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5/10

5・花嫁はかく語りき~聴取終了~

ストーリーの流れの都合上、今回はいつもより短めです。

 それから。


 ライサは婚家に戻されました。辺境伯家がお膳立てした婚姻ゆえ、離婚はされませんでしたが、屋敷のすみに追いやられ、形ばかりの正妻にされてしまいました。

 あの愛人が実質的な女主人として、我が物顔で差配をしていると聞きます。跡継ぎには愛人の子が据えられるのでしょう。



 アーロンは家令によってエイル神殿へ入れられました。乳を必要とする間は乳母がつけられますが、歩けるようになれば厳しい修行が始まるそうです。覚悟を持った大人さえ、泣き言を漏らすほどの。孤児として神殿に入ったアーロンに逃げ出す場所はありませんから、耐えるしかありません。

 かわいそうなアーロン……。



 兄は表立っては処罰を受けませんでしたが、護衛という名の監視役がつけられるようになりました。兄が一人になれるのは寝台の中だけ。ライサとの逢瀬は二度と叶わないでしょう。

 もっともお父様が今まで以上に厳しい鍛練を受けさせていますから、監視の目がゆるんだところで、屋敷を抜け出す気力も残らないでしょうが……。



 わたくしは急きょ嫁ぎ先が決まりました。ええ、わたくしが明日嫁ぐ相手、我が辺境伯家寄り子の子爵家の跡継ぎです。わたくしの幼なじみでもあります。



 お母様は本来、もっと辺境伯家にふさわしい家……最低でも伯爵以上の家にわたくしを嫁がせたかったようです。アレクサンドラ様の義妹になったのですから、侯爵夫人、いえ公爵夫人も夢ではなかったでしょう。



 ですがお父様が『これ以上お前を辺境伯家に置いておくわけにはいかない』と仰せになったことで、子爵家への嫁入りが決まってしまいました。寄り子の格下貴族なら、辺境伯家からの縁談を断れませんから。

 そうして嫁入りの準備があわただしく行われ、今日につながると……そのような次第でございます。



 両親は短い間に能う限りの支度を整えてくれました。お母様は短い睡眠時間を削ってまで刺繍を仕上げてくれました。



 でもご覧の通り、わたくしに与えられるのはすべてアレクサンドラ様より一段劣るものばかり。アレクサンドラ様が降嫁されてからずっとそうでした。

 ドレスを新調する時も、アクセサリーをあつらえる時も、両親はまずアレクサンドラ様のお召し物や宝飾品の買い入れ記録を確かめ、それらより劣るものをわたくしにくださるのです。



 わたくしを一番に扱ってくれたのはばあやだけ。アレクサンドラ様は辺境伯家を乗っ取るおつもりだと、決して気を許してはいけませんよと、ばあやはことあるごとに申しておりました。



 そのばあやも去年、風邪をこじらせ亡くなってしまいましたが……え、ばあやですか? ばあやはもとはお母様の乳母でした。お母様のお母様、つまりわたくしの母方のお祖母様は早くに亡くなられましたので、ばあやはお母様の母親代わりだったそうです。

 辺境伯家への嫁入りにも付いて来てくれたことを、お母様はいつも感謝していらっしゃいました。わたくしにとっても祖母同然でしたわ。



 兄とライサの関係をばあやは知っていたのか、ですか? ……ええ、もちろん存じておりましたわ。だってわたくしが兄とライサの仲を取り持った時、山荘にライサを住まわせることを提案したのも、身ごもったライサのために産婆を手配したのもばあやでしたもの。ばあやは兄もアレクサンドラ様の犠牲者だと、たいそう哀れんでいましたのよ。



 ばあやは王都へ行ったことがあるのか? ……いえ……、ないと思いますわ。ばあやはお母様のご実家の使用人の娘で、ずっとお母様に仕えていましたし、お母様は王都の学院に通われましたが、下級貴族は使用人の帯同を許されませんから。お父様はアレクサンドラ様のご降嫁の話をまとめるため、しばらく王都に滞在なさっていましたが。



 神官様……さきほどからどうしてばあやのことばかりお尋ねになりますの? そのような真剣なお顔をなさって。



『わかりました』?



 いったい、何が……?



これにてミルカ視点は終了。

次回から三人称に戻ります。

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