表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLUE EYE―碧き眼―  作者: 斬谷恭平
第一章【蒼の章】
16/39

1-16 医者には従え

 翌朝眼がさめると体から激痛は無くなっていた。どうやら無事完治したようだ。呪も半分解けているようだから回復速度も速いのだろう。

 ベッドから起き上がり弎塑稀さんを探す。すると医務室の扉が開いて手にコーヒーカップを持ちながら入ってきた。

「あら、翔也くん起きたんだね。んじゃこれから送りに行くよ。」

 持ってきたコーヒーカップを机の上に置き再び扉へと向かう。俺も昨晩受け取った薬を持ってその後を付いて行く。序に道順を覚えようと頑張ってみたが、上手くいかなかった。どうやら侵入者対策のためだろうか、巧みに迷いやすい構造になっているようだ。

「そう言えば弍昃さんは大丈夫なんですか?」

 昨日の医務室では見なかった。奥の集中治療室にもいないようだしどこにいるのだろうか。

「弍昃は結構重傷でね。別の部屋で私が直接治療しているの。今日も早朝に治療しに行ったんだ。それで休憩ついでにと、君たちの様子を見に一旦医務室に戻ったんだ。」

「そんな重傷何ですか…」

「久しぶりに遊び過ぎたって笑ってたね。あんな怪我をして良く笑える余裕があるもんだよ。」

 こっている肩を叩きながら溜息をつく。弍昃さんは相変わらずのようで少し安心した。

 数分後に俺が泊らせてもらっている部屋の扉に到着した。

「それじゃ次からは気を付けてね。必ず梓と一緒に行動するようにした方が君のためだよ。この屋敷には獅護神(しのごせ)の幻覚よりも危険なもので溢れているからね。身体の回復が早いとはいえ怪我はしない方が良いでしょ。」

 それじゃ、と右手をヒラヒラさせながら踵を返して廊下の向こう側へと消えていった。

 部屋をノックする。

「梓、入るよ。」

 鍵の掛かっていないドアを開ける。

 部屋の中に入ってみるとそこでは梓が布団も敷かずに畳の上で倒れこむように寝ていた。とても心地良い寝息を立てていた。薬の副作用で興奮していたせいか体力を消耗してしまったのだろう。

 しゃがんで寝顔を覗いてみると、とてもかわいかった。この子身体のラインも完璧だし顔も整っているから、こうやって見ると結構かわいい。しかし、こんな綺麗で顔には何かしたくなる。ちょっとした悪戯心というやつだ。昨日の夜は朱鳥の事で色々突っ込まれてしまったからその仕返しだ。

 部屋を少し見渡す。机の上に何故かマジックが置いてあった。何という偶然。これは天命としか言いようがないだろう。それを手に取りキャップを外す。書く前に頭の中にイメージを描く。どのようにしたら面白い顔になるのだろうか。

