BRAND NEW ERA
初めまして。
本作を読んでいただきありがとうございます。
本作は、物語の構想や設定を自分で考え、文章の作成・推敲などにAIを活用しながら制作しています。
荒廃した世界を舞台にした、SF・ミリタリー作品です。
少しずつ物語を描いていければと思います。
それでは、第一話をお楽しみください。
# 第一話 衛士候補生
爆発音が響いた。
遅れて、地面が揺れる。
崩れかけた建物の窓から黒煙が吹き出し、道路に散乱した瓦礫が砲撃の衝撃で跳ね上がった。
遠くでは、巨大な人型機動兵器が二機、互いに向けて銃口を構えている。
発砲。
光が走り、一機の装甲が弾け飛んだ。
倒れた機体の陰から兵士が飛び出す。負傷した仲間を引きずり、崩れた壁の裏へと身を隠した。
誰も立ち止まらない。
誰も空を見上げない。
砲撃が続くことも、隣にいた人間が次の瞬間には動かなくなることも、この場所では珍しいことではなかった。
戦争が始まって、何年になるだろうか。
もう、それを正確に答えられる人間も少なくなっていた。
この世界では、戦争は終わるものではなく、続いていくものだった。
*
午前六時。
けたたましい電子音が、狭い部屋に鳴り響いた。
ベッドの上で横になっていた青年は、枕元の端末を手探りでつかみ、アラームを止める。
しばらく天井を見つめたあと、ゆっくりと上半身を起こした。
十八歳。
衛士候補生。
それが、今の彼の身分だった。
窓の外には、軍施設の敷地が広がっている。整備用の格納庫、訓練用の演習場、兵員輸送車の駐車区画。どれも無駄な装飾はなく、必要なものだけが並んでいた。
遠くの空には、輸送機が一機飛んでいる。
ここから見える景色に、特別なものはない。
彼にとっても、見慣れた光景だった。
顔を洗い、軍服に袖を通す。胸元の候補生章を確認し、ベッドの端に置いていた端末を手に取った。
通知は二件。
一件は訓練予定の変更。もう一件は、配給食の受け取り時間についての連絡だった。
どちらも、いつも通りの内容だった。
彼は端末をしまい、部屋を後にした。
*
食堂には、すでに何人かの候補生が集まっていた。
「おはよう」
声をかけられ、彼は軽く手を上げる。
「今日が最後の試験だっけ?」
「ああ。午前中に終わる予定」
「いいな。俺なんか昨日の試験で操作ミスを指摘されたぞ」
「なら、今日は気をつけろよ」
「分かってるって」
向かいの席に座った候補生が、配給された食事を口に運ぶ。
会話の内容は、試験のことばかりだった。
候補生たちは全員、十八歳前後。幼い頃から戦争が続く環境で育ち、軍への入隊を特別なものとして考えていない者も多い。
十五歳になれば徴兵の対象となる。
それが、この国の決まりだった。
戦場に出ることを拒めば、臆病者と呼ばれる。負傷して帰還した者でさえ、戦えなくなったという理由で非国民と蔑まれることがある。
生き残ることと、国に認められること。
この世界では、その二つが必ずしも一致するわけではなかった。
「なあ、お前は試験に受かったら何に乗りたい?」
向かいの候補生が尋ねた。
「何にって?」
「機体だよ。やっぱり戦闘型だろ? 最新型とか乗ってみたくないか?」
「別に。乗れるなら何でもいい」
「相変わらずだな」
彼は食事を続けた。
機体に憧れがないわけではない。だが、最新型に乗りたいとか、敵を倒したいとか、そういうことを考えたことはほとんどなかった。
彼が望んでいるのは、ただ一つ。
生きて帰ること。
それ以上の目標を持つ余裕はなかった。
*
午前八時。
候補生たちは演習場に集められた。
そこには、複数の人型機動兵器が並んでいる。全高は数メートル。人間に似た輪郭を持ちながら、その身体は装甲と機械部品で構成されていた。
操縦席は胴体部分にあり、搭乗者は内部の操作装置を使って機体を動かす。
戦闘型の機体には火器や追加装甲が取り付けられている。隣に並ぶ訓練用の機体には、それらの装備はない。
「本日の試験は、基本操作の最終確認だ」
教官の声が演習場に響いた。
「歩行、姿勢制御、障害物の通過、指定地点への移動。これまでの訓練で行った内容を繰り返す。特別なことをする必要はない。指示通りに動かせ」
候補生たちがそれぞれの機体へ向かう。
彼も搭乗口を開き、操縦席へと身体を滑り込ませた。
ハッチが閉まる。
外の音が遠のき、視界の前に各種情報が表示された。
『システム起動。操縦者認証、正常』
機体の各部が駆動し、低い振動が座席を伝わる。
彼は操縦桿を握った。
「こちら、準備完了」
『確認。試験を開始する』
機体が一歩、前へ進む。
最初の課題は直線歩行だった。続いて、指定された障害物を避けながら進み、狭い通路を通過する。
最後は姿勢制御。片脚に負荷をかけた状態で、一定時間姿勢を維持する試験だ。
難しい操作ではない。
しかし、機体の重量や関節の動きを正確に把握していなければ、わずかな操作のずれが大きな動作の乱れにつながる。
彼は一つずつ課題をこなしていった。
途中、足元の段差に気づくのが遅れ、機体の姿勢がわずかに傾いた。
『姿勢修正』
警告が表示される。
彼は操縦桿を戻し、重心を調整した。
機体は倒れることなく、再び歩き始めた。
試験終了の合図が鳴る。
『合格』
表示された文字を見て、彼は小さく息を吐いた。
*
正午過ぎ。
候補生たちは演習場の脇に整列していた。
