表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第一章【蒼の章】
19/39

1-19 選択

 目を開ける。

 身体中に、意識の液体が満たされてい浮くように、感覚が脳にまで上ってくる。身体が柔らかい布に挟まれている感覚。目の前には白い天井と蛍光灯。鼻から薬品の臭いが入ってきて、嗅覚を刺激する。耳には何の音も入ってくることはなく、鼓膜を刺激することはない。

 身体を起こそうとする。しかし、思うように上がらない。何故ならば体中の関節という関節が固いもので覆われて、動かすことができないからだ。

 声を出そうとする。

「あ、あ、あ…」

 思うように声を出すことができない。何か膜が張られている感じで、かすれた音しかでない。

 ベットを囲んでいたカーテンが開く音がする。誰かが中に入ってきたようだ。

「翔也くん意識戻ったみたいだね」

 それは白衣を着た弎塑稀(みそぎ)さんだった。首には聴診器をぶら下げながら、俺の顔を覗いてくる。

「今はちょっと声帯が傷ついているから、ちゃんと声が出ないかもしれないけど、多分お昼頃には完治しているから大丈夫よ」

 どうやら声が上手く出なかったのは声帯のせいらしい。

「しかし、流石蒼の永劫ね…。あんな大怪我を一晩で直してしまうなんてね。傷跡も残らないし。覚醒しなくて、いずれあなたに私は不要になるかもね。中途半端な呪の解け方にお関わらず、ここまで成長するのは予想外よ」

 俺の胸に聴診器をあてながら喋りつづける。

「そうそう、翔也くんは十五時間程意識を失っていたんだよ。現在は四月二三日午前十時二十七分」

 一晩意識を失っていたようだ。

 そう言えば、此処で夜を明かしたのは二度目だな。一昨日の夜は幻覚で倒れ、昨日は身体中の関節を強引に曲げられ、倒れた。

 痛みでは昨日のが一番ひどかったな…。まさかあそこまでの激痛を味わうことになるとは。

 梓は大丈夫だったのだろうか。意識を失っていただけで、死んでいないはずだ。でもあれだけの傷を負ったのだから、何か障害が残るかもしれないけれど。

「後梓ちゃんのことだけれど、かなり重症ね。最善は尽くしているけれど、いつ目覚めるかは不明。特に内臓の傷が酷いから慎重を要するの。でも死ぬことはないから大丈夫、安心して。糞馬鹿野郎を追い出して、そこで治療しているから」

 糞馬鹿野郎とは恐らく弍昃(にしき)さんのことだろう。弎塑稀さんは治療中の指示を効かない患者には、容赦がないようだ。怪我人を救う天使から、悪魔に変わるからな…。

「ただ…」

 弎塑稀さんは沈んだ顔をする。

「子どもはもう産めないかもしれない」

 え…子どもが作れない…?

「当たり所が悪かった、としか言いようがないわね…。修復は試みるけど、どうなるかはわからない」

 深いため息をつく。

 恐らくその原因は、妖偽にあの腹を撫でられて吹き飛ばされた時だろう。あの一撃の傷はそんなに深かったのか。それにも関わらず、俺を守ろうと戦い続けた…。

妖偽…許さない…――

「さて、ちょっと包帯とギブスを外して確認するね」

 俺の右腕に巻かれていた包帯を外して行く。そこからギブスが現れた。ネジ回しでネジを一つずつはずして行く。

 指、手首、腕の関節と確認していく。

「本当に治っているね。曲げても大丈夫そうだし、ちょっとやってみて」

 俺は言われたとおりに、関節を曲げていく。違和感や痛みも無く、動かすことができた。完治しているようだ。

 しかし、あれだけ滅茶苦茶に曲げられると、関節を動かすのが怖く感じるな…。

「うん、大丈夫ね」

 満足そうに微笑みながら、身体中に巻いてあった包帯を次々と解いて行く。

「でも声帯なんて場所が、傷ついているのは不可解ね」

 強引に首を曲げられた時にでも、傷ついたのだろうか。だとしたら首の骨が折れていたことになるのだが…。

 弎塑稀さんは外したギブスと包帯を片づけ始める。

「ちょっと立ち上がってみて」

 俺はベットから出て立ち上がる。足の関節も通常運転の用だ。首を回してみると、止まるべきところでとまってくれた。百八十度まで無理矢理回転させられていたから、もしやと思ったがこちらも通常運転のようだ。後は声だけか。

