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リセとピッタリくっついた体が熱い。

リセの呼吸が、手に当たって擽ったい。

リセの速い鼓動が伝わってきて、ドキドキする。


私が、リセを意識すればするほど、彼の顔をまともに見られなくなっていく。だから、私は、視線をウロウロと彷徨わせるしかなかった。

すると、リセの口を塞いでいた私の手が、ペロリと舐められる。それに驚いた私は、咄嗟に、彼から手を離してしまった。

その拍子に、必死に合わせないようにしていたリセの目と視線がかち合った。



「リセ…?な、何…?」


一度合ってしまった目は、もう離せない。

言いようのない緊張が、私の背筋を駆け上る。



「セリナ、貴女は、何も心配いらない。ネーレーイスは、早々に安全な侯爵邸へ連れ帰るから大丈夫だ。その許可も、獣医師から得ている。今のネーレーイスの状態ならば、馬車で移動させても問題ないそうだ」


「確かに、侯爵家の本邸なら安心ですけど…。で、でも、ほら!ネーレを屋敷で受け入れるためには、色々と準備が必要ですよ!私、商会の本店に行って必要な物を見繕って来ます!」


とにかく今は、リセと一緒にいたら危険な気がする。だから、私は、悪足掻きだと分かっていても、逃げの一手を取った。


そんな私に対して、リセは、困ったような表情を見せる。



「セリナ、それについては、昨夜の貴女から散々聞かされた。忘れてしまったのか?随分と熱心に語っていただろう?まずは、キャネマル商会の支店をシグネル領に出すと。貴女が眠った後、その伝令は各方面に送っておいたから、今頃、優秀な部下達が準備を始めているはずだ。だから、貴女がわざわざ帝都に行く必要はない。すぐにでも、商会の者がこちらに来るだろう」


「えっ、えぇ…、私、そんな話をしたんですか…?」


「ああ。シグネル領に支店が出来れば、こちらで暮らす猫達の生活が、今よりずっと良いものになると、貴女は興奮しながら語っていた。それに、薬害被害者を治療するのに丁度良いとも言っていたな。万能薬のレシピを応用すれば、薬の副作用を打ち消す薬が作れるのだろう?」


「え…、あっ、そ、そうです、ね…」



そんな大切な話を、私は酔った勢いでしたなんて、愚かすぎる。

二日酔いのところに、自己嫌悪まで加わって、私は、更なる頭痛に見舞われた。


そんな放心状態の私を、リセが全身を使って抱き込む。これでは、ベッドから出るどころか、身動き一つ取れない。

すると、リセが私の耳元で囁いた。

甘い声で、諭すようにゆっくりと。



「貴女の覚悟を見せてくれ。貴女の愛と一緒に」


「え!?愛!?今!?」


「ああ、今すぐに。セリナに時間を与えると、すぐに何処かへ行ってしまうからな。だから、私は、貴女を囲い込むことにした。けれど、安心していい。私の罪は、一生賭けて償うから。以前言ったように、貴女を全力で甘やかす。私が作った真綿の檻に閉じ込められてくれ」


「檻!?やっ、で、でもね…、それは、今すぐじゃなくてもいいと思うの!私は逃げませし…。愛って、一朝一夕で伝えられるものじゃないですし。ねぇ、本当、待っ…、ちょっと…、リセっ…」






リセの優しい優しい口付けから始まった甘やかな時間は、途中から殆ど記憶がない。


なんでこんなことに、なんて思ったけれど、そもそも、私はリセに絆されていたのだから、本気で拒絶出来るわけがなかったのだ。



おかしいな。

私には猫達がいればよかったのに。


でも、私の胸には、少しむず痒いホワホワした熱が灯っていた。幸せを感じる熱が。



「愛してますよ、リセ」


小さな小さな声で呟いた私の愛の告白は、果たして彼に届いたのだろうか。






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