その前に立っているのは、軍服の上から外套を羽織った男だった。
階級章は少佐。
年齢は四十代ほどだろうか。表情に大きな変化はなく、候補生たちを一人ずつ見渡している。
「全員、試験は合格だ」
短い言葉に、候補生たちの間で小さな安堵が広がった。
「ただし、これで一人前になったと思うな。お前たちはまだ候補生だ。実戦経験もなければ、現場で何が起こるのかも知らない」
少佐は一度言葉を切った。
「現在、前線では人員が不足している。候補生だからといって、いつまでも訓練施設に置いておく余裕はない」
候補生たちの表情が変わる。
「お前たちには、これから補給任務に参加してもらう」
ざわめきが起こった。
「補給任務……ですか?」
一人の候補生が尋ねる。
「そうだ。前線への物資輸送だ。燃料、食料、弾薬、医療物資。どれも戦場には必要なものだ」
「戦闘に参加することは?」
「任務は輸送だ。だが、戦場の近くを通る以上、敵と遭遇する可能性はある」
少佐は淡々と答えた。
「お前たちが搭乗するのは補給用の量産機だ。武装はない。戦闘を想定した機体ではないが、輸送と作業に必要な機能は備わっている」
「武器がないんですか?」
「必要ないからな。戦うための機体は別にある。お前たちの仕事は、物資を届けることだ」
少佐は候補生たちを見渡した。
「勘違いするな。戦場では、物資が届かなければ兵士は戦えない。補給も立派な任務だ。自分の役割を理解して行動しろ」
誰も返事をしなかった。
彼は少佐の言葉を聞きながら、頭の中でこれからの任務を考えていた。
戦闘型ではない。
武器もない。
つまり、敵に遭遇した場合、逃げる以外に選択肢はないということだ。
それなら、それでいい。
生きて帰れる可能性が少しでも高いのなら、文句はなかった。
*
午後三時。
格納庫には、補給用の量産機が並んでいた。
戦闘型と比べると装甲は薄く、全体的に細身の設計になっている。背部には大型のコンテナを固定するための接続部があり、腕部は作業時以外、胴体の側面に収納される構造だった。
脚部は人間とは逆方向に曲がる関節を持ち、通常の人型機動兵器とは少し異なる姿勢で立っている。
輸送時の安定性を確保しながら、必要に応じて大きく跳躍できるよう設計されたものだ。
ただし、積載量が増えれば跳躍能力は落ちる。満載状態で無理な跳躍をすれば、着地時に機体や荷物へ大きな負担がかかる。
あくまで緊急離脱や障害物の通過を想定した機能だった。
機体の外装は暗い灰色。光の反射を抑えた塗装が施され、排熱も周囲へ分散させる構造になっている。
補給機とはいえ、前線へ向かう以上、敵に発見される危険を減らす必要がある。
「これが俺たちの機体か」
隣にいた候補生が、機体を見上げた。
「思っていたより地味だな」
「輸送用だからな」
「せめて武器くらい付けてくれてもいいのに」
「使い方を知らない武器を持たされても困るだろ」
彼は機体の足元に立ち、背部のコンテナを見上げた。
これから自分が乗る機体。
戦場で敵を倒すためのものではない。誰かを守るための装甲も、敵を撃ち抜くための火器もない。
物資を運び、帰ってくる。
それだけのために作られた機体だった。
*
出発前の最終確認が行われた。
コンテナには食料や医療品、交換用の部品などが積み込まれている。別の機体には燃料や弾薬が積まれ、固定具の確認が繰り返されていた。
少佐は輸送隊の先頭に立ち、護衛兵たちと短い打ち合わせをしている。
候補生たちは機体の周囲で待機していた。
「今回の任務は前線基地への物資輸送だ。途中、いくつかの廃墟地帯を通過する。予定経路から外れるな。何か異常があれば、すぐに報告しろ」
少佐の説明に、候補生たちは返事をする。
「敵の残存部隊が周辺に潜伏している可能性もある。護衛の指示には必ず従え。勝手な判断で隊列を乱すな」
その言葉を聞き、彼は機体の操縦席へ向かった。
ハッチを開き、内部へ乗り込む。
システムを起動すると、機体の状態が順番に表示されていく。
『駆動系、正常』
『関節制御、正常』
『積載コンテナ、固定確認』
『通信系統、正常』
彼は操縦桿を握り、前方の表示を確認した。
格納庫の巨大な扉が、ゆっくりと開いていく。
その向こうには、灰色の空と、遠くに広がる荒れた大地が見えた。
『全機、出発準備完了』
通信越しに少佐の声が聞こえる。
『補給部隊、これより出発する』
機体が動き出した。
一歩、また一歩。
候補生たちの操縦する補給機が、物資を積んだコンテナを背負いながら格納庫を出ていく。
彼は一度だけ、後方の施設を振り返った。
ここへ戻ってくる頃には、正式な衛士になっているのだろうか。
それとも、戻ってくることすらできないのだろうか。
考えても答えは出なかった。
彼は前を向き、操縦桿を握り直した。
目的地は前線。
任務は物資の輸送。
そして、彼にとって最も重要なのは、無事に帰還することだった。
その時の彼は、まだ知らなかった。
この補給任務が、自分の人生を大きく変えることになるとは。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第一話は主人公の日常と、これから始まる任務の紹介が中心となりました。
次回から、いよいよ補給任務が始まります。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




