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名推理?


◆PA銀野司の…名推理?


 ── 結局、辰徳氏殺害事件はある意味振り出しに戻ったのか?


 否。少なくとも20年前の誘拐事件の首謀者として捕まった寅二氏が嘘を吐くとは思えない。


 辰徳氏が亡くなる前の晩の関係者たちの証言から、一人は確実に嘘を吐いているだろうが。


 「それにしても、司を階段で突き落としたのは、誰だったんだろうな?」


 「ああ……それなら──」


 と、私が天土さんにお願いしておいた当時着ていたイブニングドレスの鑑定結果で判明したことを、業に告げようとしたら……


 「待て待て。銀野くんが突き飛ばされてただって?」


 「嬢ちゃんを階段から落とすなんてどこの鬼の所業だ?」


 警部さんと、金田刑事が非常に怒ってくれた。


 「あ~ ……まあまあ。この通り、怪我は軽傷で済んでるからね。」


 「しかし、未必の故意だろう。十分、殺人未遂が適用される案件だよ?」


 天土さんまで厳しい顔で対応してくれた。


 「な~るほどお? 司を落とした犯人がわかったぞ!」


 (またかよ、あのバカ!)


 「ほお? 黒井君。それで誰が司君に怪我を負わせたのかね。」


 (ほらほらあ。警部さんも完全に呆れ果ててるじゃないか。少しは空気読めよ、へっぽこ探偵。) 


 業が警部さん達警察関係者や私がはらはら危なっかしい笊推理を見下しているにもかかわらず、猪突猛進し始めた。


 「え~、俺と、あの時までは桜子だと思い込まされていた司が2階の客室に案内される途中で、先に2階の部屋にいたのは、10人。

 もちろんその条件では、階下から階段上にテレポートでもできる超能力でもない限り除外されるのは、晩餐会場の片づけをしていた家政婦長さんと乙女未知さん。

 辰徳氏の体調を心配して翌日の料理の献立を打ち合わせていた料理長さんと戌千代さん。

 遊戯室に移動していた寅二氏、牛久氏、正午氏、赤口拓巳氏。

 彼ら8人は無関係。

 次に先に晩餐の席を発っていた辰徳氏と弁護士さんと執事さんの3人は、まあ普通に考えても司を襲う動機がないし3人がかりで共謀する理由もないので当然除外。」


 へえ。業にしては、やるじゃないか。問題は次からだけどな。


 「次に一番近くにいた人から疑うのが普通だが、あの時偶然にも2つの小さな事故が起こった際での突発的な犯行だった。

 そう、家政婦長さんが手を滑らせて食器を割った音でみんなが何事かと驚いたこと。

 そしてもう一つ、調理室での不具合で停電が起きたことだ。

 停電が収まって灯りが付いた時に、俺たちを案内していたメイドの双舞通さんは階段の途中で壁に手をついてびっくりした様子で背中を向けてた上、司を襲う動機も理由もなく、偶然が重なった停電を利用しての犯行は無理だと思う。

 同じように駆け付けたメイドの双芽都さんは、俺と司の格好を見て何が起きたかわかっていないが心配そうに見ていた彼女も除外。」


 「ほお。黒井君なかなかいい感じじゃないか。」


 「まあ警部。これからですよ。

 だが俺たちの姿を見てわざとらしく悲鳴を上げた先舞花火さん。貴方はドジなのにクビにされず、若いメイドの愛人として4人目の妻になれるかもしれないと画策したのでは?

 しかし桜子という本当に血を引いた娘がいたのでは遺産の取り分が減ると思い欲張っって犯行に及んだのでは?」


 「え~。はなびい、そんなことしてませんしい。それにい、たっちゃんからは奥さんにはできないけどお、病で苦しむのが嫌だからそれまでは付き合ってくれってえ。

 お手当弾む代わりにって約束だったんですう。ここのアルバイトだけでもお、普通よりお給料全然いいしい。

 それとお。あの時はお二人が階段下でいちゃついてたのでびっくりしただけですう。ぷんぷん。」


 「た……たっちゃん?!」


 頭に手をやりながら、やれやれ結局またこれかと呆れ果てる警部。私もおバカと業に首を横に振って合図。


 「あ……う……いやそうか!

