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選択未来  作者: ほたての時代
日常編
11/26

十話

遅れてすみません...

予約投稿したと思ってたのですが...

〜試合前〜


「朗君、これから実技訓練始まるけどジャージの上は脱がないの?」


朗の通う東京言霊高専の体育服(実技は基本体育服を着用して行う)は動きやすいように基本ジャージの半袖半ズボンで、その時その時によって上から着られるジャージと長袖のズボンもある。多くの生徒が半袖半ズボンでいる中、朗は上のジャージも着用していた。


「実技訓練だし相当暑くなると思うよ?いくら春とはいえ。」


「心配は無用だ大塚、別に俺は寒くて着ている訳じゃないさ。」


「そう?ならいいんだけど。」


「そもそも去年は名古屋高校の軍事科に居たんだ。厳しさも分かっているつもりさ。」


「そういえばそうだった。お節介だったね。」


「気にすることもないぞ。」


「ならよぉ、なんで寒くもねぇのに上着るんだ?」


「逆になぜだと思う?」


「なんでかなぁ?・・・思い出してみればこれまでずっと着てるね。うーん人に知られたくない、見られたくないものがあるから隠している?」


「そういうことだ。」


「あ!ならお前が隠してんのは傷じゃね?さては腕とかに派手な傷あるんだろ」


「何を根拠にそう思う?」


「だってよぉ、しょうもねぇことで負った傷なんて恥ずかしくて人にいえねぇだろ?詮索なんてされたら真っ赤になるんじゃないかと思ってw」


「そんなことで恥じるつもりはないし、そもそもそんな傷なんて滅多に負わない。はぁ。見ていられない。せっかくの大塚の名推理からそんな所に行き着くなんてな。大塚に謝った方がいいんじゃないか?」


「ちょっと茶化しただけでそこまでいうのかよ!もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいんじゃないか?!」


「アホなことを言うお前が悪い。・・・話を戻すぞ。俺が隠している人に知られたくないものは何か、だったな。お前たちに聞くが、俺が出した物の中で“どこから出した?”と感じたものはなかったか?」

「?・・・・・・‼︎ 1戦目の竹島くんに向かって投げたナイフ! 直前までどこから出したか分からなかった!」


「その前にやった銃撃の抜き手もまるで見えないと思っていたがもしかしてそれもか?」


誠也の問いに対して無言で上のジャージのファスナーを開け、中を見せる朗。

ジャージの内側には銃やナイフのホルスターが取り付けられており、また袖口やボトムスには投げナイフなど小さな武器が収容できるようになっていた。


「見え見えな模造刀を二振り持っていたり、太もものホルスターにモデルガンを2丁持っていたのは・・・」


「自身の武器が刀だと思わせる、ミスリードさせるための材料ってことね」


誠也が推測した内容を結衣が引き継いで言う


「まぁ単純に入らなかっただけって言うのもあるが・・・・・・」


一旦言葉をきる朗。そこで2人を順に見回し、


「俺の戦闘スタイルは相手の戦闘スタイルでは対応しにくいところからせめていく受けのスタイルだからな」


悪い顔でほくそ笑んだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


回想が終わる。

 試合前のやり取りでも分かる通り朗は様々な手段を持って天舞音を翻弄する

しかし、天舞音も様々な技をもって朗と相対する。両者の実力は拮抗し、お互いに相手の攻撃を食らったことで浅いとはいえ身体中傷だらけだった。残りのボールは両者とも2個のみだった。


「“稲光”」


ドパン ドパン ドパン

 左右の動きのフェイントを交えるために方向を変えようと天舞音が立ち止まったポイントに銃弾や投げナイフなど、飛び道具を打ち込む朗。

天舞音は飛んでくるそれらを冷静に斬り落としていく。

が、しかし


「そこで動きを止めれば当然技の流れは止まるよな?」


 朗の狙いはボールを破るためではなく、天舞音の動きを止めることだった。動きを止めた天舞音に対し、回避の行動をとらせないよう矢継ぎ早に攻撃を仕掛ける。朗は両手に持っている拳銃の残弾数全てを天舞音に打ち込んだ。回避をさせず、確実に仕留めるために天舞音が避けた場合に当たる位置にも撃つ。天舞音は回避行動をとらず、自身に当たるものだけを正確に斬り伏せる。その隙に朗は再装填を済ませていた。


「やるなぁ、できれば刀で仕合たいもんねんけど」


「言ったはずだ。刀じゃ勝てないから勝てる方法で勝ちに行くと。」


「聞いた聞いた。独り言やさかい、聞き流してぇな。」


 激しい攻防の応酬刹那の隙が二人の勝敗を分ける。その最中で朗の持っていた拳銃が中で詰ま(ジャム)り、排弾されなくなる。


「しまっ!!」


 これを好機と見た天舞音が“稲光”で突き込む。これに対して朗は持っていた銃を上に投げ、腰に差していた刀“菊一文字則宗”で迎え撃つ。この時、天舞音は間近の朗の表情を見て悪寒を感じ取る。すなわち悪魔のような顔(邪悪な微笑み)を浮かべた朗を。天舞音は本能に従ってすぐさま回避しようとしたが・・・・・・鍔迫り合いになっていた体制のまま朗が力を抜き、なおかつ天舞音の後方に倒れ込んだため、天舞音の回避はならなかった。


