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第8話:やりたいことはありますか?

やりたいことはありますか?



桜乃と小夜を家に招待してのんびり雑談すること3時間ほど。

既に日は高くなっており、時計を見れば12時を指している。


「お昼だな。よし、いっちょ作るか」

「そうでござるな」

「え? そこまで気にしなくても……。ねえ、小夜?」

「……」


桜乃の言葉に小夜は答えず、ひたすらにプラモデルを組み立てている。

いやー、小夜は集中すると周りが見えないタイプか。


「ま、小夜もこんな感じだし、飯ぐらい食っていけ。こうして喫茶店も兼ねているんだからな」

「じゃあ、お言葉に甘えます。楽しみにしてるね」

「任せるでござる。意外とこう見えて、叶殿は料理が上手いでござるからな」

「お前もだろう。今日は俺がおもてなしということで、園田の料理は後日で。俺が料理をしている間は3人で雑談でもしててくれ」


俺はそう言って席を離れる。

一応、俺は桜乃から小説家になった経緯とかを話した。

向こうも興味があったようでかなり食いついてきていたな。

まあ、向こうから見ればドリームをかなえたストーリーなんだろうが、俺にとっては出版は二の次で、趣味で書いてただけなんだよな。

いや、第二の人生のこの場では多少売れるだろうという打算はあったけどな。

そんなことを考えつつ、前々から準備しておいた料理をささっと作る。

所詮、男が作る料理だ。繊細さなどない。

とりあえず、主食とサラダ、スープを作るぐらいは年をとってから考えるようになったので、それぐらいだ。

若い時は肉、ご飯。それだけだったしな。

健康を維持するためにはバランスのいい食事が必要なわけだ。


とりあえず、今回の主食はパスタということで多少下味をつけた具沢山の海鮮パスタを用意してだすことにする。

嫌だったら、ベーコンなどの肉ものにも変更は可能だ。

パスタって便利だよなー。


しかし、毎度思うのだが、味を付けて炒めるだけのものを料理といっていいのか?

いやー、あれだな気にし始めたらキリがないか。

俺はそう嗜好を切り替えて料理に集中する。

既に下準備を終えていたこともあって、5分ほどで準備が整い机へと戻る。


「はい。お待たせお嬢様たち」


俺はそう言って料理を出す。

あ、ちなみに雑談席と食事席は分けている。

何せ色々ものを出しているからな。小夜のプラモとかな。


「うわー。すごい」

「びっくり。意外と本格的っていうか見た目をお店レベルじゃん!?」


2人の御眼鏡にはかなったようで、特に不満がないようでなによりだ。

無理に美味しくないモノを食べさせる気はないからな。


「本日は海鮮の醤油バターソテーパスタと、サラダ、コンソメスープとなっております。魚介類が駄目だったら言ってくれ。すぐにお肉系に切り替えることも可能だ」

「ううん。食べれるから大丈夫だよ」

「私も大丈夫」

「拙者も大丈夫でござる」

「いや、園田には聞いてねえよ」


今更園田の食べられるもの食べられないモノを聞く間柄でもない。


「ひどいでござるなぁ」

「それだけ付き合いが長いってことだ。さ、覚める前に食べるぞ」

「うん。いただきます」

「「いただきます」」


そういうことで昼食が始まり……。


「うっ。本当に美味しい」

「ふわー。本当に以外、叶って料理本当にできるんだ」

「いや、一人暮らしだしなこれぐらいはできる」

「まずい飯はお断りでござるしな。どうに自分でやるしかないでござるよ」


無事に味の方も口に合ったようで、口数は少なくもくもくと食べて10分もしない内に空になる。


「「「ごちそうさまでした」」」

「おそまつさまでした」


俺はそう返事をして皿を下げる。


「あ、御皿洗いは私が……」

「別にいいよ。お客様だから今日はゆっくりしててくれ。あとあれだ、意外と俺はキッチンのルールにはうるさいからな」

「あー、そういうのがあるんだ」

「そりゃ、キッチンとしてちゃんと使っているからな」

「あはは、本当にお店っぽいね」

「いつかそれを目指してもいるからな」

「え? 小説家じゃないの?」


俺の返事に意外そうにする桜乃と小夜。


「別に小説家だけで食っていくつもりもないし、趣味をしたいっていうのも言ってただろう?」

「うわー、贅沢だー」

「羨ましい」

「それだけ今を頑張った結果だからな。桜乃も小夜も何かチャレンジしてみたらどうだ?」

「むー、そっかー。やらないと始まらないよねー」

「言い分は分かるけど、何をやればいいかわからないなー」


2人とも若者らしい回答が返ってくる。

何をしたいのかしらわからないのが若者だ。

そもそも自分の適正なんてさっぱりだろう。


「ま、強制でもなんでもないからな。探したからって見つかるわけでもないし、自由でいいと思うぞ。俺からできるのは、動かないと見つからないことと、この場所を提供できることぐらいだな」