 部屋から出たかと見せかけて、メイドさんの次に真っ先に駆け付けた幸申さん。

 貴方は、売れそうにない革新的な絵を描く自分の芸術を下らないと貶されたことと、花屋の娘との結婚だけは絶対に許さんと叱られたせいでは?」


 「はあ?

 確かにぼくの絵は、最初の頃こそ奇抜過ぎて逆にダメだと言われたことはありましたよ。

 ですが、毎回書き上げる度に見せに来なさいと言われ、その度にどこがよくないか、何が悪いか指摘してくださってたんです。

 それに宝瓶宮家を継ぐつもりもないし、美大でのイベントや個展でいくつかのギャラリーや美術商からオファーがあり、画家として生きたいから大学卒業後、その方面に就職する許可と、画家としての道が確定したら宝瓶宮の名前を使う許可とを貰うつもりでした。

 それに、未知とは結婚どころか、画家としても成功できるかわからないし、ただのサークル仲間の友人の一人としか考えたこともありませんね。

 むしろこの邸に一緒に来たいと頼んだのは、未知のほうからですよ?」


 「黒井君いい加減にしたまえ……」


 またもや額に手をやる警部。


 「業……業! いい加減にしなよ。

 天土さんの鑑定結果からは、イブニングドレスについてた手形は女性か手の小さい人で、男性で手指の長い幸申さんはどう考えても除外されるよ?

 それに、彼はあの夜、絵の具や木炭で手が汚れていたみたいだけど、ドレスからそういう成分は出てなかったって。

 停電してから灯りが着くまでの時間はそれなりにあったけど、その合間に手袋したり外して隠すと言う時間はなかったと思うよ?」


 「くっ……それなら。

 酉紀さん。

 貴方、幸申さんと同じくらいに駆け付けましたが、部屋から出たと見せかけて階段から引き返してきただけなのでは?

 ただでさえ血の繋がりのない正午氏の前に、本当に血が繋がった桜子を演じる司が現れたせいで、夫が後継者に成れないかもしれないと焦ったのでは?」


 「あらあら。なかなか推理小説にしては面白いわねえ。まあせいぜい三流小説程度かしら。

 でもとんでもない、お門違いですわ。

 主人の正午は医者としてそれなりに名も腕も売れてますし、それに私自身の執筆の版権でそれなりに稼いでおりますのよ?

 そりゃあ、宝瓶宮家の財産とは雲泥の差でしょうけど。

 でもねえ主人ったら、長女の亥織さんに遠慮して、遺産は法廷分だけか放棄してもよいかとさえ話し合って決めておりますの。」


 「って、まじ? 正午くん。」


 こくりと頷く正午さん。まあ当然だと知ってたけどな。


 「う~ん……じゃあ、亥織さん?

 貴方、遅れて来た上、さもお風呂に入っていたかのようにバスローブを身に付け、シャンプーが残ってる濡れた髪に巻き付けたバスターバンをつけて現れましたよねえ?

 警察の調査によると、美容院経営が実はうまくいってないようですが? 資金援助の為に桜子を殺して遺産を少しでも多く貰おうと思っての犯行では?」


 「ちょっとお。真っ暗な中、お風呂場で置き去りにされた身になって下さらないかしら?

