ブルべン博士と友達
サモエド犬のブルベン博士は、牛乳瓶の底みたいなぶあつい眼鏡をかけています。
それに白衣を着て、右のポケットに秘密の道具を、左のポケットにおやつを入れていました。
ある晴れた日です。
この日は晴れてはいますが、風の強い日で、研究所にある風力はつでんの風車が、回り続ける日でした。
ブルベン博士が居間で、庭で育てたハーブティを飲んでいると、ふいにガッガと、金属がぶつかるようなにぶい音がします。
「いったいどうしたんだろう?」
不思議に思ったブルベン博士が望遠鏡をのぞくと、羽の所に赤い物体があります。
ブルベン博士が、はしごを使って風車の羽に近づくと、赤い風船が引っかかかっていました。
今まさに空に飛び立とうと頑張っていた風船も、ブルベン博士の手の中に入ると、安心したように空気が抜けてちいさくなりました。
良く見ると風船には、ふうとうがくくり付けられています。
ブルベン博士は手紙を読んでみる事にしました。
『ダニーへ
誕生会を開こうと思うんだ。
その……良かったら来てほしい。
プレゼントなんていいから。
ハンスより
追伸:会場はしらかみ山にある小高い丘だ。』
「どこの誰かは知らないけど、ちょっと行ってみよう。」
ブルベン博士はききゅうで大空に飛び上がりました。
ところがです。
ブルベン博士の乗っていた、ききゅうは、風に流されてぜんぜん違う所についてしまいました。
「ここはどこだろう?」
「あの~すみません。」
「なんだいな?」
ブルベン博士が話しかけたのは、こぶとりのおじさんです。
「ここはどこですか?」
「コメル村だよ。」
「しらかみ山と言うのは?」
「しらかみ山?なんでまたそんな所に行くんだい?」
「この招待状が風船についてきたのです。」
ブルベン博士が、招待所を見せると、相手のおじさんはおどろいた様子で言いました。
「しらかみ山のハンスだって!?それは私の友人じゃないか!!それに、ダニーと言うのは私の事だ。」
「本当ですか?ご友人のハンスさんが、あなたがいらっしゃるのを待ちわびています。突然ですが、誕生会に参加してくださいませんか?」
「ああ、ぜひ参加させていただこう。」
「それなら私のききゅうで、ご一緒しませんか?」
「いやいや。他にも連れていきたい友人達がいるんだ。彼らに連絡をとったら後でいくよ。」
「そうですか。それならお先に。」
ブルベン博士はおじぎをして、ききゅうの所に帰ろうとしました。
「あっ!!」
突然したおじさんのさけび声におどろいたブルベン博士は、振り返ります。
「どうしたのですか?」
「忘れてたよ!忘れてた!しらかみ山の場所だったね!」
「はい!!」
ブルベン博士の乗せたききゅうは、また大空に飛び上がります。
会場にいたのは、ふきげんそうな顔をしたおじさんでした。
「初めまして。ハンスさん。私はシベリア郡のノキナミはらっばにある、糸巻き研究所のブルベンと言うものです。あなたの出した手紙を読んで、やってきました。私は招待客ではありませんが、誕生会に参加する事をお許しいただけませんか?」
「ふん。勝手にしろ。」
「あのこれ良かったら、今朝庭で採れたハーブです。」
「ふん。」
おじさんの他に誰もいない誕生会会場を見て、ブルベン博士は思いました。
「やっぱり……」
(大事な招待状を風船にくくり付けて飛ばすような人だ。
なにか呼べない事情があったに違いない。)
「それは良かった。実はいろいろ持ってきたのですよ……」
おじさんはブルベン博士を無視して、作業を始めました。
「むぅろうそくがない……」
「はい。」
困っている老人に対し、ブルベン博士は白衣の秘密のポケットからろうそくを取り出しました。
実はこの白衣ブルベン博士のお手製なのです。
なんの変哲もない白衣に色々な機能を付けて、世界に一つしかない一つしかない特別な白衣にしたのです。
「準備が良いな。」
「たまたまですよ。」
「バースディプリングの取り皿は?」
「このお皿なんてどうでしょう?」
「フォークはどこに?」
「ここに。」
「ナイフはどこに置いた。」
「ここに……あり、ます。」
ブルベン博士が取り出したのは、特大のナイフでした。
それにはふきげんそうな顔をしていたおじさんも慌てて、
「そんなに大きなナイフでなくていい」と言います。
それからどんどん準備は進んでいきます。最初はきむずかしいだけだとおもっていたおじさんも最後は、
「……わしのパンツは何色だ?」
「えっえーと。」
「冗談だよ。」
「はぁーーー」
なんて冗談を言っていました。
「さぁそろそろ始めようじゃないか。」
「あのーご友人を待たれなくて良いので……」
「はっはは、どうせだれも来やせんよ。もう何年もそうだったんだ。皆引っ越しやなんやらで、居所が分からなくなってしまってね。
なんど出しても戻ってきてしまうんだ。それで風船にくくりつけて、飛ばしたというわけさ。もしかしたら、友人のところに届くかもしれないだろう?けど、今年も駄目だったみたいだ。」
悲しそうにうなだれるおじいさんを見たブルベン博士も、なんだかかなしい気持ちになっていきました。
お友達を連れて来てくれると約束したダニーさんは、一体どこにいるのでしょう?
そんな時です。
「ここだ!ここだ!」と言う聞き覚えのある声が、聞こえてきたのは。
「ハンス久しぶり!!」
「しらかみ山なんて遠いわよ。」
「どろだらけの俺、活かしてるだろう!」
「お前らは、」
突然会場に現れた人々を見て、おじさんは驚いた様子で口をおおいました。
「私が寄り道してきた時に出会った人々です。みんなあなたを祝いにきてくれたんですよ。」
「そんな嘘だ。ダニー、スティーブ、カレンも……」
「招待状も出して無かったのに。」
「実は、ここに来る途中で道に迷ってコメル村についてしまって、そこでダニーさんにあったのです。」
耳をかきながら、ブルベン博士は白状しました。
「はっまあいいさ。誕生会を始めるとしよう。」
クラッカーの音と共に、誕生日会は始まります。
みんな過ごす楽しい時間は、またたく間に過ぎて行きました。
誕生会の終わりの方でおじさんは、ブルベン博士に言いました。
「友人達をつれてきてくれてありがとう。誕生日はやっぱり誰かと過ごすのが一番だ。」
誕生会が終わってみんなが家に帰る頃、おじさんの友達たちは来年もまた山で、誕生会を開くと約束していました。
ブルベン博士は、おじさんたちの様子ほほえましい気持ちで、眺めていました。
「おい!ブルベンあんたも来るだろう!」
「えっ!?」
「来年の誕生会だよ。」
「混ぜてもらっていいのですか?」
「良いも何もブルベン、あんたがみんなをひき合わせてくれたんだろう。」
「はっはい。」
こうして実は友達があまりいなかったブルベン博士にも、友達が出来ました。
来年の誕生日は、新しく出来た友達と過ごすことが出来そうです。
ゴミだらけの研究所を思い出したブルベン博士は、こっそりスマホから掃除機を注文しました。
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