二話
[「それでは、第1試合を始める」]
隣の棟からスピーカーで試合開始の合図がされた。
「作戦開始だ。誠也は捜索開始。」
「了解。[召喚 : クロオオアリ5千匹]」
「大塚は一応開幕回収を試みよう。」
「うん! [天の鳥の止まり木]」
結衣が言霊を使用する。
「うーん、対象を金属球にしてみたけどやっぱりダメみたい」
「まあそうだろうな。元のプランで行こう」
「なぁ、なんで元々ダメな体で話してるんだ?」
「なんだ、そんなことも理解してなかったのか?」
「普通わかると思うんだけど」
「視線が2人して冷てぇよ!わかんねぇから教えてくれ」
「凪斗君の言霊は<付>でしょ?〜を付けるって感じで使ったことあるのは見たことあるんじゃない?」
「あぁそうだな。」
「それじゃあ後は楽だ。篠山 咫九人の言霊の能力、特に万象を弾く能力を金属球に付ければいい。大塚の『集』に対して篠山の『弾』は同じ12画だから同クラスだ。結果矛盾した事柄に対して同威力の言霊同士は相殺され、何も起こらない。」
「あ、そういうことか。」
「今更理解が及んだようで何よりだ。さて続けるぞ?いくら理解してなかったとはいえ作業は休めてないんだろう?」
「なんかお前急に俺の扱い冷たくなってね?」
「敵の場所は?」
「無視かよ。えーっとな、お、いたいた。3階西階段に2人しているな。ん?こっちを向いて笑ってやがる。あ・・・監視のアリをやりやがった。2人で来いってさ」
「了解した。大塚、一旦集合だ。」
「分かったわ。」
合流を果たした朗たちは西階段前の廊下で竹嶋、篠山と相対していた
「よぉ待ってたぜ転校生」
「泣いて地面に這いつくばらせてやるよ」
「そうか、なら御託はいいからさっさとやらないか?手間だしな」
「てめぇ死にてぇらしいな」
「後悔しても遅いぞ」
「さっきから咬ませ犬的な言葉しか吐かないな。いっそ哀れだ。やれやれ」
2人の怒りゲージが一瞬で振り切れる
「そうだな、お前たちに選ぶ恐怖を味わせてやる。ここで大人しく降参して俺の眷属になり恥をかかずに済むか、それとも惨めに敗北し眷属になりながら恥もかくか。さてどちらがいい?」
「てめぇを手下にして一生恥かかせてやるッ」
「お前たちが短絡的で助かった」
想像通りの返答だ。
「ちょっと!煽りすぎなんじゃない?完全に怒っちゃったよ?」
「大丈夫だ、なんら問題ない。手出しは無用だ」
「いや、出そうとしても出せそうにないから心配してるんだよ!?」
「まあ焦らず誠也の報告でも聞いててくれ」
完全にキレた竹嶋が顔を赤くさせながら言う
「[顕現 : デザートイーグル 4丁]」
「[顕現 : 12.7mmゴム弾マガジン]」
「ふむ、拳銃クラスじゃ最強の銃を顕現させたようだが・・・よかったのか?アサルトライフルじゃなくて。たかだか一回の装弾が8発しかないのに倒せると思っているのか?」
「は?何言ってんだ?これだけでもオーバーキルだろうが」
「いや、普通銃を避けられる人いないから無理だって」
味方からも突っ込みが入った。
朗は意図的にそれをスルー。
「舐められたもんだなぁ!」
「何言ってんだよあいつ。おい咫九人もうやるぞ」
「わかった」
合図と共に二人は銃を構える。
「わざわざタイミングまで声に出すとは‥‥‥お前ら本当に連携いいんだろうな」
腰にさしてた二本の模造刀のうち一本を片手で構える
「どうやらお前の方が筋金入りの馬鹿じゃねぇか」
「模造刀ごときでゴム弾とはいえ銃弾切れるわきゃねーだろうが」
「構わん、さっさとやって証明すればいいじゃないか」
「くっ、減らず口を」
「今すそんなこと言えなくしてやる」
パァン
パァン
パァン
パァン
銃声が4発
朗はそれを・・・
「[・・・の・・・にする]」
1発も食らわず立っていた
〜〜 ーーーーーーーーーー 〜〜
粉塵の中から現れた朗は無傷だった
「は?おかしいだろ。なんでボールに傷1つすらついてねーんだよ。ズルしたのか!?」
「はぁ。自分の思い通りに行かなければズル扱いか。なかなかどうしてお前達はつくづく幼稚だな」
「てめぇ・・・」
「お?どうした?もうボキャブラリーが尽きたのか?貧弱なことだな」
さらに煽りを入れる朗