「あ、ああ、あああ…」

 さっきよりは出るようになってきている。この分なら弎塑稀さんに言われたとおりに、昼過ぎには声帯も通常運転になるだろう。

「うん、うん。大丈夫そうね。それじゃ二回目の退院おめでとう。ま医務室だけど」

 椅子に座りコーヒーを飲み始める。

「そう言えば翔也くんはもう決めたの、覚醒させるか否か」

 正直深くまで考える時間がなかったから、まだ決断はしていない。

 首を横に振り、否定の意を示す。

「そう、でも早めに決断はしておくことね。ただ私としては早死に知る位なら、永遠に生きた方が良いと思うよ」

 早死にとは昨日の事をさしているのだろう。

 昨日のは流石に危険だったか。もし色神が捻死を止めなければ、あのまま捻じれて殺されていただろう。

 俺も早死にだけは御免被る。まだまだやり残していることは、沢山あるはずだ。

「んじゃ、部屋まで送り届けるからついてきて」

 無言でうなずき、ついていく。

この光景も昨日見たばっかりだな…――

 薄暗く先の見えない廊下を歩きながら、部屋に到着する。

「それじゃ、お大事に」

 そう言って弎塑稀さんは、今来た方向へと戻っていった。

 目の前を扉を開けて部屋の中に入る。誰もいない部屋。静まり返っている部屋。

 昔は俺の部屋もこんな感じだったはずなのに、何故か寂しいものを感じる。明かりもつけないで、薄暗い部屋に座り込む。窓からは太陽の光が差し込んでくるが、その光は部屋の奥まで届くことはない。

考える――

 早死にするのと永遠に生きる。どちらを選択するべきなのだろうか。

 昨日の戦いで俺は死にかけた。

 命を失いかけた。

「無理だ…」

 どっちを選択するなんて、わからない。そりゃ早くは死にたくないが、永遠に生きる事も嫌だ。

 寂しい…。

 俺の側にいた人たちが次々と消えていく恐怖が、此処最近で一段と大きくなった。近くで大切な人が死にかけているのを見すぎたせいだろう。

 できればあのような恐怖は知りたくなかった。今まで通り、怠けながらそんな世界とは隔絶された場所で生きて、死にたかった。

 でも…もう遅い。

 俺には二つに一つしかない。選ばないという三つ目の選択肢はあるが、それは応えていないだけだ。問題というのは解答者の事など顧みずに、襲ってくるものだ。だから決めるならば、今しかない。

 俺は…


 “永遠”を選ぶ――


 ******


 廃れた屋敷の一室。天井は穴があき、床も穴だらけ。

 そんな一室に、色神妖偽(しきがみようぎ)は腹部を包帯で巻かれて、寝ている。横には糸器神佐矢(しきがみさや)が患部にさわりながら、治療をしている。その瞳はとても明るい黄緑色だ。

 色神の瞼が動き、目を開く。

「もう暫くお待ちください。間もなく動けるようになります」

 そんな言葉に、妖偽はやるせなさそうに視線を、穴のあいた天井へと向ける。

「私は…殺し損ねたのね…あの女を…」

 復讐を果たせなかった。仇討をすることができなかった…。

 彼を、彼を残酷なまでに殺した、あの家系の人間を。チャンスはあれしかなかったはずなのに。

「はい、せめて契約の詠唱でもしてから、能力の制御を外すべきでしたね。無理矢理制御を解除するものですから、危うく自滅しかけたのですよ。それをあの二人が防いで回収したんです」

