日本国鉄道警備隊
第二次世界大戦終結後、日本が軍備の保有を許された世界をテーマとした架空戦記です。
第二次世界大戦においで日本帝国は敗北し、アメリカ合衆国軍を主体とする占領軍により日本帝国陸海軍は解体され、日本は軍備を放棄することになりました。
しかし、日本政府はなんらかの形で戦後も軍備を維持しようとしていました。
ポツダム宣言受諾の玉音放送の後、日本国内では共産革命が起きようとしました。
ソ連が裏から扇動しており、民衆による暴動だけでなく、日本帝国陸海軍の一部も反乱しました。
解体前の日本帝国陸海軍により鎮圧には成功しましたが、日本政府はソ連の脅威に備えるために独自の軍事力の保持が必要と考えました。
日本政府は占領軍と交渉し、帝国陸海軍を縮小しての存続を求めましたが、日本から軍国主義を払拭するには帝国陸海軍の完全な解体が必要と考えていた占領軍はそれを認めませんでした。
次に、日本政府は警察力を強化した「警察予備隊」という名称の組織を設立しようとしましたが、占領軍はそれも認めませんでした。
そして、日本政府は「鉄道警備隊」の設立を占領軍に求めました。
当時の日本で最も重要な交通インフラだった鉄道を守るための組織です。
普段は鉄道敷地内でしか活動しませんが、日本国内で大規模な暴動が発生したり、外国の軍隊による日本への侵攻があれば、内閣総理大臣の命令により日本全土での活動が可能になります。
占領軍は鉄道警備隊の設立は認めました。
占領軍も日本が非武装なのは現実的でないと考えていましたが、日本が武力を持つのは制限しようとしていたので、普段は鉄道敷地内でしか活動できない鉄道警備隊は目的に合っていると考えたのでした。
鉄道警備隊庁が設立され、初代の鉄道警備隊庁長官は内閣総理大臣が兼任しました。
帝国陸海軍とは違い、鉄道警備隊は完全な文民統制の組織となりました。
鉄道警備隊は駅や線路などの鉄道施設を警備するための陸上部隊はもちろん、海上部隊と航空部隊もありました。
鉄道警備隊が海上部隊と航空部隊を持つのは奇妙な事にも思えますが、これには理由があります。
表向きの理由は、国鉄は青函連絡船などの船舶を持っており、それの警備のために海上部隊が必要だとされ、航空部隊は長大な線路を警備するためには上空からの監視が必要とされ、当初、航空部隊が保有していたのはパトロール用の非武装の航空機だけでした。
もちろん、裏の理由があります。
日本政府は、将来的に本格的な国防組織を設立する時には、鉄道警備隊を母体にしようとしていました。
過去、帝国陸軍と海軍が別組織のために国防方針さえ一致せず、弊害が多かったため、新たな組織ではそれを避けようとしたのです。
海では「海上保安庁」を設立しようとする動きもありましたが、それを取り止め、鉄道警備隊海上部隊としました。
鉄道警備隊と海上保安庁が、組織が別だと帝国陸海軍のような弊害を起こすと考えられたからです。
設立当初の鉄道警備隊陸上部隊の装備は歩兵用小火器のみで、戦車や砲兵はありませんでした。
海上部隊は、戦後も活動を続けていた唯一の海軍部隊、機雷掃海部隊を編入し、さらに警備・救難業務のために海軍の小型艦艇を受け継ぎました。
航空部隊は前述したようにパトロール用の非武装の航空機のみを装備し、陸軍の司令部偵察機や海軍の飛行艇を受け継ぎました。
人員は多くが戦犯指定されなかった帝国陸海軍の旧軍人でしたが、旧軍人の暴走を抑えるために、警察官僚出身者が幹部には多く、制服組のトップである鉄道警備隊総監の初代は警察官僚出身者でした。
1950年に朝鮮戦争が開戦すると、鉄道警備隊は「国土警備隊」と改称することになり、武装も強化されました。
朝鮮戦争の兵站基地となった日本が侵攻される危険が高まったからです。
陸上部隊はアメリカから供与された戦車と砲兵を装備しました。
海上部隊は日本近海に出没するようになった国籍不明潜水艦に備えてアメリカから供与された対潜空母を装備するようになりました。
航空部隊は日本の領空ギリギリに頻繁に近づくようになった国籍不明航空機に備えてアメリカから供与された戦闘機を装備するようになりました。
陸上部隊は日本国内でのアメリカ軍の物資輸送列車を襲撃する謎の集団と戦い。
海上部隊は朝鮮半島で機雷の掃海を行い。
航空部隊は国籍不明航空機に対するスクランブル発進をしました。
朝鮮戦争の後、憲法改正により憲法に「国防権」が明記されたことにより、「国防隊」と改称して現在に続いています。
国防隊は基本的に日本本土防衛のための組織ですが、国際社会の要請に答えて、ベトナム戦争や湾岸戦争に部隊を派遣しています。
国防隊陸上部隊は設立の経緯から国鉄との関係が深く、部隊輸送のための専用の鉄道車両を運用する鉄道部隊を保有しています。
国鉄が分割民営化してJRとなって以降現在も鉄道部隊は維持されています。
鉄道部隊は部隊輸送用の貨物新幹線を保有しており、北海道から九州まで新幹線を直通運転することが可能です。
在来線では、テロなどにより発電所や変電所が破壊された場合に備えて、蒸気機関車を保有し続けており、蒸気機関車C62の牽引するイベント列車がたまに東海道本線や東北本線を走ることがあるのは演習を兼ねています。
来月には演習で国防隊の車両運搬用貨車を蒸気機関車D52が牽引する予定がありますが、鉄道マニアの方もミリタリー・マニアの方も撮影する時には充分注意してください。
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