六話
伊賀天舞音が現れた
「伊賀天舞音か。大塚はどうした」
「倒して来たで?五十嵐せんせの放送も流れたやんか。知らんかった?」
「多分戦闘に集中して聞こえてなかったんだと思うよ天舞音」
「朱里、気ぃ戻った?」
「ああ冷静さを欠いていたようだ」
「著しく、な」
「貴様ッ、欠かせた張本人が白々しく言うな!」
「苛めんといてぇな。朱里はちょっと熱くなりやすいだけねんから」
「言うな天舞音」
欠点を親友に指摘されて恥じらう朱里
「まぁ、朱里もちゃんと山庭君の力量見極めてなかったみたいやけど」
「なに?そんなはずは・・・・・・」
「山庭君も意地悪やんなー。たった10人で比較するなんて」
「本当に10人かと思って言った。人聞きが悪いぞ?」
「嘘はなしやで? それほんま?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「言う気ぃないの?しらけるわぁ」
「別に言うことでもないだろ」
「なにを言ってるんだ天舞音、彼がなにを隠してるって?隠し事なんてないだろ?」
「別に隠し事やないよ」
「じゃあなにをそんなに・・・・・・」
「出し惜しみやなくてな、制限されてたんや」
「何に?」
「朱里、あんたにや」
「え?」
「言ったやん“ちゃんと2本渡してな?”って」
「あ・・・・・・」
「前の試合見てる時に話したやん。山庭君いつも2本背負っとるなって。せやからせっかく2本預けたのに朱里ったら」
「す、すまない天舞音」
「まぁ言霊も使ってなかったからほんまに余裕やったんかもやけど」
「いや、まだまだ奥の手を残しているかも分からなかったからな。10人程度に押さえておいた」
「つくづくばかにしやがってぇ」
「こら朱里、自制しぃ」
「うっ」
「で?これからどうするんだ?1対2か?受けて立つぞ?」
「へぇウチも一緒に相手できるん?期待大やわぁ。まぁでも二人相手するんは山庭君ちゃうよ。吉川君や。朱里先行きぃ」
「了解!あと任せたよ。ボッコボコにしといてくれ。」
「分かった分かった。分かったからはよ行きぃ。‥‥‥やっと行ったな。ふふ、君ずいぶんと朱里に嫌われたなぁ。言い過ぎなんちゃう?」
「沸点が低いのが悪い。戦いにおいて冷静さを欠くのは致命的だ。」
「まぁ確かにそうやけど・・・・・・ウチにもするんそれ?」
「しても無駄だろう。そう言う訓練を受けているだろうし。何より君は激情したら剣筋が鈍るどころか鋭くなりそうだからな。それに、俺は煽った内容ほど若有朱里を低く見ていない。むしろ多少でも弱くなれば儲け物程度にしか考えてなかった。効果は・・・・・・まぁド嵌りしたが」
「そういうことやったん」
「しかし随分と早く来たな」
「そう? これでも迷うたんやで?道に」
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時を少し遡って結衣視点
「(ここは?何階か攻めて分かったらいいんだけど
とりあえず不測の事態だし、早急に勝利を狙う!) “天の鳥のとま・・・・・・”」
「ウチがそないな味気ないことさせると思う?せっかくこうやってし合えるんや。楽しもうや」
「い、伊賀さん?!」
「せやで?よろしゅう頼みます」
「(伊賀さんとやらなきゃいけないの?勝てる見込みが・・・・・・。ごめん朗君)」
「ほなせっかくやし始めよ。獲物あるんやろ?」
「もちろんあるわ」
そう言って刀を構える結衣
「は?」
構えた瞬間天舞音の目の色が暗く変わり、纏う雰囲気が怒りを孕んだものになる
「はぁ、萎えたわ。あんたとやっても微塵もおもろないやろし」
「なんでよ!」
「だってええとこのお嬢様が刀振ったところで、所詮[似非侍の刀弄り]やん」
「へぇ・・・・・・今の言葉後悔させてやるわ。あんたはここで倒す!伊賀天舞音!」
そう言って天舞音に斬りかかる結衣
「(あれ?なんでこんなに熱くなってるんだろう?まさか!)」
天舞音が悪い顔で微笑む
斬りかかる体勢を今更どうすることもできず、すれ違いざまに結衣はボールを5つ全て破られて敗北した。結衣と天舞音の勝負は一瞬で片がついたのである
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「まぁざっとこんなもんや。勝負が早く着きすぎたさかい、あんまり実力がわからんかったけど、一太刀も防げんかったんなら、所詮その程度の実力しかなかってんろうなぁ」
「お前の太刀を防げる人間が一体どれほどいるんだ。速さを一番に重きを置いたお前の太刀と結衣を比較する方が違うだろう」
「お褒めに預かり恐悦至極やわぁ。やけど朗くん。なんでウチの得意分野知ってるん?」
「多少剣術も嗜んだからだ。これまでの試合を見るに体勢や足さばきからなんとなくそんな感じがした。それだけさ。それで?俺にはその言霊掛けないのか?」
「掛けへんよ。ぱっと見アキラくんウチ相手に気後れしてなさそうやし」
「そうか。なら・・・・・・」
「早いとこ始めような。・・・・・・せや、せっかくやし名刀同士で戦おうや」
「基本的に流血は禁止だとおもうが?」
「お堅い人やなぁ・・・・・・五十嵐ちゃん、どうせ観てるんやろ?許可出してぇな」
[はぁ、責任を問われるのはこちらなのだが?]
「ええやんええやん、死亡事故にはせえへんて。それに五十嵐ちゃんも本当は朗くんとやりたいんと違う?手伝うで?」
[頭がいたい・・・・・・しかも実力も伴っている所が厄介だ。ハァ、須賀田先生を呼んでおく。部位欠損じゃない限り大抵治せるので、それで我慢するように。約束は守れよ?伊賀天舞音]
「おい、人をダシにして許可を取り付けるな。五十嵐先生とやるのも勘弁だぞ。」
「まぁまぁ、今更手遅れやて。堪忍してなぁ。ウチどうしてもやりたかってん。朗くんと痛みの伴う一死合。」
「・・・・・・女子、それもお淑やかな見た目した女の子がそんな悪い顔をして言うことじゃないぞ」
「あら、ウチのこと“女の子”って言うてくれるん?ウチの周りにそう言うてくれる人おらへんから嬉しいわぁ」
「はぁ‥‥‥分かった、やればいいんだろ?やれば。はやく出せよ。その刀」
「やっとやる気になってくれたなぁ。それじゃあ”顕現;菊一文字則宗、一期一振”。朗くん二刀流やろ?それ使うてや。」
「はぁ・・・・・・また有名どころを出したな。お前は何使う?」
「”顕現;三日月宗近”」
「天下五剣を出してくるか・・・・・・出し惜しみとかないのか?」
「そないな無粋なことする相手ちゃうよ君は」
「意外に高評価なんだな」
「当たり前やん。うちと肩並べられる同い年くらいの人間なんて一握り、数える位しかおらへんのやで?」
「はぁ億劫だ。」
「ほら、やろうや。はよぅ」
[これは特例だ。二人の試合は私が審判として行うものとする。勝利条件は相手のインクボールのうち急所につけた全てを斬った場合のみ、基本何でもありだが部位欠損または命に関わるけがを負わせる可能性がある攻撃は禁ずる。万が一どちらかが死んだ場合、学校側は一切責任を負わず、当事者同士の責任とする。当事者同士はこれに同意したものとして行う。それでは、始め!]
ガキン
ガキン
刀が交錯し、刃を交える音が部屋に鳴り響く・・・