三話
[「篠山 咫九人 ならびに竹嶋浩のボールが全て割られたことを確認した。脱落した2人はその場で待機だ。Aチーム残り3人、Bチーム残り1人。試合再開」]
五十嵐教員の声がスピーカーから流れる。
「あとは守護の1人、清海が出てきてくれればいいが・・・」
[よぉ、お疲れさん。鮮やかな戦闘だったな。]
「誠也、見ていたのか」
[「蟻を通して色々な角度で見させてもらったぜ。いや〜敵に回さなくてよかったよ。底が見えなさすぎてこえぇ。」]
「そうか、実力差を味わい知れたなら重畳。これからも俺のてごm・・・はいk ・・・仲間として頼りにしているぞ 」
[今、禄でもない言葉吐きかけてなかったか?]
「気のせいだ。それより他に報告があるのじゃないか?」
[気のせいってそりゃないぜ・・・清海と金属球がある部屋は探し当てた]
「ほう、どこだ?」
[今、お前たちが近くにいる階段を使って5階まで行ったらそこから最奥の部屋にいる。]
「お疲れ。今すぐ向かう」
誠也の指示通りに進んだ先には金属球の前で胡座をかいている清海凪斗の姿があった
「やぁ転校生。力比べといこうじゃないか」
「いいだろう。だらだら行くのは好きじゃない。さっさとやろう」
「その点は僕も賛成だ。僕は君の力を甘く見ていない。長時間かければ勝ちようがないから最初から全力でいかせてもらうっ!」
そう言って自身の背後からアサルトライフルとサブマシンガンを取り出す。
「できればこれで決着がついてほしいものだね」
銃の乱射を始める。アサルトライフル30発、サブマシンガン40発を打ち終えた後には先ほどとは比べ物にならない程の粉塵が巻き上がっていた
中から現れた朗は一つだけボールを残し、オレンジのインクに塗れて、
そして肩で息をしながら立っていた
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・流石に全てを捌くのは無理があるな」
「いや、普通は今ので脱落してるからね? どんだけ規格外なんだよ」
引き攣った笑顔を浮かべて立ち上がる清海
「でも、もう言い逃れはできないよ?」
「何のことかな」
「君の言霊についてさ」
「別に隠し事なんてしていないぞ」
「そうだね。君は言霊を使っていないなんて言ってないからね。本当は使っていたんだろ?」
「あぁ、そうだな」
「そして、君の言ってた”射線とタイミングをみて弾丸を避ける”アレ本当じゃないよね」
「・・・・・・・・・・・・どこでわかった?」
「僕はわざわざ君より低い位置から構えて撃った。その場合最初から銃口は下を向いているから、絞るための条件が4方向のうち3方向にしか絞れないよね」
「それをするためなら一番最初に狙うのは一番低いとこにあるボールだと分かるだろ」
「単発で狙うならそうだろうね。だけどこの銃は二つともフルオートだからね。リコイルがキツイんだよ。僕は竹嶋君でもないし銃の腕はからっきし。射線もブレブレなんだ。だから僕が狙ったのは君の胴のど真ん中。合計70発もあったらたった5箇所ぐらい当たると思ってね。まさか15mも離れていない距離で迫り来る銃弾とリコイル制御できていない射線を同時に把握してたなんて言わないよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「仮に射線が割れてたとして。じゃあタイミングは?この銃の弾速把握してるの?また仮に把握していたとしても、同じ場所に弾が飛んできたら?たとえ君でも無理でしょ」
「・・・・・・できると言ったら?」
「僕はできそうな人を知ってるけど、君はその人に遠く及ばない。全くできない僕がいうのも悪いけどね」
「・・・・・・・・・・・・あぁ、無理だな。だからこそ4つも割れたんだ」
「その言い方も適切じゃないよね?」
「何?」
「ワザと4つ割らせたんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「え? 何? どういうこと?」
ついて来られなくなった結衣が音を上げる
「つまり、彼は今回の勝負に勝つために4つを諦め、1つを残したんだよ。彼の言い分なら5つ全部残しときたかったみたいだけど。」
「わざと4つというのがわからないのだけど・・・・・・4つ割られたら後1つしかないのだからピンチじゃないの?」
「普通ならそうだけど、僕や彼からすれば違う。今回のルール上ボールが全て破られない限り失格にならない。裏を返せば1つでも守りきれば勝ちなんだよ。しかも後1つになれば相手が狙うのもそれしかない。予測が容易になる。その分攻撃が激化するけど、手練れなら捌ける。彼には自信がある。そういう意味で4つ破らせたと思うんだけど、どうかな山庭君?」
「・・・・・・正解だな。それで? 肝心の言霊の能力は?」
「君の言霊についてだけど・・・これまでの事を加味して推測するならば、『未来予知』。彼の言霊は『選』と自分で言ってたから、それを信じるなら、『複数の可能性の未来を見、それらの中から自身に都合のいい可能性を選択して現実に起こす』能力。付け加えるとすれば
『なお選択して未来通りに必ずなるとは限らない』かな」
「そう推測した根拠は?」
「君が言ってた”射線とタイミングをみて弾丸を避ける”が違うのなら別の方法をとって回避したことになる。だとすれば銃弾を避けるのは常人からすれば困難だ。じゃあそこで言霊を使った可能性が高い。銃弾を避けるために必要な効果であり、尚且つ『選ぶ』が関係してくるものって何?いくつか考えられるよね。”自身に当たるものと当たらない銃弾を選び、当たる銃弾の射線を認識する”、“自分が移動したことで銃弾に当たる場所とそうじゃない場所を選び、危険な場所を視覚化する”とかさ。でもこれらの能力はあまり適切とは言えない。何故かというと、言霊の効果が飛び道具系に限定的だから。じゃあ他の可能性は?飛んでくるのがどこか知ってればいいじゃん。それだと実用性がありつつ、銃弾を避けるための条件を満たすのがさっき言った効果なんだよ。加えて、条件がついた根拠は未来を選択した後に君がアクションをとったからかな。もし100%未来を選べるなら、完全に当たらない未来を選べばいい話だからね。避けるなり逸らすなりしたのは未来が完全に成就するわけじゃないからだろ?」
「・・・・・・なるほど、確かに頭脳特化らしいな。効果もほぼ完璧に当ててきてる。完全な正解といっても差し支えないほどに、な。俺もお前には遠く及ばないだろう。だが、それで? 打倒策は思いついたか?」
「いや、暴いただけにどうしようもないことがわかったかな」
「なら、お前に選択肢をやろう。なおも足掻き、痛い思いをして敗北するか。それとも降参して俺の眷属になることを選んで痛い思いをせずに敗北するか。どっちがいい?」
「どっちの条件も最悪だね。それもこっちが選ぶのか・・・・・・。これも言霊かかってそうだから無回答にするよ」
ニヤリ
朗が悪魔のような笑みを浮かべる。
「わかった。なら両方、味わってもらおうか」
「(しまった、無回答は選択権が向こうに渡るのか?!)」
朗の蹂躙が始まった。
アキラが東京高校から来て一番最初の戦闘は朗たちの圧勝という結果を残して幕を下ろした。清海 凪斗がどうなったかは・・・・・・推して知るべし
敢えて当時の状況を語るとすれば清海凪斗の目は死んだ魚のそれだったとだけ言っておこう。