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秘密の王様

まだまだリーナの、回想回…早く本編が書きたいな。

どのくらい馬車に揺られただろうか、窓の外の景色など眺める余裕のない私である。


 王宮にはきっと多くの人がいる。どれだけの好奇の目に晒されるのか、考えただけでも足が竦む。これまで散々好奇の目に晒されてきた私だけど、何度経験しても慣れる事が出来ない。


 人々の怯えたような、気持ち悪いものを見るような、はたまた値踏みをするような、なんとも言えない視線に晒されるたびに消えてしまいたくなる。こんな私が王立学園などやっぱり無理があるんじゃないか。どうして王立学園に通ってみたいなんて思ってしまったんだろう。王立学園に通うなんて考えなければ、きっと王宮なんて来る事もなかっただろうに。


 そんな後悔を頭の中でぐるぐる考えているうちに馬車は王宮に到着したらしい。ここから極度の緊張と不安から吐き気と震えを通り越して、頭の中が真っ白になってしまった。

足が一歩も進まない。呆れた団長は話しかけても反応のない私を半ば担ぐような形で宮殿に入る。


 団長に担がれながら、どこをどう通ってそこまでやってきたかさっぱり意識のないまま、何やら物凄く豪華な調度類が揃えてられた広い一室にいた。壁一面の広い窓から暖かい日差しが降り注ぎ、窓の向こうには綺麗な花々が品良く植えられた綺麗な庭が見えた。綺麗な庭をバックに豪華なテーブルセットにゆったりと座り、降り注ぐ陽の光を浴びて談笑していた方達が、団長と私の方に視線を移す。呆けたように立ち尽くす私の頭から帽子をさっと脱がして、団長が敬礼した。


「本日はせっかくの家族水入らずのお茶の時間をお邪魔して申し訳ありません。件の聖女とともにご挨拶に伺いました」。別段緊張した様子もなく淡々と告げる団長の声に我に帰る。


 王家の方々やその場に居合わせた侍女、すべての方の視線が私に向けられた。私は慌ててシュリー夫人に教わった、カーテシーのポーズをとった。私に向けられる視線が怖くて顔を上げられないでいたら、誰かが椅子から立ち上がる音がした。


「リーナ!久しぶりだね!よく来てくれた!」。広い部屋に良く通る低い男性の声。なんだか聞き覚えのある声の気がして見上げるとそこにいたのは、毎年祖父を訪ねてくるあのアーサーおじさんだった。


「ア…アーサーおじさん??」。私は王族の方に挨拶にきたはずだけど、何故アーサーおじさんがいるのだろう?


 ライネル団長がゴホンっと咳払いして私に耳打ちした。

「ここでは王様と呼ぶように」。


 えっ?王様?


 ニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた団長を見て、すぐにアーサーおじさんに視線を移す。祖父の元に訪ねて来た時よりさらに上質な金縁刺繍の施された見るからに位の高い衣装を着てはいるけれど、その顔はやっぱりあのアーサーおじさんだ。


「王様?」。何がどうなっているのかわからなくてポカンっとしていると、アーサーおじさんも団長と同じく悪戯っ子のような表情を浮かべて言う。


「ああ、そうだよリーナ。隠していてすまないね。私はこのグランディスの王。アーサー・グランディスだ。驚いたかな?」。


 アーサーおじさんがこの国の王様…?え?どういうこと?改めて自己紹介をされてもなお頭の中が?マークでいっぱいの私を面白そうに見ながらおじさん…もとい王様は私の手を取った。


「さぁ、リーナ待っていたよ。皆に紹介しよう」。王様にエスコートされながら王族の皆様の前まで進む。私は驚き過ぎてて、しばし人の視線を忘れていたのだが、ハッと思い出して足がすくむ。そんな私を百も承知な王様はフォローする様に背中をポンポンと優しく叩いた。


「大丈夫だ、リーナ。ここには君の外見をとやかくいう人などいない。むしろ今の君は聖女としてこれほどなく神々しいのだから、さぁ顔をあげてごらん」。王様にそう言われては顔をあげるしかない。


おずおずと顔をあげた私に視線が集まる。きっと皆様の表情は恐ろしいものをみたように歪むはずだ。悲しい。

そう思ったのに、そんな事はなくて、王族の皆様は優しい笑みを浮かべて、挨拶してくれた。


「リーナさん。私はこの国の王妃、シャルロッテですわ。急なお誘いで申し訳ありませんでしたね。でもお会いできて嬉しいわ」。王妃様は私の手足が震えている事に気づいて下さったようで、優しく手を取って椅子に座るよう勧めて下さった。王族の皆様の輪に入るなんて恐れ多いのに、断る事も出来ない。


「リーナさん、こちらがこれから貴方の後見人を務めて下さいます王太后様」。


 王妃様は隣りに座っていらした年配の女性を紹介してくれた。綺麗に束ねられた銀髪に主張し過ぎない品の良い髪飾りを飾った王太后さまはうっすらと刻まれた皺あるものの、お年を感じさせない華やかさのある美しい方だった。


「はじめましてリーナ。貴方の事は王様からよく聞いておりましたよ。この度は突然光の力に目覚めて貴方も大変戸惑った事でしょう?そんな貴方に急に王立学園入学を求めるのも酷だとは思いましたが、光の力は使い方を間違えれば大変な事になりますからね。しっかりと学んでもらわなければなりません。その為に私が力に慣れるなら喜んで後見人になりましょう」。王太后はニコリと微笑んで下さった。


「そしてこちらが私の息子。この国の王太子アルフレド。これから貴方が通う王立学園の生徒会長をしてますの。だから、学園生活で困った事があったらいつでも王太子に相談して下さいね」。と傍らに座る青年を紹介して下さった。王太子様は髪の色こそ王に良く似ているものの、お顔立ちはどちらかというと王妃様によく似たとても美しい方だった。王太子はニコリと微笑んで、「よろしく


「貴方の事はまもなく、聖女として国中に認識される事となります。そうすれば王家が後見人として力になるのになんの問題もありませんし、私達でしっかりとサポートさせてもらいますわ」。王妃様はそっと私の震える手をつかんで「安心して下さいね」と仰って下さった。




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