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選択未来  作者: ほたての時代
日常編
25/26

二十三話 一年 対 二年 陸 対処

「清海、今どこにいる?」


[「ある程度足止めできそうになるまで手伝ってたから今2階だよ。どうしたの朗君。」]


通話相手の声には余裕がある。間に合ったようだ。


「もしかしたら階段以外の方法で1年生たちが階を移動しているかもしれない。十分に気をつけてくれ。」


[「わかった。教えてくれてありがとう。」]


「あぁ、礼は誠也に言ってくれ。そちらに俊哉達を向かわせた。合流して各階の制圧を頼む。」


[「了解だよ!」]


通話を切り進行の速度をあげる。


「俺たちは1年の行動を探る。いくぞ。」


「はいはい。行けばいいんでしょ行けば。」


やる気のない咫九人の返答にしかし朗は反応しない。釣れないその態度につまらなさげな表情(顔)をした。


誠也の誘導を受けながら黙々と一同は進んでいく。割りとすぐにその部屋は見つかった。


「なるほど、シンプルな仕掛けだ。これはまだ数カ所あってもおかしくないな。」


それは巨大な衝撃で壁付近の床を階層ごとぶち抜き、繋がった穴の壁に足場を作っただけの簡易的なはしごだった。単純な機構であり、非常に効率がいい。こちらの目を欺くには十分だった。


1年生の襲撃があることを知らせようと通信機に手をかけた瞬間アナウンスがあった。と、同時に2本の着信が来る。凪斗からのものと今B班を率いている宍戸のものだった。


[「朗君、襲撃があった。]


[「こっちもだ!こっちには秋遠が来た。交戦してるが分が悪い!奇襲で既に1人やられた!」]


「思ったより早かったな……仕込みをしていたのは同じだったか。」


時をあまりおかずに1人、また1人と脱落者が増えていく。2年の脱落者数が1年のそれに追いつくまでそう時間はかからなさそうだった。


「さすが軍事科か。1年でも強い奴はそりゃいるよな……清海。」


[「何?」]


「俊哉とお前なら強い生徒がいても問題なく勝てるはずだ。さっきも言ったが2階の制圧を最優先で頼む。」


[「それはいいんだけど僕の分隊はもう人数いないよ? 防衛はきついと思うんだけど」。]


「それの心配は不要だ。」


[「どうして?」]


「誠也によれば急設した階段は各階二箇所ずつらしい。加えて今二階以上にいる一年生は精鋭だそうだ。つまり俺、伊賀、A班の待機組、竹嶋の4人で一階は十分守りきれる。防衛は任せてくれ。」


[「なるほどね。わかったよ。ちょうど今藍倉君が合流した。作戦に移るよ。」]


「よろしく頼む。」


通話を切り、至急対策に移る朗。今見つけた通路を竹嶋と篠山に任せ、2階にあるもう1箇所の簡易階段まで向かう。


パァァン


ちょうど登ってきた1年生に銃弾を撃ち込み、後続の生徒を牽制した。


「やぁ、初めましてだな一年生。遊んでいこうじゃないか。」


「や、山庭先輩……。」


一年生が固唾を飲み込んだのを合図に戦闘が始まる。


朗は階下の一年生を制圧すべくスモークグレネードを投げ込んで1階へ飛び降りた。


〜〜 ーーーーーーーーーー 〜〜


秋遠あかねは天才だった。福島では敵と思える人物がいないとまで言われるほど、その言霊は精錬されていた。事実、県外である東京高専に入学し、その同級生の大半よりも強いと自他共に認められている。


「[生成]‼︎ 」


「 くっ……」


宍戸の足元から“棘”が生え、足裏を刺されて機動力を削がれる。ベストのおかげでダメージはないが、怪我の深さに伴った行動阻害はしっかり反映される。また、決して浅くはない傷をくらい続けたことによって、システムが失血死と判断する出血量の底が見えつつあった。


