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選択未来  作者: ほたての時代
日常編
16/26

十五話

一時間遅れた上に申し訳ないのですが、今週と来週は少し短めになります。

すみません。

顔から脂汗を流し、激痛に必死に耐える神山拓巳。


「クソがぁぁぁぁ!!」


「だから言ったろうに。」


そんな神山に向かって朗はこの試合を終わらせるべく、とどめを刺しに行こうとする。


「『オススメしない』ってな。」


激しく呼吸しながら怒りで朗を睨め付ける神山。


「まだだ・・・・・・まだ、勝負はついちゃいねぇぞ・・・・・・」


「何これからさも逆転するような主人公を気取っている。・・・まぁいい乗ってやるよ。そんな状態のお前に何ができるっていうんだ?」


「俺が・・・・・・増幅できるのは・・・・・・音に限る訳じゃない・・・・・・こんなふうになァァ!!」


手に持っていた銃の成れの果てを捨て、朗に飛びかかる。流石に不意を突かれたのか朗は腕を捕まえられた。


「焼き焦げやがれっ。『増幅』‼︎」


・・・・・・・・・・・・しかし何も起こらない。


「なんで・・・・・・どうしてっ!」


「残念だったな。これでおしまいだ。」


そう言って朗は神山の首筋に手刀を落とし、気絶させる。


[ 神山拓巳の戦闘不能を確認した。この勝負は山庭朗の勝利とする。また、この試合で動いたポイントも含めた合計で2組が1組を上回ったため今回の合同演習は2組の勝利とする。以上でこの授業を終える。解散!!]


勝利し、2組のクラスメイトたちのところへ朗は戻る。

そこには朗の力を称賛し、勝利を喜ぶ友たちがいた。


「すげぇな朗‼︎ 神山に手も足も出させずに終わらせるなんてよ。」


「まさしく完封だったじゃない。どうやったの?」


「せやで。一体どないな手品使ったん?完全にやられた思ったわ。」


 口々に称賛を述べたのち、朗が神山を下した手段を聞いてくる。


「・・・・・・聞きたいのか?」


「聞きたいわぁ。もったいぶらずに教えてぇな。ほら、このとーり!」


 あざとい聞き方でおねだりをする天舞音。そんな天舞音を見て朗はため息を吐きつつ語り出した。


「種明かしはしてもいいが・・・・・・そんなに面白いものでもないぞ? まぁそう言って食い下がる連中でもないか・・・・・・。神山拓巳の能力は『増幅』だった。攻撃方法は増幅した音波。神山にも直接言ったがまぁ『波』ってことだ。つまり波にある性質がそのまま音にも当てはまる性質ってことになる。」


「言ってたなぁ・・・・・・でも物理法則に干渉する言霊である以上、同系統の言霊でしか対抗できんはずやない? 現にうちも近づくことすらむずかった訳やし・・・・・・」


「あんな集中攻撃食らってなんで無傷なわけ?」


雪果と天舞音が朗に詰め寄る。


「伊賀も言ってる通りそこで物理法則が出てくる。ここで重要になってくる性質が『回折』というものだ。」


「「『回折』?」」


「そうだ。お前たちはテトラポットって言う道具に聞き覚えはあるか?」


「あ、私あるよ朗くん! 小さい頃日本中を転々としててね。 その時どこかは忘れたけど海岸で確かに見たと思う!」


「海に行くことなんてほぼねぇからなぁ・・・・・・聞くだけ聞いたことはあるぜ。

でもそれがどうなんだ?」


今度は結衣と誠也が朗の問いかけに答える。


「テトラポットは海の波を防ぐために作られた道具なんだがこれをおくと波は衝突して弱くなる。もちろん完全に消えるわけじゃないがな。じゃあここでさらに質問だ。弱くなった波はどこに行くと思う?」


「さぁてどうなるんやろなぁ・・・・・・運動のベクトル自体は消えへんのやから背後に回るんちゃうかな?」


「伊賀・・・・・・お前案外理系なのか? ・・・・・・まぁ何はともあれ伊賀が正解だ。その現象のことを『回折』という。大雑把に説明するとこんな感じだ。」


同級生の意外な一面に眼を見張る朗。

「『回折』はわかったけど、じゃあ最後の場面で神山君の腕が折れてたのはどうして?」


「結局神山の攻撃は微小な音を増幅して音波にするものだった。神山はどこから“微小な音”を拾っていた?」


「拳銃ね。空撃ちした時になる音を『増幅』していたわ。」


「そう、もっと詳しくいえば引き金を引いた音ではなく、撃針が押し出された時の音を『増幅』することで空気を薬室から銃身へ通らせ、音に指向性を持たせて攻撃として成立させていた。だからまぁ言い方は悪いが一種の空気銃みたいな使い方をしていたわけだ。」


「まぁそう言えるかもしれねぇな。それがさっきの話とどう繋がるんだ?」


「じゃあ逆に問おう。神山が最後怪我した時、銃がどうなっていたか。多分伊賀は見てたから黙ってるんだろうな。どうなっていた?」


朗に話を振られ、天舞音が答える。


「爆ぜてたなぁ。ちょうど銃身のところからひしゃげてるように見えたわ。」


「つまり... 暴発した? そんな朗君にとってちょうどいいタイミングで?」


「いや、あり得ないだろう。空気銃とさっき奴は言ったんだ。詰まるような物がない。」


身内で話し合いが進むが、なかなか納得のいく答えが見当たらない。

そこにおよそ答えに当たりがついている天舞音がヒントを出す。


「銃は暴発したような壊れ方をしていた。でも壊れた銃は暴発しようがない空気銃。じゃあ空気銃が壊れるためには何があればいい?」


「まぁ詰まるものがあれば空気の逃げ場がなくなって暴発するかもな」


「そう、それや。じゃあ朗くんたちが戦っていた空間で何が障害物たり得るんやろうか」


「それがわからないから悩んでいるんじゃない。あなたはわかっているの?天舞音。」


「うちかて確証はないよ?でもこれしか選択肢がないんとちゃうかな。」


その言葉で一同の顔が驚愕に染まりつつある。若干2名をのぞいて...


「ん?みんなわかったのか?」


「もったいぶらずに教えろ!天舞音」


「少しは自分で考えなあかんよ朱里。ええか?あの限られた空間の中で、しかも銃の口径に入るような小さなもので、あの空間の中を比較的自由に動き回る可能性を秘めた物体はなんや?」


「なに言ってんだ伊賀!そんなもん銃弾くらいしかないだろw?でも神山は撃ち尽くしたから空砲だったんじゃねぇか。なんもねぇよ。」


小馬鹿にしたような態度をとる誠也。しかし、それに対して天舞音の反応はまさに我が意を得たりといった顔だった。


ご拝読いただきありがとうございます!


高評価、誤字脱字報告、その他感想などいただけると非常にモチベ維持につながるので良ければよろしくお願いします。

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