 考える事十何秒。

 早速ペンをその柔らかい肌に押し付けて書いて行く。これだけ書いてもまだ起きない。かなり眠りは深いようだ。額から頬まで余すところなくペンを走らせていく。

よし、できた―

 完成した作品をまじまじと見つめる。我ながら上出来だ。この顔なら誰も文句を言わずに笑ってくれるに違いない。現にこの俺が笑いを抑えるのにかなり苦労している。

 そんな違和感にやと気付いたのだろうか。梓が眼をさました。

「あれ、翔也さん。おはようございます…。」

 眠たそうな目を擦りながら身体を起こす。そこで笑いを必死に抑えている俺の姿に気付いたのか頭に疑問符を浮かべて首を傾ける。

「あのー、何が面白いんですか?」

 俺はとうとう笑いを抑えきれなくなって、笑い出してしまった。俺の爆笑に益々顔を疑問符で埋め尽くして行く梓。

「もー、何が何だか分からないです。ではちょっと顔を洗ってきますね。」

 そうして部屋に備え付けられた洗面所に向かって行く。

「きゃあああああああああ!ああああああああああ?あははははははははははははははは」

 洗面所に入った瞬間最初は悲鳴だった声が次第に爆笑に変わっていった。

 どうやら梓本人も自分の顔が可笑しかったようだ。腹を抱えながら涙目で洗面所から這い出て来る。

「ちょっと、翔也さん!何ですかこれ!」

 指で自分の顔を指しながら笑いを抑えようと必死だ。

 こうして今日の朝は俺と梓の爆笑の渦から始まったのだった。


 ******


 梓と朝食を食べた後に弎塑稀さんから預かっていた薬を渡す。

「ありがとうございます。これで昨日みたいなことにはならずに済むんですね。良かった…。正直昨日のあれは体力的にもキツイです。」

 昨日の異常なテンションは本人も大変だったようだ。確かにあの状態が何時間も続けば無駄に体力を消費するのは当然だ。

「でも、人間ってあそこまで興奮することできるんだな。ビックリしたよ。」

「え、そうなんですか?あれ位なら宴会にでも出れば普通に一人や二人いますよ。」

 酒の力がなせる技か。人間の限界というのは酒でも達することができるのか。流石何千年も愛されているだけはあるな。

 さて今日は何をする予定だったかを此処で思い出した。この家にいる分家の人達と顔合わせをしておきたいのだ。でないと昨日の夜みたいに殺されてしまいかねない。命を守るためにも絶対に必要だ。

「梓、この家には分家の人が何人いるんだ?」

「えーとですね、今のところは分家十全ているはずです。翔也さんは昔あったことないんですか?」

「俺は何度か遊びに来ているから会っているのかもしれないけれど名前は知らないんだよな。」

 朱鳥の家には昔何度か遊びに来たことはある。ただその時は俺もまだまだ幼かったから会っていたとしても覚えていないし名前なんて全く記憶にない。この家に分家が十あるというのは朱鳥から聞いていたが、それぞれの名前は聞いたことがない。今のところ知っているのもまだ神成(かんなり)獅護神(そのごせ)仁居神(にいがみ)神威(かむい)だけだ。他に六つもあるのか。

「翔也さん神威家を知っているんですか。また何でそんな一番レアな名前を。」

 昨日の夜の(かざり)さんと交わした会話を梓に話す。

「式神家の分家のことまで話したんですか。私も式神家分家を名乗る敵と会ったことも無いのでわからないです。でも此処数日中に相対することになるんでしょうね。気をひきしめなくっちゃ!」

 ガッツポーズを決めて腕を高々と上げる。確かに俺の護衛をしているのだから式神家分家と相対することになるだろう。式神の狙いが俺である以上式神家分家を総動員させて狙いに来るのは間違いないだろう。

「それで此処の分家の人とできるだけ会いたいんだけど。」

「あ、そうなんですか。ではまず獅護神家に会いに行きますか?あちらも謝罪したいかもしれませんし。それに獅護神には私の親しい友人がいるんです。最近なっていなかったから会いたいですし。」

「じゃ決まりだな。」

 梓と一緒に部屋を出て長い廊下を歩いて行く。暫く歩いた後にあの障子が長く続く廊下に到着した。改めてみると本当に廊下の先が霞むくらいの距離まで全部障子だ。見ているだけで吸い込まれそうになる。

「あんまり見ない方が良いですよ。でないと幻覚に掛かっちゃってまた倒れすますよ。」

 そう言いながら梓は前を見ず下だけ見て歩を進めていく。

「一、二、三、四、五!」

 数えながら五歩進んだところで立ち止まる。そして右手側にある障子に身体の向きを変える。

「此処は決められた手順を踏まないと幻覚に掛かるようになっているんです。」

「そうなのか、んじゃ俺もやった方が良いのか?」

「はい。」

 俺は下を向きながら梓と同じように数を数える。

「一、二、三、四、五。」

 そうして身体の向きを変えて右手側の障子を見る。すると見ていた景色に変化が現れた。徐々に長く見えていた廊下がその距離を縮め初めて、直ぐ先に右に折れている廊下も出現した。長く続いていた障子もその数が一気に減る。霞んでいた景色が全て元通りになった。どうやらこれが本来あるべき姿のようだ。