「 (なんて精密な言霊操作なんだ……しかもあれだけ使って息も切れてない。これは厳しそうだな……。)」


今刺された左足、そして先ほど刺された右腕がすでに動かなくなりつつあった。


「勝負あり、ね。」


事実、ほぼ動けず肩で息をしている宍戸にはこれから逆転する余裕が残っているようには見えなかった。


そんな宍戸にとどめを刺すべくあかねが物陰から姿を現して近づいていく。


「くっ……<貫けっ。>」


戦闘の最中に生じた破片をあかねに向かって投げた。不安定な体勢の中放たれたそれはあかねの顔めがけて飛ぶが、誰が見ても破れかぶれの一撃とわかる攻撃。当然当たるはずもなくあかねは軽々避ける。


「なんで私がここに来たかわかる?」


その場で武器を振るうも、ながされ、受け止められ、時には言霊を付与した瓦礫を投げるも躱され、さらに左腕も刺される


「あなたの言霊は対人戦闘において私の言霊の下位互換だからよ。」


そのままあかねは宍戸の肩に触れこう告げる。


「ごめんなさいね。生意気な後輩で。」


「 <生成>」


ベストに使われている金属から棘が生え、内側から滅多刺しにされた。


『宍戸 透君の脱落を確認しました。脱落者は言霊を解除し、場外へ出てください。残り時間は1時間です。』


何も言わずに脱落者の待合室へ向かう宍戸。その姿を尻目に秋遠 あかねとその分隊は一息ついた。


「あかねちゃん、お疲れ様!」


「俺が見張っておくからお前は一旦休め。」


「……悪いわね、任せたわ高木。それとありがとう、麻友。」


「おう!」 「うん!」


宍戸が天舞音の代わりに率いていたB班の残りのメンバーは作戦通り宍戸が時間を稼いでいる間に部屋を離れ、誠也の指示の元2階へ通じる階段がある部屋まで逃げていた。


「でも桑田君すごいね。まさかここまで見通してたのかな。」


「? あぁ抜け穴のこと? 保険じゃない? もし攻城戦が選ばれたらそれは相手が選んだっていうこと。相手がわざわざ不利な戦場を選んだっていうことはそれなりに勝てる算段があるっていうこと。つまり“城に主力を安全に送り込める手段がある”っていうことになる。」


「なんでだ?」


護衛兼見張りをしていた高木が話のついてこれなくなる。


「アンタほんとに馬鹿ね。攻城戦の作戦考えている時に桑田が言ってたんじゃない。」


「いや、話が難しすぎて途中から全く聞いていなかった。」


キリッという効果音が聞こえそうなくらいドヤ顔で淀みなく宣言する。


「……高木に作戦を聞くほどの能があることを期待したこっちが馬鹿だったわ……。」


これには秋遠あかねもお手上げだった。


「攻城戦の攻め手がしんどいのは偏に“主将がいる城にまで入れない”からなのよ。いくら拠点が4箇所あるとは言ってもそこから堀を超えて、門をくぐるために集中砲火から逃れないといけない。門の正面だけじゃなく狭間からも射線が通るからまさしく至難の業。高木、アンタならどうする?」


「言霊使って突っ走る!」


「……期待通りの回答どうも。でもアンタでも無理ね。距離が相当あるから。言霊も無限じゃないし飽和攻撃食らっておしまいよ。実際過去の試合でも勝ち試合は相当少ないわ。当然相手もそれを知っているはず。でもなお選んできたっていうことはかなりの自信がある証拠なのよ。」


「なるほど、分からんッ!」


「アハハ……私はわかったよあかねちゃん!」


懇切丁寧に説明したのに理解されず崩れ落ちるあかね。


「もういいわ。もう少し休みたいから入口見張ってて。」


「おぅ! 任せとけ‼︎ …………なんだ?」


「どうしたの?高木くん。」


「……いや、気のせいか?」


高木は握った銃をまじまじと見ている。前後左右から角度をつけて伺うも特に変哲はない。しかし……


「うおっ! 銃がっ!」


「なんなのこれ ⁉︎ 」


突如として銃だけでなく他の武器もひとりでに動き始め、窓の外へ飛び出していった。


ご拝読いただきありがとうございます!


高評価、誤字脱字報告、その他感想などいただけると非常にモチベ維持につながるので良ければよろしくお願いします。

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