「この場所?」

「ああ、園田がいい例だな。この喫茶店モドキを利用してゲームプログラムの練習とか絵をかいたりしているぞ。シナリオは俺に投げっぱなしだけどな」

「そこは専門家がいるのに使わないのはもったいないでござるからな。それに叶殿も乗り気でござろう?」

「そりゃな。ゲームは作ってみたかったからな。ということで、お互い趣味があえばその趣味に関してのお金も俺が出すしって所だな。クリエイターを育てたいってやつだな。自分がこうして作家として稼がせてもらっているからな、何かをやるなら後押ししてやりたいってのがあるんだよ」

「ふぁー。恋乃宮君ってちゃんと考えてるんだねー」

「というか、人生勝ち組じゃない?」

「そこは否定しない。この時点で残りの人生苦労しないほど稼いだからな。とはいえ、執筆をするのをやめる気はしない。読者がいるからな。とはいえ読者がいなくても書くけどな。趣味だから」


そう、俺の執筆はただの趣味が始まりだ。

人に読まれるのはうれしいことではあるが、それだけのために書いているわけでもない。

書きたいから書く。それだけの話だ。


「趣味をそこまで貫けるって別の意味ですごいと思うけど……」

「逆だな。俺の場合趣味だからできるんだよ。仕事だけって意識すると続かないからなー。面白い、人に売れる小説とか、やっている人は沢山いるけど、俺はそういうのは苦手だからな。ま、人によりけりだろうさ。だからまずはやってみろって話だな」


俺がそう言うと、小夜が何か覚悟を決めた感じで……。


「ねぇ。私がここ使わせてほしいって言ったらいいわけ?」

「小夜?」

「何に使うかだな。ただ友達とおしゃべりっていうのは無しだぞ。下手に人数は増やしたくないからな」

「そんなことで使わないわよ。ここでプラモデル作っていいって言ったわよね?」

「ああ、場所取るからな。趣味としてはちょっと辛いもんだ」

「私ね。一度本格的に塗装とかパテ使ってしっかり作ってみたかったんだ。でも、お金とかかかるし、塗装とか場所があれでしょう?」

「わかるわかる」


プラモデルは本格的に作ろうとするとものすごく場所と時間とお金を消費する。

その環境が整えられるのはごく一部だろう。


「だからここを使わせてほしいってことだな。ちょうどプラモ制作場所もあるからな」


そう、プラモデルをお店のように置いている倉庫には作成スペース、塗装スペースと用意してある。

俺が生前いつかやってやると誓って作った場所だ。

ちなみに自分の使用は数度しかない。

そこまでまだ時間がないからな。

と、そこはいいとして小夜のお願いだが……。


「うん。使わせてくれる?」

「別にいいぞ。そういうのなら歓迎だ。作っていないプラモも多いしな。小夜が飾ってくれてくれるなら特に否定する理由はない」

「よし!! あ、でもうまく作れればプラモ雑誌とかに投稿したりしたいんだけど?」

「それも別にいいぞ。存分にやってくれ。知り合いが有名プロモデラーとか夢が広がるよな。園田」

「そうでござるな。夢がヒロガリングでござる」

「あはは。ただの趣味だよ。私がそうなるなんてわからないし」

「それでいいんだよ。やることが、動くことが大事ってわけだ」


そんな感じで小夜とわいわい今後どういう風にこの場所に来るか考えていると、桜乃が居心地悪げに口を開く。


「……えーと、私はお邪魔かな?」

「え? そんなことないよ?」

「でも、私ってあまりやりたいこととかないし……。何かやりたいことがないといちゃいけないんでしょ?」

「いや、桜乃は別にいてもいいぞ。俺がいったのは俺の許可を取らずに別の友達とかを勝手に連れてくることだよ。そういう一般的な常識の話だ。桜乃なら別に悪いことに使うとは思えないし、構わないぞ」

「いいの? 私、何もやりたいことないよ?」

「やりたいことを探すために来てもいいんだよ。幸いここは俺の許可さえあれば結構色々できるからな。何かやってみたいことができたら言ってくれ。協力できそうなことなら協力する。今は楽しんでる小説をここでのんびり楽しむとかでもいいんじゃないか? パソコンなら貸し出しできるし、色々情報収集してみるといい」


若者はこれからだ。

って俺が言うとあれだからこういうしかない。

それで桜乃の反応だが……。


「ありがとう。よし、私も何かやれること探してみようかな」

「その意気だよ春香。料理とかでもいいんじゃない?」

「料理はどちらかというとお手伝いだしねー。まあ、それもありかな? 味見とかしてくれる?」

「もちろん。ね、叶、英雄」

「ああ、味見ぐらいなら」

「任せておくでござるよ」


こんな感じで、無事に彼女たちとのつながりができたことは僥倖だといえるだろう。

このまま何もなければいいんだけど。


テスト終了後の夏休み前。

その運命がどうなるかはまだわからない。


「じゃ、趣味を楽しむためにもまずはテスト勉強しようね」

「ええー!?」


とはいえ、桜乃の正論から小夜を救う術はない俺たちなのであった。

現代日本を生きていく上で学歴はあるに越したことはないしな。



小説と漫画って紙とペンがあればなんとかなるから、やってみるといいよ!


これ実体験している雪だるまからのアドバイス。

小説ならパソコンで文字打つだけでもいいからね。


まずはやってみる下手は当然。

だけど自分が楽しけりゃいいじゃない。

まあ人を不幸や不快感を味合わせるようなことは避けようね。

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