残るは“決して死ぬことのない身体”だ。

 無限に再生するのだから、あいつにとっては自分の身体など使い捨てにできる。非常に戦いにくいが私の『捻死』さえ当たれば動きを封じられる。

 妖偽は周囲一帯に捻曲をばら撒きながら、手の平を翔也に向ける。十分に距離を詰めてからでないとまた避けられてしまう。翔也が接近してくるのを待つ。

 間合いが近くなる…。

 二十歩、十九歩、十八歩、十七歩、十六歩、十五歩、十四歩、十三歩、十二歩、十一歩、十歩…。

今だっ!――

『捻死!』

 一直線に走り続けていた翔也は避ける事ができない。

 バキバキという音が響き渡る。関節という関節が勝手に曲がり始め、走れなくなり転倒する。身体はを転がりながら妖偽の足元まで転がり続ける。

 妖偽は翔也の身体に向け、それが足元に来るまで両手を構え続けてる。

「う…ぐあ…」

 翔也は立ち上がれなくなる。捻死によ破壊と永劫による再生が身体の中で繰り返される。

 かなり気持ち悪い。自分の身体で、一体何が起きているのかわからなくなる。

 けれども、目の前の妖偽を殺そうと立ち上がろうとする。右手に掴んだ蒼い光を放つ剣は絶対に離さない。

 翔也の姿を見て妖偽は戦慄する…。

こいつは化物だ…――

 その手に捻死の力を最大限までに上げる。先ほどよりも破壊をする速さが上がり続ける。

 翔也の周りには沢山の血が溢れ出ていた。破壊が起きるたびに血が溢れ、再生が始まるたびに血は止まる。その繰り返しが今目の前で起きている。

「う…あ……」

 翔也は短く声を上げる。再生が破壊に負け始めていた。

 今から再生が始まっても直ぐには立ち上がれない二違いない。今こそその時が来た。

 容疑は首が捻じれ、憎悪の視線を投げ続ける翔也の目に手を伸ばす。指先に捻死を全て集中させる。

「これで、あなたは死ぬ…」

グチャ…――

 翔也から二つの光が奪われる。同時に再生の勢いが失われていく。

「ぐあああああああああああああああああああああああああ」

 雄叫びを上げる。

 しかしそんな悲鳴を無視しながら、捻死は翔也の身体を破壊し尽くす。

 バキッという最後の音が響く。翔也はピタリとも動かなくなった。

「所詮、永劫何て言うのは只の幻。永遠に滅びない身体何て存在して堪るものですか」

 妖偽は瞳の色を基に戻す。そして眼の前に転がる屍を見つめる。

 今日初めて捻死を最大限まで用いた。想像以上の破壊力だったが、此処までしなければ永劫を持つ者を倒せないという事だ。

「あなたのおかげよ…」

 既に月が昇る空を見つめる。彼がいなければ、私はこうやって立っていなかっただろう。

「ありがとう」

 短く呟いて妖偽は歩き始める。もう眼の前にある肉の塊にはもう何もできまい。問題はこれからのことだ。本来は捕獲しなければならなかったのに、殺してしまった。早く逃げなければ厭人(あきと)さまに殺されることは眼に見えている。

さて、どこに行こうかしら――

 夜空に浮かぶ月を見ながら考える。

 その時背後がいきなり明るくなる。色は蒼色…。

まさか!?――

 背後を振り返り、赤い血でまみれたそれを見る。蒼き光っていたのは剣だった。更には頭のあったであろう場所も光り始める。次に意味のわからない文字が、その駆け巡り再生を始めた。