 体勢を崩された天舞音は今まで力を込めていた分前方につんのめるが、戦いに慣れていたためすぐに立て直す。その一連の動作はプロである五十嵐教員をして唸らせるほどのものだった。ただ天舞音は知っていた。自身と互角かそれ以上にできる相手に対して一瞬の隙すら見せてはならないこと、見せるとどうなるかということ、そして朗が移動した先にはなにがあり、彼が何を企んでいるかということを天舞音は知っていた。これから来るであろう攻撃に備えるために正面を向こうとしたその時、この戦いの中で聞きなれた音がする。


“ガチャン”


 それは弾倉内の次弾を引き込み薬室へ装填する音。いつでもこちらを攻撃出来る、これから攻撃するのだという意思の表れ。天舞音は振り向く選択を破棄し、その場を全力で飛び退く・・・・・・無意識のうちに。焦っていたとはいえただ逃げるだけでは朗から逃げられないことを失念していた代償はボールを1つ破壊されることだった。


「なぁ、ジャムってたんやないの?」


「ブラフさ。騙されただろ?」


「悔しいわぁ。はぁ剣術では勝ててもそれ以外が混じるとキツイなぁ。おまけに君の言霊ズルイて」


「まぁ攻守ともに使いやすくはある」


現状は天舞音の残機が1に対し朗の残機が2。朗が一歩リードした。


「もう後がないなぁ。楽しかった試合もこれにて仕舞や。」


刀を鞘に収め居合の構えを取る


「一ノ型 光陰  終  “光彩陸離”」


 伊賀流の技の名前は自然現象や、それに準ずるものからとられたものが多い。初代伊賀流師範は自然を重んじ、決して人が太刀打ちできないものとして敬っていたとされている。名前はそこから取られたのだろう。


 一ノ型 終技 の名前 光彩陸離とは「光が入り乱れて美しい様」を示す。伊賀流の全型中最速を誇る“光陰”の型を終わらせるための技の内容は“攻撃と攻撃の間隔を極限まで狭め、様々な方向から同時に攻撃しているように見せる”というもの。その攻撃している姿は残像が発生しているほど速く、また入り乱れているように見えるため、光彩陸離と名付けられた。


その技が今、朗に向かって繰り出される。


「(成程、これが使える伊賀天舞音が剣術大会の優勝争い常連というのにも頷ける。もしこれがもしこれが実戦で使われようもんなら流石になりふりかまっていられなかったな。今は殺す気がないからどこに当たっても多少の傷だけで済むだろうが。)」


「(とか思ってんのちゃうん?朗君は。言ったで?ウチがやりたかったのは痛みの伴う仕合や。かすり傷程度なんか何もおもろないやろ。今ウチが繰り出してるのは同時に3、4つ程やけど本気やあらへんで?ウチがお人好しや思うたら大間違いや)」


 ここからさらに天舞音の速度が上がる。今まで同時に3つや4つ程度だった攻撃が10を超えるほどとなった。今までかすり傷程度を狙った攻撃が今度は肉を削ぎ落とすことを狙うほど鋭くなる。


 朗の表情から余裕が消える


「(危なっ!これはちょっと捌くのきついぞ。いくら回復できるとはいえなかなか際どいとこ狙ってんじゃん。狙いは出血させて動きを鈍くさせた俺を始末するってとこか。面白ぇ、返り討ちにしてやるよ)」


 単純に手数が10倍の相手に様々な手を駆使して対処する。時にナイフで、時には弾丸で。

それでも完全に捌くことはできず、体には傷が増えていく。天舞音の狙いは着実に近づいていた


「(ここからは俺の限界にチャレンジだ。持てる技術全てを費やして勝ちにいく)」


朗は今手にしていた刀、菊一文字を地面に突き刺し、両手に拳銃を構える。

学校から支給されたモデルガンのガバメント4丁、竹嶋たちから奪ったデザートイーグル4丁、計8丁と各弾倉内に装填されている7発ずつ、計56発が朗の現状で使える弾数だった。もちろん弾倉はまだ他にも予備があったが、再装填できる程の猶予はない。ここで朗は最も効率的かつ有効的な弾の使用方法を用いた。それはすなわち、最初の一撃に正確に攻撃を当て、生じた隙をついて回避に専念するということである。


 光彩陸離は断続的に攻撃を当て続ける。同時に見えてもその実極々わずかなタイムラグは生じている。朗はその初めの一撃に銃弾を当てて阻害し、阻害により生じた隙によって極々わずかなタイムラグを極わずかなタイムラグへと昇華しているのだ。ただただ撃つだけでは正面から斬られ、隙など生じない。朗は微妙に角度をずらして天舞音の刀に当てることによって前述の結果を引き起こしていた。いくら言霊によって未来が分かるからといって攻撃中にそのような芸当が出来るのは血の汗を流すほどの練習の成果である。まさしく持てる技術を全て費やした結果なのだ。


 それでも生じる隙はごくわずかなものだけなので、当然避けきれない攻撃も出てくる。その攻撃は受け流したり、刀身に銃弾を当てることで回避していた。今の状況が続けばどうなるか?答えはシンプルだ。朗の持っている銃弾がなくなる時が来る。56発など、今の状況ではとても足りない弾数。その時が来るのも時間の問題でしかなかった。


「(光陰でこんなに長く一緒に遊べたのほんま久しぶりやわ。流石の一言やな。でも今この状況が続けば確実に弾が尽きる時が来る!絶対に装填しようとするやろうけど、ウチは絶対させへん、刈り取ってあげるで朗君)」


その時はどれだけ足掻こうとやって来る。朗が手に持っていた最後の2丁が空砲になった。



ご拝読いただきありがとうございます!


高評価、誤字脱字報告、その他感想などいただけると非常にモチベ維持につながるので良ければよろしくお願いします。

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