 狐のお面の二人か。あいつらの助けを借りる事になったとは、私も落ちたものだ…。

「それで私はこうして醜態を晒す羽目になったのね…」

「そういう問題ではありません。今のあなたは、厭人(あきと)さまの願望を叶えるのに必要な存在です。あなた一人の身体ではない事、そしてあなたが死ぬことの決定権はあなたにないことを自覚して下さい。」

 わかっている、私の身体は私のものではない。でも、それは血によって縛られているのは身体だけだ。心までは血で縛ることは出来ない。人形のように空っぽでいられるわけではない。

 この憎しみだけは、消し去ることができない…。

「さて、これで一様は治療が完了しました。包帯を取り替えますね」

 腹部の傷口から手を話して、包帯を外し始める。

「あのさ、佐矢」

「はい」

 妖偽の問いかけに短く答える。

「あんたって、憎んでいる人はいないのかしら?」

「いませんよ。基本的に私の家系は戦場へと赴くことはないので、誰かに殺された人はいません。後、救えない人にあってやるせなくなったこともありません。私は医者ですが、治療できないと判断した場合は、容赦なく切り捨てます。でないと、助けられる人が助けられないので」

 佐矢は明るい瞳をしながらも、その心は棘のように冷たい。人を助ける能力を持っていながら、人の存在については、道具程度にしか考えない。使える道具は何回も修理するが、修理できないほど壊れた道具は廃棄するのみ。

「私はね、武神家と分家の奴ら、特に神威家を恨んでいる」

「神威家ですか。あんな化物じみた家系を憎んでどうするのですか。勝ち目なんてありませんよ」

 その通りだ。確かに勝ち目なんかは無い。でも戦わなければ心まで死んでしまう。この憎しみ、憎悪は消え去ることはない。

「それは今日身を持って経験した」

 佐矢は包帯を解くのを一旦止めて、後の残った傷口を覗く。

「ということは、この傷は神威の者に付けられたものなのですか」

「その通りよ。一発殴られただけでこの傷。人間の身体って力さえあればあんなに吹き飛ぶものなのね」

 身体の一点を殴っただけで、あそこまで吹き飛ばす馬鹿力。

 それだけではなく、あの女は片手だけで、捻死を全て封じた。

 あれが一番信じられなかった。本当に計画性もない、只の強大な暴力だ。あんな理不尽な強さの存在に彼は殺されたのか…。

「昔ね、と言ってももう十七年も前の話し何だけれど、私には好きな人がいたの。まだ六歳だった私よりも七歳年上の少年。彼はとても強く才能に恵まれて、周囲からとても期待されていた。そんな彼は驕ることなく事も無く、とても優しかった。私には兄のように慕ってくれた。いつも遊んでくれて、神眼の力についても色々教えてくれたの」

 妖偽は両手を持ち上げて、その手のひらを見つめる。

「私の象徴でもある捻死も彼に教えてもらった、捻曲の使い方からヒントを得て開発したものなの。だから今の私があるのは、彼のおかげ。」

「そうだったんですか」

「でも、彼は私を庇って死んだの。二千十三年に起きた全面戦争の時に、私の前に神威家の男が現れた。そいつは、私を殺そうと近づいてきた。ご丁寧に名前まで名乗ってね。もう駄目だと思った。その時に彼が助けてくれたの。その時私はとても嬉しかった。こんな弱かった私でも、助けてくれたのだから。でも…彼は神威に勝てなかった。彼は才能があると言われていても、まだたったの十三歳で、実戦で神威と戦うには経験がなさすぎた。そして、私の前で無残に殺された…」