「あそこまで破壊しても、尚再生をするのね…。ならばもう一度!」

 妖偽は両手を構える。

『捻死!』

 人の形に戻りつつあるそれに向かって攻撃を放つ。

バキンッ!―― 

 しかし、空間は歪まない。捻死はかき消されたのだ、あの意味のわからない文字によって…。

「なっ…!?」

 自分の能力の効果が全くないことに驚く。今回はあの神成とは違い相殺されたわけではない。これは寧ろ神威のように強引に消された感覚に似ていた。力技で捻死を封じられた。

 捻死を封じた文字の大群の中で、再生は行われる。その速さは増し、人の姿へと戻っていく。

「何で、何でっ…」

 妖偽はひたすら捻死を放ち続けるが、全て封じられてしまう。

「何で何でって…」

 人の姿に戻った翔也は、より強く光る蒼く輝いている。

「お前じゃ俺には勝てないってことだよ」

 剣を構える。

「お前のせいで梓は死にかけた。俺を守ろうとして梓はお前に殺されかけた。そしていま、大怪我をしてとても苦しんでいる。俺はお前がとても憎い」

 妖偽を蒼い瞳で、射抜くような目つきで見る。

 そして剣先を向けて宣言する。

「俺の力でお前を倒す」

 そんな翔也の決意に、妖偽は笑い出す。

「あんたも大切な人を殺されていることを知っている。でも良いじゃない、まだ死んでいないんだから」

「え…」

 翔也は思わず驚く。

「私はね、かつて武神家のやつらに大切な人を殺された」

 冷たく、生気のない声で話し続ける。

「眼の前で私の大切な人は、私を守るために殺された。そうよ…あいつらが私の大切な人を奪った」

 下を向いて、独り言のように言葉を続ける。

「私は…私は…」

 妖偽から理性が消える…。

「お前を…ユルサナイ」

 妖偽の眼が大きく見開かれる。

 瞳の色は、朱から緑へ、緑から朱へと速いスピードで変化し続ける。

 グシャ―という音が響く。


 ******


「な!?」

 気付くと左肩から腕までが、抉られたように消えていた。痛覚が直ぐに襲ってきたが、慌てて距離を取る。

『永劫―再生―!』

 俺は急いで腕を再生して、立ち回り方を考える。俺の身体には謎の文字が今もなお駆け廻り、それが妖偽からの攻撃を防いでいてくれた。ところがさっきの攻撃はそれを打ち破り、俺の身体へと攻撃が届いた。

「何だあいつ…さっきとは全然違う」

 その眼は狂気しかない。その眼で俺だけを見続ける。

キン――

 変な音が響いたので、慌てて剣で防御する。同時に剣へもの凄い衝撃が加わり後ろへ吹き飛ばされてしまう。地面を暫く転がり、そのまま立ち上がる。

キン――

 再び空気を切り裂くような高い音が響く。今度は両手で剣の柄を持ち、衝撃に耐える。

「ぐっ…」

 手が痺れて危うく落としそうになった。剣は欠けることはなかったが、剣を取り巻いていた文字は少し減っているように感じた。

 あの衝撃はいくらなんでも駄目だ。今は防げたとしても、幾つも食らっていては話にならない。止める方法はやっぱり直接攻撃しかないのだろうけど、上手くいくだろうか…。

「ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…ユルサナイ…」

 ブツブツと眼を虚ろにしながら呟き続ける。その姿はまるで人形のようだ。

キン――

 不快な音が響き渡り鼓膜を震わす。その次には衝撃。その度に両手で構えた剣で防ぐが、そのたびに文字は減っていく。

何なんだこいつは、一体どうなってるんだ!?――

 このような妖偽の様子は確か、あの変なスーツを着た女の人と戦った時に見たような気がする…。

 最も、あの時俺は死にかけていたため良く見る事ができなかった。その続きがこれなのだろうか。

「お前、そんなに恨んでいるのか。でもな、俺は死ぬわけにいかないんだ。大切な人が何人もいるからな…。今度は俺があいつらを守る番だ」

 俺は剣の構えを防御から攻撃に変化させる。この状態が続けば俺の方が先にやられてしまう。此方から攻撃を仕掛けるしかない。

「今止めを刺してやる!」

 既に人ではない妖偽に向かって走る。

「ウア…オマエハ…シネ…」

キン――キン――キン――と高い音が連続して鳴り響く。慌てて横に転がるように回避する。次に地面が揺れるような衝撃と土ぼこりが舞いあがる。土ぼこりがなくなると、そこには巨大な穴が開いていた。

 あまりの攻撃力に戦慄するが、それでも妖偽に向かって走り続ける。足を止めてしまっては身体が丸ごと消えてしまいかねない…。身体が分子レベルまで粉々にされても、再生できるかどうかの自信はない。

