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プロローグ

俺は愛を貫く



プロローグ:思い出されるものすごい記憶二回目



「ねぇ、聞いている? 恋乃宮君?」

「あ、ああ……」


俺はそうやって何とか返事をする。

だって仕方ないだろう?

俺は今とんでもないことを思い出してしまったのだ。


とはいえ、そんなことは分かるわけない、我がクラス……ではなく学園のアイドルである「桜乃春香 さくらのはるか」は必死に声をかけてくる。

身長は160センチほどで、ピンク色の髪が肩程までに伸びている。

スタイルも抜群で、真面目にこんなのが存在していたのかと言いたいレベルの美少女だ。

しかし、流石にこのまま無視をして、ガン見をしていては俺の学校における評判が下がってしまうので対応をする。


「悪い、桜乃。今家のガス締め忘れたかもっておもってな」

「え!? それって大変じゃない?」

「いや、確か締めたはずだと思い出した。それでどうしたんだ?」


とりあえず無難なことを言ってその場をしのぐことには成功した。

俺の記憶の混乱は今からノートにまとめておく必要があるだろう。

それぐらい重大なことを思い出してしまったのだ。


「今日提出期限の進路相談用紙、回収に来たよ」

「ああ。ありがとう。これだな」


俺は書いておいた進路相談用紙を渡す。

特になんの面白みもない進学という文字が記載されている。


「へー、恋乃宮君って進学するんだ」

「まあ、やりたいことを見つけるためかな」

「あはは。そうだよねー。高校生で将来見つけてるってないもんね。と、ありがとう」


そう言って桜乃はテーブルから離れていく。

ちゃんと離れたのを確認して俺は本格的にノートを取り出して思い出したことをすかさず書き写していく。


いや、落ち着け。

まずは俺の状況をしっかり整理しよう。

その過程でまた何か新しいことを思い出すのかもしれない。


そうなれば、まずは俺のプロフィールだ。

これこそ基本。


名前:恋乃宮 叶 こいのみや かなう

年齢:15歳 高校生一年生 

学校:園宮そのみや高等学校

職業:ライトノベル作家 兼 学生

作品名:必勝ダンジョン運営方法 その他何冊か出している


名前を書いた時点でふざけるなよという思いがこみ上げる。

前世?の名前も珍しいものだったが、今の名前も冗談のような名前だ。

恋をかなえたいアホのような苗字と名前だ。


そう、俺には前世?の記憶というのがある。

中二病ならよかったのだが、俺にとっては事実として認識されている。

とりあえず、前世のプロフィールも書いておこう。


前世

名前:山田 太郎(偽名)

年齢:92歳 記憶の限り

職業:ライトノベル作家 兼 会社員

作品名:必勝ダンジョン運営方法 その他何冊か出した


普通に見ればただの冗談として思えない。

とはいえ、これは事実だ。

その証拠に「必勝ダンジョン運営方法」を丸々内容を覚えていたからだ。

だから、学生のくせにラノベ作家として活躍しているわけだ。

前世?で作品として売れたものがこっちでも売れたというわけだ。


とはいえ、正直転生モノかと思っていた俺にとっては拍子抜けもいいところだった。

チートはこの前世の記憶があるぐらいで、特殊能力は一切なし。

時代もどこかの古い中世ヨーロッパとかでもないのでチヤホヤされることもない。

まあ、唯一よかったのはラノベの記憶があったので今の時点でかなりの資金があるのが強みである。

何よりこっちではアニメ化、グッヅ化もしていてウハウハだからだ。


しかし、この転生だが妙な点がある。

俺が山田太郎としての記憶が残っているのは92歳であり、その年代は西暦2085年だったのだ。

今世の西暦だが2016年。

つまり、時代を巻き戻っているわけだ。

場所も日本。

なのだが、前世の俺は存在していなかった。

家族すら痕跡がない。


つまり、この転生した世界は俺が知っている日本ではないということだ。

正直前世の世界の出来事を全部覚えているわけもないので、何がどう違うかといわれてもわからない。

でも、大まかな流れは全部一緒なので俺としては困らない。

そういう物だと思うことにした。

幸い、同じように書いたネット小説がブレイクした分、俺にとってはいいことだったし、好きだった漫画とかアニメも普通にやっている。

前世で潰れていたゲーム会社が、こっちでは生き残っているといううれしいこともあるので特に不満はない。


前世でできなかったことを、今世でやる。


ただそれだけのことだ。

だが、これを思い出して俺は固まっていたわけではない。

今更な話だ前世の記憶を抱えてすでに15年生きているので気にもならないし、今まさに俺の人生は順風満帆といったところだったのだが、先ほどの桜乃の顔をみて、別のことを思い出してしまった。


「桜乃春香は……」


俺は何とかつぶやきつつ、ペンを走らせて情報を書き出す。


名前:桜乃 春香 さくらの はるか

学校:園宮そのみや高等学校

職業:学生 兼 魔法少女


そう、桜乃春香は俺の記憶間違いでなければ、前世のネット小説で出ていた「魔法少女」の名前なのだ。

これだけならただの偶然と済ませていいだろうが、残念ながら桜乃が通っていた学校は園宮高等学校で、容姿も見たまんまである。

なぜ小説の容姿を知っているのかといわれれば、そのネット小説はちゃんと書籍化して出版しているからだ。

つまり容姿もちゃんと売れっ子の神イラストレーターによって細部まで書かれたからだ。

そりゃー神イラストレーターに書かれた容姿が美少女なわけがない。

よって導き出される事実は……。


この世界は「春風の魔法少女」の世界なのかもしれないという驚愕の事実だった。


俺は桜乃の顔をマジマジとみてようやくそれを思い出した。

だって仕方ないだろう?

小説なんて作家として92歳まで生きてきた爺さんは何千冊って読んでるんだ今更思い出したのは僥倖だと思おう。


しかし、これだけならただのハートフル魔法少女の物語で俺に問題はないはずだが……。

そこはネット小説のひどいところというかリアリティというか、正体不明の怪人との戦いのために人が亡くなって町は崩れて、最終決戦みたいなプチハルマゲドンになる……かもしれないのだ。

なぜこんなにあやふやかというと……。



「この小説。3巻で終わってんだよぉ!?」



そう、この小説は出版3巻で打ち切りとなってしまったのだ。

ネット掲載の方も打ち切りと同時に作家は執筆を停止、終わらないままになってしまっているのだ。



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