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リセナイア 13

王女の我儘を聞き続けていると、勘違いに拍車をかけたこの女は、私の妻を気取り、傍若無人な態度で侯爵家の使用人を扱うようになった。

そして終には、セリナが使っている侯爵夫人の部屋まで要求してきた。もちろん、断ったが。

しかし、この時ばかりは腹が立ち過ぎて、懐に忍ばせている短剣を抜きそうになってしまった。私の我慢も、そろそろ限界に近い。



そんなある日、我が領で許可していない新聞が、突如として発行された。そこには、私と王女が熱愛中であるかのような記事が載っていた。

王女は、その新聞を満足顔で眺めている。



やられた。


私は、側にいられないセリナの下へ余計な情報が渡らないよう注意してきた。そのために、シグネル領の新聞社は、全て買収し、情報を規制していたのだ。

だから安心していた。その緩みを王女に突かれてしまった。

どうやら私は、この性悪王女を甘く見過ぎていたらしい。


すぐさま私は、セリナに付けた影に連絡をとった。



影によると、王女の事は、既にセリナにバレてしまっているようだ。遮断していたこちらの情報が、どこからか漏れていたのだ。

彼女の近くに、裏切り者がいる。


私は、その人物を炙り出すため、セリナに送る手紙の頻度を下げるしかなかった。

すると、それに合わせるようにセリナからの手紙も届かなくなった。




唯一セリナの存在を感じられた手紙が届かなくなり、私の苛立ちが隠せなくなってきた頃、王女の侍従が動きを見せた。

私の執務室に保管していたセリナの研究報告書を盗み出したのだ。

大口を叩いていた割に、王女の商会がこの地で業績を上げられず焦ったがゆえの行動だった。


そしてそれは、皇帝陛下の計画通りでもあった。



セリナの研究成果である『副作用のない鎮痛薬』の製造方法を盗んだ王女は、我が物顔でその薬を発表した。他国の貴族まで招待した盛大なパーティーを開催して。

そして、その薬が評判を生むと、益々私に、関係を迫ってくるようになった。


だから、そろそろこちらも仕掛けようかと準備を始めたその時、影から連絡が入った。

セリナが新たな猫を飼い始めたと。

しかも、いつの間にか、キャルの子供達まで彼女の下に戻っていた。



これはまずい。

セリナが、私を捨てて遠くへ行ってしまう。

猫達は、彼女への切り札であり、人質だったのだ。



焦った私は、小細工などやめて、本格的に反撃に出ることにした。



しかし、私が行動を開始したその日、思わぬところで騒動が起こった。

鎮痛薬を使用した貴族が、酷い皮膚被れを起こして、王女の商会に抗議しにきたのだ。

最初は、鎮痛薬と皮膚病の因果関係を否定し、強気な態度をとっていた王女も、次第に増える訴えに、頭を抱え始める。

そしてとうとう、我が国の高位貴族に莫大な損害賠償を請求され、王女は愚かにも、自分の罪を告発してしまったのだ。


この鎮痛薬を開発したのは、自分ではなく、セリナだということを。


それを受けて、私はすぐに声明を出した。

妻のセリナが、皇帝陛下の命を受け開発していた薬の一つ、鎮痛薬の報告書を何者かに盗まれたという事実を詳細に告発したのだ。


すると、ここぞとばかりに皇帝陛下が、自ら王女を追求し始めた。

当の王女は、セリナに嵌められたのだと無罪を主張していたが、私が揃えていた証拠が決め手となり、早々に有罪が確定した。近くフレイア王国へ移送し、その責任を追求することになる。

その席で、皇帝陛下が、青真国との貿易協定から外れるようフレイア王国に圧力をかける予定だ。

つまり、これで私の仕事は、終わったのだ。



私は、後の全ての処理を部下達に任せ、一目散にセリナの下へ向かった。



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