 耳鳴りがしそうな高音が鳴り響くたびに、身体を転がしたり下がりながらして辛うじて回避していく。

グシャ―

 急に身体のバランスが崩れて地面に倒れこんでしまう。

「しまった、左足が…」

 俺の左足は膝上から消失していた。

『永劫―再生―!』

 急いで回復するように集中するが、中々回復しない。そして突然身体に疲労感が襲う。どうやら力がかなり減ってきているようだ。

キン――

「くそっ!」

 衝撃を剣で防ぎ、左足の回復を待つしかない。さっきから俺は身体の一部が欠けてしまうような、強すぎる攻撃を受け過ぎた。さっきなど死んだ状態から生き帰ったようなものだ。そんな状態でこれ以上戦い続けるのは難しいはず…。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 突然眼の前から大きな悲鳴が上がる。同時に、耳鳴りのするような高い音のなる攻撃もなくなっていた。

 妖偽は眼を抑えながら崩れ落ちてい行く。

「そんな…そんな…私は…私は…」

 泣き叫び続ける。一体何が起きたのだろうか…。

「あ…あ…助け…て…」

 そう呟くとそのまま地面に倒れて動かなくなった。俺は回復した左足で立ち上がり、恐る恐る確認しに行く。妖偽は全く動かない。

「何だこれ…」

 妖偽の右肩には蒼い刻印が浮かんでいた。まるで何かの呪いのようだ。

「全く、この馬鹿は何やってんだろうな」

 背後から声がする。その声は俺にとっては絶対にわすれられない声だった。

「式神!」

 俺は剣を構えて、眼を強く光らせる。

「覚醒したのか。うんうん、順調なようだな」

 満足そうに酷く歪んだ口で笑う。

「その調子だ。お前はそのまま憎悪を動力源として戦い続けろ」

「お前は殺す!」

 俺は目前の敵に向かって走り出す。

ピンッ――

「な…」

 いきなり身体が動かなる。式神を見ると左手を高々と上げて、俺をみながらニヤニヤと笑っていた。酷く気持ち悪い笑い方だ…。

「そう焦るな。お前には更なる高みに行ってもらわなければ困るんだ」

「更なる高み…?」

「お前は未だに“(あお)”のままだ。だからお前は死ぬことはある」

「どいうことだ。俺はさっき死にかけたがこの通り生きているぞ」

「そりゃ力がある限りな。だが力が尽きればお前はいずれ死ぬ。全く、神眼の研究が全く進んでない武神の野郎どもの声なんか信じるな。お前は今のままでは間違いなく死ぬ。だがな、それじゃ困るんだよ。お前はその永劫の能力を更に上げてもらわなければ困る。“(あお)”よりも高貴なる眼、“(あお)”の力を備えた“碧眼(へきがん)”にな」

「碧眼…」

「だからそれまで俺はお前を捕らえる事はしない。お前の周りの連中に攻撃を仕掛け、お前の憎悪を膨らませていく」

 酷く歪んだ笑みで笑い続ける事を止めない。

「そうだな、だから今日はこれまでとしよう。井言井(いこい)易絲易いとい妖偽を運び出して研究室へと運んでおけ」

「はい」

「はい」

 いつのまにか妖偽のそばには狐の仮面を被った、水色の浴衣を着た二人が立っていた。その二人は以前のように妖偽を担ぎあげると、どこかに消え去ってしまった。

「お前、研究室ってどういうことだ」

「簡単な話しだ。あんな女はもう素材としか使えない。俺の家系は研究が大好きでな、それはきっちりと受け継がれている」

 楽しくて、愉快そうに笑う。

「分家じゃねぇのかよ…」

「分家?そんなもの、ただの替えのきく道具に過ぎない。あいつらは人間じゃないんだ。倫理観とか道徳観など必要ない。俺に使われることに存在意義があるんだからな」

「てめぇ…」

 俺はより一層式神を睨みつける。

「そんな眼で見てどうすんだ。お前は今俺によって身体を拘束されている」

 身体中が青白く光り始め、細い糸が浮かび上がる。

「それでな、ワイヤーってこんな使い方もできるんだぜ」

 スッと左手を降ろす。

 途端に俺の体中から鮮血が舞いあがった。そのまま俺は地面に向かって前のめりに倒れこむ。

「今日はこんなもんだ。次の機会には輪切りにしてやるよ」

 酷く歪んだ笑みを浮かべながら、暗い闇の中へと消え去っていった。

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