生き残り。
「うぅぅぅぅみぃっぃぃぃい!!!」
キャーッとはしゃぎながら海に飛び込むのは、私、言波 海音。
幼稚な事は自覚してます、えぇ。
でもね、季節は灼熱の太陽がその存在を暑苦しいくらいに主張する夏!
目の前に海があったら叫びたくもなると思わない??
鬱陶しいサンダルを脱ぎ捨てて、私はあっつあつの砂浜を駆け出す。
目指すは青い海!!!海音、海をロックオンしました!!
突撃ぃぃぃぃぃぃぃいい!!!
バシャバシャと海の中に勢いよく駆け込んだ私は、適度な深さのあるところに辿り着き、ジャボンと潜水を開始した。
運動音痴で、破滅的な運動神経を持つ私が唯一まともに出来る運動が水泳。
というか多分、人並みより少し上くらいには出来るんじゃないかな??あ、コレ自画自賛??
まぁ、ともかく。私は泳ぐのがうまい。人並よりちょい上くらいだとも思ってる。
でも、ねぇ・・・???私こんなに泳ぐの速かったっけ??と思うくらいには自分の力を勘違いしてないと思うの。
気付いたのは海面から顔を出した時だったと思う。そう、泳いでる間は全く気付かなかったのよ、ウン。
で、なんとなーく海面から顔を出したら・・・・、砂浜が無い。
見渡す限り海海海。アレ?陸地は何処行った?なノリで。
おかしいな~、そんなに泳いだ気もしなかったんだけど、気付かない内に随分沖に出てきちゃったのかな??
ぷかぷか浮きながら首を傾げつつ、私は「さてどうしようかな?」と思う。
陸が見えないのだ。帰るべき方向が分からない、用は迷子。笑えるー・・・
自分がどっちから泳いできたかとかもさっぱり分からない。
これは遭難決定だなー、せめて死体は見つけて欲しいな。等と若干現実逃避をしつつポチャンと海の中に潜りなおしてみる。
眼下に広がるのは、美しい光景。熱帯魚とかなんか良く分からない光の球とかが一杯に広がっている。
はて、日本の海水浴場の近くの海ってこんなんだっけ??
しかもなんか、どんだけ潜ってても苦しくないんだけど。私肺呼吸する生き物だったよね?
試しに首元に手を当てて見ても鰓はなかった。なんかちょっとほっとした。
で、今更ながらに自分の姿がなんか変わっている事に気がついた。
髪が超ロングなウェーブしてる金髪になってるし、肌はヨーロッパの人みたいに真っ白。あれ?私生粋の日本人だったハズなのに?
で、着てたはずのシンプルなビキニはなんか華やかなのにかわってるし。
でも一番の衝撃はバストのボリューム!・・・じゃなかった。足だ。
私の足は、・・・・なんというか、立派なお魚さんになっていた。
色は鮮やかな虹色。光を反射して鱗がきらきらしてる。
ヒレはあれだ、高い金魚のやつみたいな感じ。ひらっひらの薄々。
おかしい。激しくおかしいはずなのに、なんか楽しい。ハイテンションな自分がいる。
「おぉ、マーメイドじゃん。」
などと見当違いな事をいうアタシ。
何所か夢見がちな性質だった私だ。こんなの簡単に許容できる。というか寧ろ、大歓迎だ!!
お父さん、お母さん。ごめんなさい。娘はこれから、人魚として生きていきます。
海で行方不明・・・って思われてしまうかもしれないけど、もういっそそれでもいい!!
薄情な娘でごめんなさい。ここで、精いっぱい謝るから許してね!!
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さて。人魚として生きる事を決めた私ですが、困った事に何をすればいいのかがサッパリ謎であります。
人魚って何食べるの?てか私以外に知的生命体はいないの??おしゃべり!誰かお喋りしませんかー!!
すいすいと泳ぎながら、探してみるも近づいてくるのはお魚さんやら鮫さんばかり。
いや、この子たちも一応喋れるし懐いてくれてはいるんだけども。カタコト&単語のみの会話って物足りないじゃない??
『ドコ?』
『ドコ イク?』
そう話しかけてくる子達に「どこだろうね~」と誤魔化しつつ、私はもう一度海面に顔を出す。
ピチャンピチャン跳ねる魚をしり目にグルリと辺りを見渡してもそこには海しか無くて。
いっそ、陸近くまで行けば人には会えるんじゃないかなとは思ったけど、そこはそれ。自分の異様さがどれほどのものか計り知れなかったので止めておいた。
安易に浜辺に近づいて捕獲されるなんて冗談じゃないからね。解剖とか断固拒否!