 それに、仮にもよ? あたくしが桜子……司さんだっけ? を階段で突き飛ばして、水も滴らせずに往復できると思う?」


 コメカミを人差し指でぐりぐりする警部。私も業に首を横に振り合図。


 「うん。犯行後にシャワー浴びたとしても、短時間だったからどっちにしろ無理だろうね。諦めなよ業。」


 「ぐ……じゃ、じゃあ、誰なんだ?」


 「銀野くん。君にはもしかしてわかったのかい?」


 私は警部に頷くと、金田刑事さんに頼んで、証拠物件の一つ、イブニングドレスの背中を犯人に指し示してもらった。


 突き落とされたときに着ていたイブニングドレスの背中には、犯人の手形と、犯人が着ていたドレスの生地と同じ糸くずが付いていたのを、天土さん達科捜研チームが検出してくれ、動かぬ証拠として犯行が発覚したのだと。


 「突き落とされたときの手の感触と、イブニングドレスについていた指紋や異物という証拠からも十分逃れようがないと思うけど……

 卯女さん。

 貴方あの時、こう言ったよね?

 『誰よ? 階段から落ちただけで人騒がせな……』と。

 ほとんどの人達が花火さんの悲鳴で駆け付けたような、驚かせるなとか、何かあったのか、みたいな言動をしていたのに、卯女さんだけは、階段から落ちたのか、とはっきり言ったよね?

 業と私の位置関係から、単純に階段につまづいて転んだだけとは思えなかった?

 それに、貴方の部屋は一番階段に近い位置だったはずなのに、シルクのナイトローブパジャマドレスを着て、化粧パックをする程度のアリバイ時間ならなんとかなりそうだったからね。」


 それともちろん、あの時聞いた”落ちて死ね!”という悪意の声は確かに卯女さんのだったのだからね。……


 とまでは言う必要ないだろうけど。


 「ちきしょう!

 ええそうよ。わたくしがお前を突き飛ばしたのよ!!

 だってねえ? 不公平じゃない。

 わたくしなりに可愛がっていた息子の幸申を、将来的には跡継ぎにしてくれるかもしれないからと、泣く泣く手許から離して養子にまでしてもらったのに。

 突然ぽっと現れた本物の桜子かどうかも怪しい女のために、遺産相続の権利が失くなるかもしれないと焦ったのよ。

 階段から落ちたお前が死んでもいいとさえ思ったわ。これで満足?」


 確かに、母親なりの溺愛する息子可愛さ故の……未必の故意による犯行だったわけか。

 

 「母さん……なんて馬鹿なことしたのさ。ぼくは遺産とか後継ぎとか、……最初っから興味なかったのに……」 


 「卯女……わいは待っとるさかい。」


 刑事さんたちに護送される彼女を息子とご主人の牛久も情があったのだろう。まあ初犯だし、動機から情状酌量の余地はあるだろうと、警部さんは気の毒そうに3人を見てたから、悪いようにはならないだろう。


 しかし彼女も


 「……幸申……おまえ、母であるわたくしに初めて反抗したわね……

 それに、あんたも……ばかだねえ。…… 

 だからって勘違いしないで! 余命一年を待つだけでよかったのに。そんな兄を、わざわざ殺す必要ないでしょう?」


 と辰徳氏殺害を否認したのだ。






     *****






 で、肝心の辰徳氏殺しの犯人だが?


 20年前の桜子誘拐事件の時の証言と、私の事件の証言で、寅二、戌千代、卯女、酉紀、幸申、先舞花火、の6人は動機がないため少なくとも容疑から外された。


 「……警部殿、辰徳氏殺害の犯人がわかりましたよ!」


 「おいおい……黒井君。今度の今度こそ本当に大丈夫だろうね。」


(あのなあ、業。もうちょっと今までの情報と状況確認して落ち着いてから推理しろや。) 


 業は再び、わたしたちの心配を余所に見当違いのどあほ推理を披露し始めてしまった。

 

 「ええ、今度こそ任せてください。

 乙女未知さん。

 幸申君の証言によると、貴方の方から幸申君に近づき、GFとしてこの邸に招待してほしいと頼んだそうですね?

 貴方は孤児院出身と言う事でしたが、警察の調査によると、孤児院を経営する友人の一人が家政婦長の天蝎未月さんだと伝手を辿って知り、彼女が本当の産みの母親だと調べたそうですね?