「おっと失礼。バカに横文字を使ってもその頭じゃ理解できなかったか。申し訳ない」
鼻で笑う始末
「死ね、クソ野郎」
銃声が14発、浩が両手に持ってる銃の装弾数分を一瞬で撃ち尽くす
「ボキャブラリーくらい知っとるわぁぁぁ」
あたりが再び粉塵に覆われる
それが晴れた時現れたのは、身体中インクまみれで倒れ伏す朗・・・ではなく
「はぁ、変わり映えしないな」
かすり傷1つ負うどころか1歩すら動いていない朗であった
「なんで当たってねぇんだよ。本気まで出したんだぞッ」
「だからどうした。当たってないこの現実こそが全てだろ?」
「だから、俺の言霊の効果もあって外すことなんざ有り得ねぇんだよ。じゃあズルしてるしかねぇじゃねぇか」
「はぁ、幼稚さここに極まれりだな。会話にならない」
わざわざ仕草までつけて残念さを強調する朗
「いや、どうやったか分からないから教えてくれない?」
朗はジト目で結衣を見る
「いや、ズルしたとか思ってるわけじゃないから。」
「それを聞けて何より。種明かしをするほどでもないが、あえてするならば・・・簡単なことだ。飛翔してくる弾丸を切るのではなく、逸らせばいい。」
「確かに、模造刀の表面に擦過痕が多く付いてるけど‥‥‥普通とんでくる弾丸を視認することはできないと思うんだけど?」
「なんのためにわざわざ、ボールを5つ全て胴につけてると思ってるんだ?視線、銃身の角度から対象となってるボールを割り出し、引き金を引いたのを見て弾が飛んでくるタイミングを知る。あとはそのタイミングに合わせて刀を振るだけ。簡単だろう?」
「いやいやいやいや、そんなの普通できないわよ?」
「じゃあどうする、むざむざ当たれと言うのか?どこにくるのかもわかってるのに?残念だよ大塚」
「常人には出来ないことで残念とか言われても・・・」
「ペチャクチャうっせぇな、。そんなことできるわけねぇんだからそいつの言うことなんざ無視でいい・・・」
パァン、パァン、パァン、パァン、パァン
竹嶋を遮り、銃声が響く
「信じるか信じないかはお前次第だが・・・痛い目を見ても責任は取れないぞ」
銃声の主は朗が構えたモデルガンによるものだった
「うそ、抜き手がまるで見えなかった・・・」
慣れた手つきでマガジンを換える
その時誠也から指示が入った
[大塚、竹嶋が銃を2丁とも再装弾し終えたら言霊を使って奪え]
「え?あ、わかったわ」
「さて、小手調べは済んだ。そろそろ終わりと行こうか」
「ウグッ、ゴホッ、ちくしょう。なめやがってぇぇぇぇぇぇ」
「ふむ、ボールにも弾く言霊を付与したか。少々厄介だな」
「これがある限りテメェなんか目じゃ・・・」
鉄製の刃を伏せた投擲用ナイフがインクボールに寸分違わず飛んでいくが弾かれて終わる
ただし、衝撃は残したまま
「ゴホッ‥‥‥どんな力で投げればそんな威力に‥‥‥グガァ」
囮だったナイフの陰に紛れて2振りの刀を振るう
振るわれた刀は竹嶋のボールを一つ残して破壊し、そのインクをまき散らした。
「浩ッ‥‥‥てめぇよくもやりやがったなっ」
2丁の銃を構え、発砲しようとする篠山。
引き金に指をかけたその時
「“天の鳥の止まり木”」
「何?あ!銃が・・・」
結衣の手に顕現された銃4丁が現れる
「誠也の指示か?まぁどちらにしろナイスなタイミングだ。<弾>に対して<集>をよく使いこなしてる」
「どういうことだ!俺の<弾>は結衣ちゃんの<集>と同じ12画だろ。同じ強度じゃねぇか!」
「簡単なことだ。大塚の<集>は常に先手に回れるのに対してお前の[弾く]は常に後手だろう。先手必勝を絵に描いたような例だ」
篠山が持っていた銃を結衣が回収する。
「朗くんッこれを」
結衣から銃を4丁受け取った朗は
「お手柄だな大塚」
銃をホルスターにしまい、模造刀で篠山のボールを叩き割った。
朗は疲労と痛みで座り込んでいる篠山と竹嶋の肩にそれぞれ手をかける
「さて、もう一度言う。[降参して配下になるか惨めに足掻くか、どっちがいい?]」
「死ねよバーカ」
「くたばれ」
「そうか、残念だったな」
そう言い二人の最後のボールを銃で撃ち抜いた。
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