暇だ。激しく暇だ。何もすることが無いと人はこんなに苦しいのか。
仰向け状態で空をぼんやりと眺めながら、話しかけてくる魚達の相手をしていたらふと空を影が横切った。
鳥???
波に揺られながら影を見つめる私。小魚達は『アッ』とか『ア!』とか言うばかりで答えをくれない。
空虚な目でその影を追っていると、その影は上空を旋回してゆっくりと大きくなっていった。
うん??近づいてきてる?
と思った時にはそれはもう目視できる程の距離まで降りて来ていて。
・・・・・ドラゴンだ。それも真っ黒なヤツ。
吃驚するくらい巨大なその身体を空中に留めたソイツは、蝙蝠みたいな翼を広げて私の目の前に居る。
なんつーか、人魚を見た後(自分だけど)だったからそこまでの驚きは無かった。
人魚がいるんだからドラゴンくらいいるよねーみたいな感覚。
「えーと、こんにちわ??」
もとの私とは似ても似つかない澄んだ声で話しかけてみる。
捕食する為にこのドラゴンが降りて来たんだったら何とも間抜けな挨拶だけど、なんとなく相手の目に知性があるような気がして。
『・・・スィーウィの生き残りがまだ存在していたとは。初めまして、海の歌姫。』
案の定、とても賢そうなイケメンボイスが帰ってきた、ひゃっほう!第一知的生物発見!
「初めまして。黒き空の王者様」
あまりにも嬉しくて嬉々としてドラゴンに微笑むとほぅ。とドラゴンは感心したように笑った。
かっくいー!
しかし、彼の言葉には聞きなれないものが沢山あった。
スィーウィってナニ??
「黒き御方、私は気がついたらここに居た身ゆえ物事を全く知らないのです。どうかスィーウィの意味をお教え下さいませんか??」
『何?記憶が無いと?』
「はい。気がついたらここに。自分の名前以外は何も覚えていないのです。」
堅苦しい言葉を意識してみた。おぉぉぉ、舌噛みそうだ!
しかも適度な嘘をついてみたり。ふふん、こう言うのは小説とかでの常とう手段って私知ってるんだから!
『なるほど、不憫な身だな。スィーウィとは、そなたの様な海に住む今は滅びたとされている半分をヒト、半分を魚の様な姿をした美しい種族の事だ。』
彼曰く、スィーウィは心優しい種族でヒトに散々利用され尽くされ滅んでしまったと伝えられているんだとか。
魔力が強く、精霊に愛される素晴らしく美しい種族。それがスィーウィ。
その歌声は神懸かりらしい。へー、と思わず他人事のように聞いてしまった。
「つまり、私がその生き残りだと?」
『そうなるな。』
な ん て こ と !
そんな神秘的な生き物に自分がなっているだなんて誰が思う?私が、スィーウィ??性格的にないわー・・・・。
『その様子では本当に知らないようだな。ほんに不憫な子だ。』
「はぁ・・・・」
がっくり項垂れる私を見て、ドラゴンさんはポツリと呟いた。しみじみと不憫な子と言われてしまった私はと言えば溜息しか出ない。
『ふむ。・・・・そなたに我の真名を授けよう。』
「真名??」
『そうだ。お主を我は気に入った。スィーウィの使い魔となるのも面白そうだ。』
「使い魔!?」
なんだなんだ、この超展開は!使い魔!?このかっくいードラゴンさんが!?
「我が身に余ります!そのような事は・・・」
『気にするな。我が名はクロノリウス。お主が呼べば馳せ参じようぞ』
ちょっ、聞け!人の話を聞け!!
知ってるぞ!小説の知識だけど、真名がどんだけ重要なものかくらいは私も知ってるぞ!!
そんなヒョイッと他人に教えていいモノじゃないだろうが!
戸惑う私を尻目に、ドラゴンさん改め、クロノリウスは満足そうに笑うだけ。
このマイペースドラゴンめ!
「では、私の名を聞いていただけませんか??クロノリウス様程立派な名ではありませんが・・・」
『様などいらぬ。我はそなたの使い魔ゆえ。では教えていただけるか?貴女の大切な名を』
名前。私の名前は・・・・
「コトミオと申します。」
・・・・流石にモロ日本語な名前を言う勇気はありませんでした。
読んでいただきありがとうございました。
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