転生
私禪院紬は普通のOLで日々仕事に追われながら生きている。
今日も残業を終わせ、疲れでフラフラしながら帰り道を歩く。
「(あのハゲ上司許すまじ…!)」
仕事ができない癖に偉そうにしやがって…!お前の尻拭いをさせられるこっちの身にもなってみろっ!心の中で呪詛を唱えながら歩いていると、突然右側から強い光に包まれる。
「え、」
理解出来ずにいると私の体は宙を舞い、ガードレールに激突する。……………ああ、トラックに撥ねられたんだな。そう理解した時には全身に激痛が走り、その場から動くことができなかった。
「(私、死ぬのかな)」
段々と痛みが感じられなくなってきた。血を流し過ぎたのか、頭がふわふわし、意識が朦朧としてきた。よくよく考えれば死ぬのも悪くない気がしてきた。仕事しなくていいし。
「(………さん、紬さん)」
頭の中から私を呼ぶ声が聞こえる。何?私はもう何もしたくないんだけど。
「(貴女は転生することが決まりました。つきましては何かご希望はありますか?)」
幻聴?死ぬ直前にして遂に頭が可笑しくなったのかな。あ゛ーもーどうでもいいや。
天使か神か死神か知らないけど、どうせ転生するなら異世界でチート使って楽に生きたい……!
「(承知しました。貴女に神の御加護があらんことを)」
けっ。なーにが神の御加護だ。こんな死に方させやがって。そんなの存在すんなら持っと楽に死なせてくれても良くないか?
ああー結婚して素敵な旦那さんと暮らしたかったなー。まあどうせ転生なんてできないし、異世界でチート生活なんて夢のまた夢だろうなー。
ああ眠い。物凄く眠たい。指先から冷たくなっていくのが分かる。
「(お母さん、お父さん、親不孝な娘でごめんね)」
最期に聞こえたのは救急車のサイレンだった。