「では、夢弓(むゆみ)ちゃーん!梓だよ。開けて良い?」

 目の前にある障子に向かって名前を呼び掛ける。しばし数秒後に声が返ってくる。

「はい…大丈夫…です…。」

 今にも消えてしまいそうな返事が部屋の中から聞こえてきた。梓は障子を開けて部屋の中に入っていく。俺もその後に続く。

 部屋の中はも広めに作られている。床は勿論畳である。その畳三畳ほど離れた所に着物を着た少女が座布団の上に小さく座っていた。着物の色は赤を基調とした花柄、髪はそこまで長くなく綺麗に切りそろえられている。

「久しぶりだねー夢弓ちゃん。元気にしてた?」

「はい…梓さんも…元気で…何より…です…。」

 顔を髪に隠すように上げない。あまり人と話すことになれていないのだろうか。昨日そのような子の所に部外者である俺が近づいてしまったのは自業自得かもしれない。

「こちら、今は私の(あるじ)の翔也さん。何か昨日夢弓ちゃんの罠にかかっちゃったみたいで倒れたみたいなんだ。」

「あ…昨日の…。その…ごめんなさい…。」

 隠していた顔をより一層隠して謝る。その謝り方だと何故か俺の中に罪悪感がヒシヒシと湧いてくる。いやま実際俺にも原因があるのだから当然なのかもしれないけど。でも釈然としないな…。

「謝らなくても良いよ。勝手に家の中を歩き回って君のところに来ちゃったみたいだから。」

「全く、駄目ですよ翔也さん。」

 お前のせいだ、とつっこみを入れておく。

「そして翔也さん、此方は獅護神夢弓(しのごせむゆみ)ちゃん。今年で九才だったけ?」

「…はい。」

 小さくうなずく。この子の動きは声も動作も含めて全て小さいようだ。

「ちょっと人見知りが激しんだ。でも、獅護神家の中で一番力の強い子どもなんだ。」

「…そんな…強くないよ…。まだまだ…修行中…。」

 こんな小さな子があのような不気味な幻覚を見せているのかと思うと信じられない。獅護神家一番というだけはあるのだろう。だからこそ武神家に居るのかもしれない。修行中のようだし。

「今は暇?」

「はい…次の修行は…夕方…だから…大丈夫…です。」

「それじゃおしゃべりしよう!」

 こうして梓があっという間にお茶の準備をしてしまった。和菓子と緑茶が俺たちの前に揃えられた。

「そう言えば夢弓ちゃんは何色なの?」

「その…私は…混色系の…朱紫です…。」

「混色系…?」

 はて、初めて聞いた名前だな。

「目の色には純色系と混色系があるんです。混色というのは色々な色が組み合わさっているものです。確か五色の能力もあったような…。純色系は単色何です。私のような紫ですね。」

 五色もあるのか…。覚えるのがとても大変そうだ。つまり色の組み合わせの分だけ能力があるのか。

 想像以上に能力の種類は多いんようだ。

「どちらが強いという事は無くて性質上単純に区別されているのです。寧ろ強さで言えば朱、蒼、翠の三色最強と言えるかもしれません。」

 朱、蒼、翠か…。つまり俺はその中の一つに当てはまることになるのか。

「朱は御存じの通り炎系統です。翠は言霊ですね。私はまだあったことないのですが何でもそうそう会える人たちじゃないそうですよ。」

 言霊使いに啓祐兄さんは会ったことあるのだろうか。確か知っている能力として上げていたような。

「そして蒼何ですが、これが一番珍しいみたいです。何せ色が一緒なのに能力の種類が一人一人違うんですよ。だから所持者と相対しても刃を交えるまでは手の内がわからないんです。どんな能力よりも厄介ですよ。」