「それで復讐というわけですね」

 私は許さない。

 武神と神威を。

 神威水欺(かむいすいぎ)を絶対に許さない。

 だが、今の私では神威を殺すことはできない。これからもずっとあの、類い稀なる神眼を受け継いでいく家系には勝つことはできないだろう。

「だからと言って、一矢報いる事ができないのは、死んでも死にきれない…」

 何か、何かできないだろうか。神威家、武神家に対して何かできないだろうか…。

「あの少年を奪う事がやはり良いと思いますよ」

生上翔也(いけがみしょうや)か」

「はい。彼らは神威まで出してあの少年を救いだしました。だからこそ、あの少年を我が式神家の手に渡れば大きな痛手になるはず」

 確かに武神家は生上翔也に対して、かなり力を注いでいる。貴重な神成家の少女も使っていた。彼女の家系は二千十三年の戦争で、優秀な能力使いは全員死んでしまったのだ。よって彼女は現在の神成家における、唯一の分家としての役目を果たせる一人だ。

 その彼女を護衛として使用している。

 確かにこれはおかしい。

「それに、我々の手に渡れば、厭人さまの長き願望、式神家の研究がついに完成します」

「そういや、その研究っていうのは何なの?私はよくわからないのだけれど」

 佐矢は妖偽に新しい包帯を巻く作業を、一回止める。

「簡単に言えば、永遠の命です。式神家は何世代にもわたり神眼を研究し続け、永遠の命を求めました。ある時は神眼所持者の力を取り出そうとしとしたり、力がほとんど使われていない非所持者の力を回収したり…。しかし、いずれも上手くいきませんでした。しかも後者の研究をしている時に武神家に、研究内容を知られてしまい、あの戦争へと発展したのです」

 永遠の命か…。

 そんなものを手に入れてどうするのだろうか。どこかの悪役よろしく、世界征服でも企んでいるのだろうか。下らない…。

「式神家の研究は、研究することが目的です。それを使ってどうこうというのはありません。研究を行う事自体に、意味を見出しているのです」

 それで人間一度は求める永遠の命を研究しているのか。

「そんなもののために、あんな全世界をも巻き込んだ自爆をしたのか…」

「はい。科学技術の進歩を止めたのは、自分たちよりも研究を先取りされないためです。当時の科学技術の進歩レベルを考えると、我々よりも先に永遠の命の研究を達成できそうでしたからね」

 何か色々聞いているうちに、馬鹿らしくなってきてしまった。

 永遠の命なんて言う曖昧なものに、どうしてあんな沢山の命をかけたのだろうか。命を賭して行うものとは思えない…。

「そこら辺は私も同じように思いますね。でも本家の指示に従うのは、我々分家の務めです」

 そう、私は式神家分家六色神妖偽だ。本家の式神に逆らう事はできない。

「さて、一様はこれで動けるようになったかと思います」

「そう、ありがとう」

 妖偽は立ち上がり、外に出ていく。

「佐矢、これから運命というやつに逆らってみようと思うの」

「それはつまり、あの少年を殺すという事ですか」

「そうよ。佐矢の話を聞いてね、何か本家に従う事が馬鹿らしくなっちゃったの。だからね、あいつを殺すことによって終らせようと思うの」

「できると思っているのですか…」

 妖偽はゆっくりと首を横に振る。

 分家と本家はかつて血の契約で結ばれている。

 それは、決して本家を裏切ることはできない。取り消すことも決してできない。

「でも、いい加減血も薄れているはず。多少なりとも、逆らう事は出来るかもしれないわよ」

 太陽が高く上っている青空を見上げる。心なしかとても澄んで見える。

「それじゃいってくるわ」

「いってらっしゃい」

 佐矢はこれから運命に逆らおうとしている妖偽の背を見送った。


 ******


 翔也は蒼い刃を出現させた神器を構えながら座っている。

 心臓を狙うのに、服が邪魔なので上半身は裸だ。

「さて、どうしようか…」

 刃は蒼く強い光を放ちながら明滅している。これからこの刃を自分の心臓へと突き刺すわけだが…。

「絶対痛いだろうな…」

 内臓を、しかも身体の中で一番重要な部分であろう場所を、一突きに刺さなければならないのだ。一回で成功しなければ、肺を貫通させることになって、痛いだけだ。一回で成功させたいところだ…。