 そこで貴方は一目だけでも母親に会いたいがために来たが、晩餐会のあと、家政婦長さん達の後片付けの手伝いを申し出て二人きりになった時に、親子ではないかと家政婦長さんに話したのではないですか?

 そこで、父親が執事さんでなく、辰徳氏であると知った。

 そう言えば辰徳氏が亡くなる前の晩、辰徳氏本人から呼ばれたと聞き、辰徳氏から

 『幸申くんとの交際は諦めてくれないか』と耳打ちされたと言ってましたが、実は遺産の分け前を諦めるようにとか、もしくはそれに近いこと言われたのでは? 

 それで遺産が貰えないか減らされると欲張っって殺したのでは?

 もしくは、執事さんが父親でなく、母親を辰徳氏に手籠めにされたようでそれが気に入らなくて殺したのでは?」


 「ち……違います!」


 「そう、違い……えっ?!」


 既に頭を抱える警部。私もこの間抜けめと業に首を横に振って合図。


 「確かにわたしは、孤児院の院長さんに、母のことを知りませんか? もし知っていたら一目だけでも会いたい。

 迷惑だと思われてるなら遠目で見るだけでもいい。だから教えてほしい。と、やっと重い口を開いて聞き出した知り合いの名と、伝手を使って幸申さんに近づき、ここに来ました。

 そうして晩餐会のあと、家政婦長さんにお母さんですか? と聞きました。

 するととても驚かれて、そのせいでコップを落として……その時の騒ぎはご存知の通りです。

 でも本当にそれだけです。

 辰徳氏が父であるとかは母は言ってくれず、今初めて知りました。本当にわたしの父はあの人だったのですか?」


 真っ青になる家政婦長さんと、執事さんの動揺してるっぽい? ……あの沈着冷静そうな執事さんが動揺してる?


 二人のその様子から、未知さんも悟ったらしい。


 「お……お母さん……本当に?」


 「探偵さんの仰る通りです。この娘は正真正銘、アタクシがお腹を痛めてまで産んだ可愛い娘です。孤児院を経営している知人なら信用できると預けました。」


 家政婦長さんと未知さんは今まで抑えていたものがやっとなくなったようで、二人抱きしめ合いました。


 執事さんも神妙に二人を守るかのように肩にぽんと手をやりました。殺伐とした事件の合間の心の安らぎになる絵のようです。


 「あ~ ……うん……これはこれで結果よかったです。気を取り直して。

 それなら亥織さん。

 警察の調査によると、貴方、表面上は『大口の顧客がついて上手くいってる』と誤魔化してたようですが、実際は美容院の経営は実はあまり上手くいっておらず。内情は火の車だったようですなあ。

 それで経営の補填のために辰徳氏に資金援助か財産の前借りか、何れにしろ頼んで断られたがために殺したのでは?」


 「…違いますわね。」


 「うん違……っておい?!」


 「確かに大口の顧客には信用されず、経営難でした。

 けれど、戌千代母さんが、資金援助と、レストランを利用してくれてる常連さんや知り合いの伝手を紹介してくれて、支援を申し出てくれたんです。」


 「え~、それまじ? 戌千代さん。」


  額に手をやる警部。私も業にまじまじと頷いて合図。


 「その通りですわ、探偵さん。養女として離れたとはいえ、アタシが産んだ娘が困っているのですよ。

 手助けしてやりたいと思うのが親心と言うものではありませんか。」


 「なるほど。確かに。……ん? ……それなら。

 赤口拓巳さん。

 貴方が経営していると言うIT企業ですがねえ。どこにも実在してないようですが?

 それなのに辰徳氏にやたらと株やら投資やらの話をもちかけていたようですなあ?