「それじゃ何で俺のは永劫ってわかったんだ?」

「それは観察眼の能力の人が見てくれたんだと思います。うちの分家には観察眼の所持者はいなかったので他から呼んだんだのかと。」

 それじゃその観察眼の人は俺にとって恩人か。産まれて直ぐに俺の持っている能力を識別して赭攣さんに封印してもらって…。一様は死ねるような身体にしてくれたのだから。一体誰なのだろうか。

「因みに観察眼は蒼です。」

「え、そうなの?」

「偵察役としては結構強いですね。眼で見なくとも感覚でどこにどの能力者がいるかピンポイントでわかるみたいです。探索範囲は人それぞれみたいですか強い人になると半径三十キロメートル以内ならわかるそうですよ。」

 半径三十キロメートルというと一体どれくらいの距離なのだろうか。すくなくとも幾つかの町はその範囲内に入るだろう。

「因みに偵察でいえば内の分家では神琥(かんく)家ですかね。今日って此処にいるかな?」

「それは…わからない…です。」

 透視できるやつもいたのか。

「そっかー。それじゃ後で会いに行くかな。」

「というか透視って何か嫌だな。何処にいても見つかっちゃうんだろう。覗きしほうだいじゃないか。」

 透視なのだからその能力は壁とか何て見透かしてしまうのだろう。未だにプライバシーが騒がれているこの時代に、そんなものはないのも同然になる力だな。

「大丈夫ですよ。透視能力が使えるからこそ、神琥家ではそこら辺のモラルはしっかりしているようですし。それに昨日私たちを回収してくるように判断したのは神琥家の人みたいですよ。」

 そうだったのか。ならば会った時には感謝しないといけないな。

「あの…」

 夢弓ちゃんが小さい声で話しかけてきた。そういえばすっかり夢弓ちゃんを置いて行ってしまっていたような…。

「おい、梓。何か夢弓ちゃんが会話に加われるような話しないのか?」

「あ、そうですね。うーんと…。」

 考え込んでしまう梓。仕方なく俺が会話を繋げていくことにした。

「夢弓ちゃんは何処の生まれなの?」

「秋田…です。実家は…そこに…あり…ます。」

 実家という事は一人でこの武神家に来ているのだろうか。

 九歳なのに頑張っているな。まだ小さいから不安だろうに。

「いえ…でも…私…能力が…安定しないから…此処にいないと…他の人を…。」

 なるほど。確かにあれ程の幻覚が制御しきれていないのは危険なのかもしれない。ただ自分がそこにいるだけで他の人が幻覚に掛かってしまうのは嫌だろう。

「でも最近は大分制御できるようになったよね。最初の頃は赭攣(しづる)さましか長時間一緒に居られなかったのに今じゃこうしてお話しできるし。」

「へー、頑張ったんだな。」

「赭攣さまの…おかげ…です…。」

 赭攣さんはあの幻覚にも耐えられるのか。流石だ。俺だったらあのまま死んでいたみたいだし。

 ん、そう言えば今は瞳の色が変わっていないのに何故廊下には幻覚が働いていたのだろうか。

「今は…能力を…抑えるための…薬を…飲んで…いるんです…。」

 そう言いながら眼に手を当てる。

「こうしないと…勝手に…発動…しちゃうんです…。薬の副作用で…今は…眼の色が…変わらない…んです。」

 弎塑稀さん特製の薬らしい。

「弎塑稀さんって凄いよね。私たちの治療を完璧にしてくれるんだよ。昨日あれだけの疲労だったのに私もこうやって回復しているし。だからこそ、ここの医務室に雇われたんだね。」

「私も…凄く…嬉しい…。」

 夢弓ちゃんはニッコリと笑顔を見せる。髪に隠れてしまって良く見えないがこの子の笑顔も結構かわいい。

「そういえば夢弓ちゃんは後どれくらい此処にいる予定なの?」

「後…一年…くらい…かな…。修行が…終ったら…また…実家に…戻る…。」

「そっかー」

 うんうんと頷く梓。

「それじゃこれからも一緒に頑張ろうね!」

「はい…。」

 元気よく頷く夢弓ちゃんだった。

 それから暫く三十分位だっただろうか。三人で他愛もない雑談を楽しんだ。

 夢弓ちゃんはあまり言葉を発することはなかったが、梓がそれをフォローしながら話を盛り上げていってくれた。梓の性格だからこそできることなのだろう。しかし、良く口が動くものだ。

