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第四十話 伝達魔法

第四十話 伝達魔法


シュバルトは剣を振るう。



まずはキールの首を斬り落とし、

次は手足、そして胴体をもう一度真っ二つにし、頭を半分に割ってやる!そして、さらにそれぞれのパーツを切り刻む!もう誰だか分からないくらいにな!

その後で、リアンの絶望した顔を拝みたい!

ムカつくやつだ…わたしの欲しかったものを持っていて気に入らない…

ならば、せめて…お前の大事なものを奪って、わたしの人生は幕を閉じさせてもらおう!








あれ…






………何でわたしはそんな酷いことをしようとしているんだ?


シュバルトの手がピタリと止まる。そして、次々と心に疑問が浮かんできた。



……なぜ、わたしはこんな計画を立てた。


……この女に罪はあるか?何も悪いことはしていない。

そもそも、国王の息子に手をあげたのも、俺の魔法が原因だ。キールは善良な国民だった。


……わたしの一人よがりの計画で多くの国将と次将が命を落とした。国王までもだ。

そして、国民達も犠牲にしようとした…


…何なんだ!?この計画は!?わたしはなぜこんなことを思いついた。やめなければ…悲しみを多く生むだけだ…!


しかし、待てよ…なぜこんな考えになっている…

わたしは、世界を支配し、王になるのではなかったのか!?

だが、もうそんなことはどうでもよくなってしまっている。


なぜ…?


なぜそんな思考になっている!?


なぜわたしの気持ちは変わってしまったのだ!?


……、………、


そうか…これも君の魔法なんだな?

リアン=ストロングシールド…




シュバルトは既にリアンの魔法にかかっていた。

それは『奴隷魔法』…ではなく『伝達魔法』。

リアンの固有魔法であり、遠く離れた他者と会話をするだけの珍腐な魔法。

それが、ここにきて急速に進化した。“狂薬”の効果によって別の能力へと昇華された────


もう、シュバルトはキールを攻撃することはできなく(・・・・)なっていた。


そして、シュバルト自身気付いたのだ。


今の自分の心変わり………これはリアンの魔法によってもたらされたのだと。


シュバルトの剣を持つ手は、何も傷つけることなく降ろされていた。


「これが君の魔法か?」


「はい。僕の『伝達魔法』です」


祭壇の間の静かな空間にリアンの声が響く。


シュバルトの顔からは、数分前の険しさは消えている。戦意が全く湧いていない。とても穏やかな気持で満たされている。


「君に対しても憎しみの感情が無くなっている。それどころかとても清々しい気持でいるのはなぜだ?」


「自分の罪と向き合い、反省をしたからです」


「わたしが反省している?………どういう魔法か分からないが、これは洗脳魔法のようなものなのか?」


「いえ、『伝達魔法』ですよ」



「僕の“心”を伝達しました」


「“心”……君の心か。どうりで、わたしの心に優しさや思いやりの感情が浮かんできたわけか。本来のわたしであれば、持ち合わせることのない甘い考え方」


「あなたは優しさや思いやりを持ち合わせていなかったわけではないですよ。心の奥底にしまっていただけです。伝達された僕の“心”に触れ、邪気が無くなり、あなたの“心”の奥にある善意の心が表れたんです」





「要は、あなたは“善い人間”でもあるということです」


「わたしが…“善い人間”…?」


「そうです」


リアンの魔法により、シュバルトの心の奥に眠っていた善良な心が蘇ったのだ。まだ若かりし頃、国や民のために軍人を志していた頃の気持ちが……


それがいつしか、ストロングシールドの因縁を知り、血筋の固有魔法で挫折を味わい、歪んでしまった。


かつて愛した国や民を陥れるほどまでに…


しかし、その邪悪な考えは間違えているのだと、シュバルトの善意の心が打ち勝ち、考えを改めたのだ。


リアンの進化した『伝達魔法』は誰にでも通用する魔法ではない。根っこから悪の人間には、リアンの“心”を伝達しても、心変わりすることはない。


しかし、シュバルトは違った。


彼は改心したのだ。


シュバルトはリアンの魔法を理解し、それと同時に完全敗北したことを悟った。




フッ…他人の心の悪意を消し、戦いを終わらせる。こんな魔法があるなんてな。

リアン=ストロングシールド…こんな魔法は………





「反則だろう…」




シュバルトは祭壇に視線を落とす。


「どうやらわたしが間違っていたようだな」


そう呟くとキールの体を祭壇から抱え、リアンの元へ歩いていく。

そして、リアンの両の腕にキールの体を預けた。


冷たくて、とても軽くなった体…

とても大切な人の亡骸…


キールの顔は血の気が無く、少しやせ細っているように見えた。

しかし、その顔は穏やかで、まるで眠っているようにも見えた。



「おかえりなさい、キールさん。頑張りましたね」


戦いが終わったことを確信して、緊張の糸が切れたのか、ポツポツと涙がこぼれる。


キールが亡くなってから、ずっと耐えてきたものがここで溢れ出した。


続く

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