 もしかして貴方、詐欺でも働こうとしてたんじゃないでしょうなあ? それが辰徳氏にばれたか、ばれそうになって殺害したのでは?」


 すると、彼が気付いた時は遅く、彼の周囲を警部さんや金田刑事さんたちが包囲していた。


 「赤口拓巳。否、本名、関口匠! 複数の投資詐欺事件、被害届により訴えが出とるぞ? 観念しろ!!」


 「うう……くっ! 畜生っ!! その通りだよ。辰徳氏はおれのことを疑ってるようだったから、いくら美味い儲け話を持ち込んでも話に乗らなかったんだよ。

 だがなあ。だからと言って殺人を犯すほど、おれはばかじゃないぞ!」


 「ええっ?! ちょっとお~アタクシは関係ありませんことよ!」


 ついでに亥織も捕える。


 「事情聴取だけです。しかし、関係あると判ったら……よろしいですかな?」


 そこに戌千代さんが心配そうに駆け寄る。


 「娘が関係ないことはアタシが保証しますし、何でも証言します。ですからアタシも一緒に行っていいですよね?」


 「か……母さん……」


 「よろしい。お二人は丁重に連れて行ってやりなさい。但し、関口に対しては殺人罪以外の詐欺の余罪について追及するのを遠慮するなよ。

 連れて行け!」


 あ~あ。赤口拓巳、改め、関口匠はその場で刑事と警部たちに捕縛され、連行されて行った。


 これで残る人数は……うん。大分、かなりすっきりしたな。


 「まじかよ~ ……な……なら!

 牛久氏。

 貴方も、最近TV局の運営が上手くいってないようですなあ? それが辰徳氏に発覚して殺したのでは?」


 「……全然違いまっせ。

 運営の件はスポンサーやオーナーとの見解の相違ですがな。

 マンネリ化した内容が数か月から長く持って5年くらいで視聴者に呆れられるのは当たり前のことやし。

 だから次のシーズンで新番組の制作をオーナーの許可をもらって決定しとったし、新たなスポンサーがついてくれたのも内定しとったんや。

 それやのに、殺人何てするはずないやろ?」


 「やっぱり違……ってええーっ?!」


 コメカミを人差し指でぐりぐりする不機嫌な警部。私も業に首を横に振り合図。


 「ええいっ、次!

 ……そうだ、家政婦長の天蝎未月さん。

 貴方は乙女未知さんが自分の娘だと判ったか、知った。それで娘である彼女に財産を与えたくなったが、辰徳氏に拒まれ殺害したのでは?」


 「……事実無根でございます。

 確かにアタクシは娘から、母かと問われて驚きはしたけれど、嫌いはしませんでした。

 それに旦那様である辰徳様と関係した結果でのこととはいえ、旦那様に対しての忠誠心も尊敬心も失くしてはおりません。

 それと、もしも子供は生まれた場合、遺産を放棄し旦那様とは無関係であるという書類にサインをしておりますから、今さら財産をどうするかと問われましても……」


 「事実無……って、本当?!」


 眉間を人差し指でぐりぐりする益々不機嫌になり爆発寸前な警部。私も業に首を横に振り合図。


 「ぐうっ……だったら!

 料理長の人馬友引さん。

 貴方、料理に何度も文句を言われてケチをつけられた挙句に、解雇されそうになっていたようですね? それが悔しくて殺したのでは?」


 「全く持って全然違いまさあ!

 あっしは確かに旦那様が気に入らない時は、何度も作り直すように言われましたが、作り直しが気に入っていただければその度にお褒めの言葉を貰うことも多々ございました。

 それに、解雇すると言うのは旦那様の口癖みたいなものでして、あっしたち自身が辞めると言い出すまでは一度も辞めさせられた使用人はおりませんでした。」


 「違うのかよ~ ……。本当に? 執事さん。」


 「はい。その通りでございます。旦那様は使用にのみんなが辞めた後のことまでをも考慮しておられ、自ら止めたいと言い出すまでは決して理不尽に解雇したり、自分勝手に首になさることはございませんでした。」


 いい加減にしろ黒井君! ともはや限界そうな警部。私ははーっと息を吐いて業を見捨てた。 


 こうして、またもや次々と恥ずかしい迷推理をした業。こんなんでよく探偵やってられるな、と疑問に思う業の推理が続いたのだった…… ──


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