「それじゃ、そろそろ次行きましょうか。」

「そうだな。」

 丁度会話の区切りが良かったところだ。

「また…遊びに…来て…下さい…。」

 少しだけ頭を下げて笑顔を見せる。

 俺と梓は立ち上がり障子を開けて部屋から出る。さて次は誰に会いに行くのだろうか。

「さて、次はどうしましょうか。先程の会話に出た神琥家の誰かでも会いますか?今は誰がいるのかな。」

「ん、常駐しているわけじゃないのか?」

「はい。一様分家の一人の誰かが必ず此処に居るように定められています。ただ固定ではないので分家によりますが、数カ月単位で交代したりしています。私はもう二年目になりますが。」

 二年間も何故いるのだろうか。一族から省かれているのだろうか…。

「単純に交代できる人がいないんです。この重力の力は制御が難しんですよ。まともに使えるのは私だけです。」

「そうなのか。だとするとお前はかなり優秀なんだな。」

「えへへへ。誉めたって何も出ませんよ!」

 顔を赤らめて手をヒラヒラさせている。かなり照れているようだ。隠そうとしても感情が直ぐに表情に表れるので凄くわかりやすい子だ。

 暫く話しながら廊下を歩いて行く。

 しかし相変わらず此処の廊下は薄暗い。何故明かりを灯さないのだろうか。廊下にはこれといった特徴があるわけではないので今自分が何処にいるのかもわからない。窓も所々しかないため今の時間は時計でしか判断することができない。

 曲がり角に迫った時に横から人とぶつかりそうになった。

「お、梓と翔也くんか久しぶりだねフフッ。」

「師匠!」

 そう言って驚いて飛び上がる梓。一方の弍昃さんは松葉づえを付いており所々服から包帯が見え隠れしている。目にも眼帯をしておりどう見ても重症である。

「弍昃さん、もう歩けるようになったんですね。」

「ああ、弎塑稀のおかげだよ。あいつは医者としてはとても優秀だからな。」

 弎塑稀さんはかなり頑張ったようだ。

「では師匠はもう大丈夫なんですか!?」

「フフッ、大丈夫だよ…ゴフッ。」

「!?」

「!?」

 弍昃さんは咳と共に吐血して、倒れた。

「弍昃さん!」

「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 倒れても吐血を続ける弍昃さん。既に意識は失っているようだ。

「運ぶぞ梓!」

「はい!」

 急いで弍昃さんを二人で持ち上げる。でもかなり重い…。鉄の塊を持ち上げているようだった。

「おい、梓。弍昃さん何でこんな重いんだよ…。」

「師匠は体内に武器をもているんです。だから、こんな、重いんです。よいしょ!」

 だそうだ。どれだけ重い武器なのだろうか。しかも体内に隠すって弍昃さんの身体は一体どうなっているのだろうか。

 「梓の重力で運べないのか?」

 「無理です。運んだら師匠を潰しちゃうかもしれません。手負いなのに留めさしちゃいますよ…。」

 梓の重力は操作が難しいそうだからそりゃそうか。

 長い廊下を一緒に歩きながら数分後。やっと医務室に到着することができた。

 しかし医務室の様子がおかしい。中からただならぬ殺気があふれ出ている。

「あ、梓…。これは一体…?」

「弎塑稀さんが怒っているのかもしれません…。」

 梓は扉の方を見ながら身体を震わせている。

 弎塑稀さんが起こっている原因。それはどう考えても俺と梓が抱えてるこの人以外にいないだろう。全く迷惑な人だ…。

 ドアをノックする。直ぐにドアがゆっくりと開く。

 中からは白衣を着た悪魔が…。

『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』

 俺と梓は二人してみっともない悲鳴を上げてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