 刃渡り一メートルもあるナイフを自分に向けて構える。

 深呼吸を繰り返す。緊張のあまり、額から大粒の汗が出る。呼吸は荒い。

 もう一度、永劫の覚醒、永遠の命を選択したのかを考える…。

 

 俺は今まで守られているばっかりだった。朱鳥や梓に命を賭けてまで、守ってもらった。そしてその二人は今、眠っている。朱鳥派いつ目覚めるのか未だにわからない。梓は大きな深手を負ってしまって、回復までに長期の時間がかかる。

 このまま中途半端な状態では、何もできない。せめて命の失う事のない身体を手に入れる事により、自分も戦う。

式神厭人を倒す――

 その前に、梓をあそこまで、子どもが産めなくなるまでした、妖偽を倒さなくてはいけない。これは俺の決意だ。


決断だ!――


 俺は神器の刃を心臓へと狙いを定めて、突き刺す。

 身体中に激痛が走る。

「ぐ…」

 更に深く突き刺す。体を貫通させるまで突き刺す。

 絶対に成功しなければならない。

 身体から溢れ出た血液は、身体を伝って下の畳へと垂れていく。

「うおおおおおおおおおおおお!」

 サクッという音と共に、俺の背中ら刃が突き出る。瞬間視界が大きく揺らぐ。

 視界には見たことのない文字が目一杯映る。それは眼から出ていき、身体中を包み込もうとしていく。数秒後には全身を、沢山の文字が駆け巡る。

 持っていたナイフの柄から手が離れ、刃が消える。ただの短いナイフとなった神器は、ピチャっという音を立てて、俺の血の池に落ちる。

「あ…ぐ…クソッ…」

 眼が熱い。

 身体中を熱さが満たして行く。

 そして蒼い光が部屋を包み込む。

「ぐ…う…」

 何度も雄叫びをあげない様に堪え様とするが、眼の激痛は増すばかりで、耐えられそうにない。

「う…あ…あ…ああ…」

 眼を手の平で覆う。

 数秒後身体に変化が起き始める。心臓に付けられた傷が凄い速さで、閉じられていく。

「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 最後に大きく叫び、俺の意識は途絶えてしまった。


 ゆっくりと視界が開ける。

 頬には生温かい液体の感触。

 どうやら、激痛のあまり意識が飛んでしまったようだ。ゆっくりと身体を起こす。

 眼に意識を集中してみる。蒼い光が周囲を照らす。どうやら上手くいったようだ。

「全く、あなたという人はどうして畳を汚すんですか」

 いつの間にか弌人(いちと)さんが立っていた。

「やるからには場所というものを選んで頂きたいものです。これは好感するしかありませんね…」

 溜息をついて心底呆れているようだ。

「あの…すいません…」

「いえ、大丈夫です。にしても決断されたんですね」

「はい…」

「ならばあなたにはそれ相応の神器を渡しましょう。その様な式神の神器では心もとないでしょうし」

 そう言って弌人さんは、大きさが五十センチメートル位の剣を差し出してきた。

「これは、蒼き眼の所有者のための武器です。かつて此処の町に蒼き眼を持つ少年がいましてね。彼が置いて行ったものです。故に名前はわかりませんが、重くも無く使いやすいはずです」

 俺はその剣を受け取る。鞘から取り出して、刃を良く見る。

 剣には何やら文字が刻まれていた。刃の色は薄い蒼色で長さは三十センチメートルくらいだろうか。片手で持てる大きさである。かなり扱いやすそうだ。

「ありがとうございます」

 それをもう一度鞘にしまい、立ち上がる。

「復讐ですか?」

「はい」

「そうですか」

 暫く間が空く。

「では、お気を付けて」

「はい」

 俺は部屋を出て、武神家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