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選択未来  作者: ほたての時代
日常編
10/26

九話

伊賀家の開く道場では何よりも足運びが大切だと教えられる。移動にしても攻撃、防御にしても全てに関わってくるのがこの足運びだからだ。通常の門下生が伊賀家の剣術、殺し合いを前提とした剣の型である伊賀流を学ぶのは許されていない。


 2ヶ月に1回行われる試験で上位30位以内に入ること、そして伊賀流を習得した実力者30人のうち誰かを倒すことで、学ぶ資格があると認められる。そして伊賀流を習得し、実力者30人の中の1人に2連勝するとその人と順位が交代し、伊賀流の使用が認めらるのだ。


 ちなみに今伊賀流の使用が認められているもののうち1位が天舞音、5位が朱里、13位が雪果である。特に天舞音は師範代の娘にして門下生最強で、使用が認められてから一度も負けたことがない。これまでに戦いで雪果や朱里、天舞音が使ってきたのは伊賀流剣術ではなく、基本的な動きのみ。実質的な伊賀流はここから始まる。


「一ノ型 始 暁光 」


「! っぐ」


避けようとした方向に天舞音の攻撃が飛んでくる


「(避けようとした方向に攻撃が飛んできたな・・・言霊使うか) [この未来にする] (おいおいおい、どこ動いてもボール割られるぞ。暁光は相手の動く先の対象を斬る技か・・・なら選択すべきはどこ選んでも一緒だな。)」


朗は動かないことを選択する。

当然、止まった朗に天舞音はボールを目掛けて攻撃してくる。


「(伊賀が次狙うボールは・・・左脇腹ね)」


今、両者はボールをそれぞれ頭、右肩、左肩、右脇腹、左脇腹の5箇所につけている。

従って相手がどれを狙うかは確率1/5なのだが、朗の未来視はそれが80%の確率で当たる

この場に置いてどれに対して防御すればいいのか分かるのはかなり有利だ。

次の標的になっている左脇腹のボールを守るべく体制を整える朗だったが・・・


「何ッ!?」


攻撃が飛んできたのは左脇腹のものではなく、右肩のものにだった。

辛うじて避ける朗。右肩のものにはギリギリ割れない程度の傷跡がついていた


「(外したか?20%の確率の方が当たったのか?あまり信用しない方がいいかも入れないな。)」


一度引いた天舞音がまた向かってくる


「(今度は右肩か)」


 右肩のものに対して防御の構えを見せる朗。しかし実際に攻撃されたのは頭のものだった。

 攻撃した後はやはり一度引く天舞音。


「(やはり偶然じゃないな。一体どうやっているのか‥‥‥)」


 同じ攻防が数回繰り返され。そこから朗は答えに辿り着いた。


「(そうか俺が決めるのを感じ取ってから別の場所にしていたな。)」


 要するに後出しジャンケンである。まず自分がどこを狙うか決める、未来視でどこに飛んでくるか分からせる、構えの姿勢をとったら決めたところとは別のところを狙うというわけだ。


「(相手も気づかれたことに気がついたか‥‥‥)」


「おしかってんけどなぁ、ギリギリ割れんかったわ。ええ反射神経しとるやないの。でもあれで終いや思ったら大間違いやで?」


剣を鞘にしまい足に力を蓄える天舞音


「一ノ型 発 稲光」


 伊賀流は技の流れを指す“型”が存在し、およそ10ほどの型がある。そこにさらに技が5つ以上内包されている。


 技には種類があり『始:流れを作る技』『発:勢いが一番ある技』『落:流れを意図的に弱め相手を惑わす技』『堕:2番目に威力があり、相手の力量を図る技』『終:最強の威力を持って型を終わらせる技』の最低でも5つに分類されている。型によってはこれ以上に技があるものもある。


 天舞音が現在使用している型、一ノ型“光陰”は伊賀流の型中最速を誇るものだ。今から出る技は最速の型の中で一番勢いのある技ということになる。


  左右の動きを交えた突進技、もっと有り体に言えばジグザグに動きながら天舞音が朗に迫る。相手を左右に揺さぶりながら攻撃をするというのが“稲光”なのだ。スピードの乗ったそれはそれなりに威力も乗っていた。金属が激しくぶつかり合う音が部屋に響く。朗は紙一重で交わし、時に剣を合わせて相対した。その状況が天舞音の呟き一つで移り変わる。


「一ノ型 落 “陰影”」


 朗の前から天舞音の姿が消える。


「(どこに行った!)」


 あたりを見回す朗。その隙をつくように放たれた言葉と技、


「一ノ型 堕 “暗影”」


 それによって朗の体につけられたボールが2個割られた。


〜〜 ーーーーーーーーーー 〜〜


 一ノ型『 堕 “暗影” 』は『 落 “陰影” 』と組み合わせてはじめて効果を発揮する技である。『“陰影”』はそもそも『始 “暁光”』を使えないと綺麗に使うことができない。技に流れが存在するのである。天舞音が使用した『“暁光”』とは相手の動きを注視、観察し次の動作を予測して妨害する技。相手の癖を観察し、生じている意識外の空間に瞬時に移動して姿を眩ませたように見せるのが『“陰影”』。その意識外の空間から奇襲を仕掛けるのが『“暗影”』。つまり朗は完全に予測外のところから攻撃を加えられたということになる


「意識外からの奇襲に対する反応はまぁまぁ及第点、っていうとこやなぁ」


「ボールを2個割られたからか」


「もともと一緒に3個割る気やってん」


「2/3という結果から・・・・・・」


「及第点ということやな」


「これで現状は3vs5だな」


「せやな。この調子でガンガンいくで?」


「もうちょっと手加減していただけると助かる」


 また天舞音が発技の構えを取る。


「“稲光”」


 技を繰り出し、朗に向かっていく天舞音。


「せっかく2本準備してくれたところ申し訳ないんだが・・・・・・」

 

 朗が向かってくる天舞音に呟く。


「もともと俺の戦闘スタイルは2刀流じゃなくてな」


 そう言いながら持ってた刀の一振り、一期一振を上へ投げる。天井はそう高くはない。なので当然投げた刀は天井に突き刺さる。朗の動きを注視していた天舞音は刀を目で追ってしまっていた。


「相手と違うジャンルで勝負を挑むスタイルなんだよ」


ドパン、ドパン


相手から目を離し、隙を晒した天舞音に懐から銃を取り出し銃弾を撃ち込む。目を取られていたことにすぐ気がついた天舞音は慌てて銃弾を回避しようとしたが


パァン


「へぇ、やるやん。してやられたわ」


放たれた銃弾の射線は天舞音が回避することまで読まれて撃たれたものだったため、自ら射線に割り込むと言う形で天舞音は2発食らった。


「これでまた勝負は振り出しだ」


「折角リード作ったんになぁ。もったいないことしたわ。」


「勝負はこれからだと言っていたな」


「せやけど・・・それがどないしたん?」


「いや、俺もそう思ってな」


どこからか短剣も取り出す朗


「先に言っておくが俺は純粋な剣技だけじゃお前には遠く及ばない。だから・・・・・・」


刀と短剣を構え、なおかつ銃をすぐに抜き出せるよう準備する


「勝つために手段は選ばない。尋常な果たし合いではなくなるがそれでもいいならやろう」


「ええやん、君の全力見せてぇな。」


ここに2人の第3ラウンドが始まる



ご拝読いただきありがとうございます!


高評価、誤字脱字報告、その他感想などいただけると非常にモチベ維持につながるので良ければよろしくお願いします。

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